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わたしたちのかかわり方vol.1|ウィングス京都相談室

京都市内で、”女性に対する暴力”に向き合っている”ひと”を紹介するシリーズ「わたしたちのかかわり方」。第1弾は、女性のための相談機関として平成6(1994)年に開設したウィングス京都相談室を取り上げます。
”個人的なことは社会的なこと”のフェミニストカウンセリングの視点で、生き方、人間関係、暴力等、様々な相談を受ける場所…とは聞くものの、ウィングス京都で働く私自身、実はイメージが漠然としています。「女性相談」って何?どんなことをしているの?今回、相談員のお2人に聞きました。

「なぜかわからないけどモヤモヤする」に耳を傾ける

――お2人は、ふだんどのような相談を受けていますか?

A:
夫婦関係のこと、子どものこと、母親とのこと……本当に多岐にわたります。「離婚したいけどどうすればいい?」という具体的な悩みもあれば、長年の関係によってできてきた、解決に時間がかかる悩みもあります。

B:「なぜかわからないけどモヤモヤする」という方も多いですよね