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まちに少女の居場所をつくる「わかくさカフェ」

神宮丸太町駅から徒歩約5分。大通りから住宅街に続く路地を一本入ったところにある、ホステル「NINIROOM(ニニルーム)」。
空きビルをリノベーションした、木目調で落ち着いた雰囲気のこの場所で、7月、少女の居場所「わかくさカフェ」がオープンしました。
普段は宿泊者が利用するスペースで毎週火曜日、若年層の女性を対象に、お茶菓子を用意したカフェスペースをオープン。それ以外も毎日、ホステルの一室を“お昼寝”場所として用意し、食事・生活用品も無料で提供しています。
この取り組みを立ち上げたのは、「NINIROOM」のオーナー姉妹の西濱愛乃さんと西濱萌根さん、京都市内で少女の居場所づくりを行う「京都わかくさねっと」。両者が連携してホステルで少女の居場所をつくることになったきっかけや、そこにある想い、これからの構想についてお話を聴きました。
                                                     ※2020年8月25日に取材した内容です。

少女の”お姉さん”のような立場でいたい

――「わかくさカフェ」を立ち上げたきっかけを教えていただけますか?結構急ピッチですすめられたんですよね。
「NINIROOM」西濱萌根さん(以下西濱):そうなんです(笑)。
 きっかけは3月、「新型コロナウィルスで外出自粛になっても、安心して自宅にいれない女の人たちがいる」というニュースを見たことでした。
 外出自粛で働きに出にくいってことは想像できても、それによって虐待や暴力が起こるってことは自分自身想像できていなくて、ショックだったんです。一方私たちのホステルには空室がある。何かできないかなってSNSに投稿したところ、京都わかくさねっとさんに繋がって、7月にスタートしました。

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西濱萌根さん

「京都わかくさねっと」北川美里さん(以下北川):もともと私たちも京都市内で少女の居場所づくりをしていたのですが、ここは「こんにちはー」って温かく迎え入れてくれるような空気があるし、適度に放っておいてくれて、適度に声をかけてくれる。この雰囲気を見て「ここならできるかも」と感じました。
西濱:私たちのスタッフは20代30代がメインなので、少女の“お姉さん”のような立場にもなれるのかな、って。
 あと、ホステルのスタッフって、コミュニケーションが得意な人が多いんです。気が合いそうなゲスト同士をさりげなくつなげたり、あえてゲストと適度な距離を取ったり。だから、この活動と親和性が高いんじゃないかなと感じています。
北川:私たちはこれまでもカフェやお寺、民家などを借りて居場所を作ってきたのですが、困りごとがあってもひとりで抱え込んで、SOSを発信できずにいる少女はたくさんいると思うんです。一緒にしゃべったり、励ましあったりする時間があれば少し元気になれる女の子に、来て欲しいですね。

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一人で休める場所の大切さ

――ホステルの個室を生かした“お昼寝”もユニークですよね。どういった狙いがあるのでしょうか?
北川: 「一人で休むこと」が大事だと思ったんです。しんどい時って一人で落ち着いて考えられる状況にないことが多いし、人と繋がって新しくなにかやってみたり、やり直してみたりするにも、その前にまず“休む”ことが必要です。ゆっくりご飯を食べて、個室で一人になって自分のことをじっと考える。そんな時間を作れるような場所になればいいなと思いました。

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西濱:あと工夫しているのは、無料でご飯をたべて部屋がつかえるよ、だけじゃなくて、使った部屋をスタッフと一緒に掃除するとか、ちょっとカフェのことを手伝ってもらうとか、スタッフとのコミュニケーションも兼ねて、利用してくれた方の「力」を借りる仕組みを作ろうとしています。
 役割を持って頼られることでここを居場所に感じてもらい、使うときの気負いを少しでもなくせればと思っています。
北川:「私こんなことできるんや」って発見を積み重ねることで元気になれたり、自分がやりたいことを見つける素(もと)になることがあると思うから、そういう機会をいっぱい作りたいですね。
 今度イベントでお花を100本使ってオブジェを作るんですけど、それも「ボランティアをやりたい」って来てくれた女の子のアイデアなんです。「やりたい」って声を聞いたら、それを一緒にやれる方法を考えたいです。

「こんな場所が欲しい」の声に応える

――立ち上げたばかりですが、今どういった難しさを感じていますか?
西濱:やっぱり“困っている少女にどう届けるか”に課題を感じています。このホステルの前まで来るのも勇気がいると思うし、本当に入っていいのかっていうハードルもあると思うし……。今は、学校関係者や支援機関の方と繋がって、少女たちに出会ったときに伝えてもらえるように、この活動を知ってもらう広報を地道にやっています。“困ったときに行ける場所”として認識されて、コミュニティ内で広がれば成功だと思うんですけど、数年かかるなと思っています。
北川:でも、やればやるほどこの活動は重要だなっていうのはわかってきました。20歳をすぎた知り合いの女の子が、「私が若いころにこの活動があったら非行に走らなかったのに」って言ってくれたり、定時制の女の子のグループと話し合いをした時も、その子たちが「絶対応援する!」って言って、「こんな場所がええねん!」って図面まで書いてくれたり。二段ベッドがいいとか、べったりじゃなくてちょっと声が聞こえてくるような感じがいいとか、隠れ家風がいいとか……。あとドクターフィッシュがいた方がいいとか(笑)。少女からのアイデアや「必要だ」っていう声が聴けたのも大きかったです。

信頼できる大人が街にいる未来を作りたい

――少女たちとのどんな関わり方を大事にしていますか?
北川:普段の居場所では、女の子たちを完全に信頼して任せています。頼りにしたら、ほんまにいい仕事をしてくれます。実は内心、ドキドキしている時もあるのですが、ひとりやふたりの失敗くらい、被っても大したことはない。それだったら面白い発想で意外な結果を楽しむ方が断然おもしろいです。
 ここでは、しゃべりかけられたらしゃべる、時々声掛けをするくらいで、距離は保ちながらも、でも「私はあなたのことをちゃんと見てますよ」と伝える。そんな関わり方をしたいなと思っています。
 DVに遭っているなど重篤なケースでない限り、なにか問題を抱えていても支援機関にすぐつなげるのではなく、まずは話を聴いて、必要な情報を提供するようにしています。公共の支援機関に繋がりにくかったり、距離がある子もここなら来れるかもしれないから、無理に引っ張っていくのではなくて、「あなたの自由は認めます。でも何かあったときはあなたのことは助けます」という姿勢でいたいです。
 適度な距離はあるけれど、ちょっと信頼できて、ちょっと話ができる人が地域に増えることがいい世の中だと思うんですよね。西濱さんたちと私たちはきっと、なりたい未来の社会は、一緒なんじゃないかなって思うんです。……よう言うた(笑)。

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 (右)北川美里さん

西濱:(笑)。でもほんとそうですね。女の子たちとの関係づくりのスタンスは、すごく共感しあえているなと思います。
 この活動の大きな目的は、少女を学校に行かせるとか、働かせるとかじゃなくて、京都の街にも信頼できる大人がいるよってことに気づいてもらうことだと思うから。そうなれるように、取り組みを続けていきたいです。

▼わかくさカフェについての情報は、京都わかくさねっとのFacebookで発信中!https://www.facebook.com/kyotowakakusanet/
実施時間:わかくさカフェ(毎週火曜日15時~18時)
     お昼寝(毎日10時~18時)
     食事や生活用品の提供(毎日12時~18時)
▼HOSTEL NINIROOM https://niniroom.jp/
〒606-8395 京都府京都市左京区東丸太町30−3
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(わかくさカフェ|少女のための居場所づくり始まりました)
https://note.com/niniroom/n/n120fe731b955


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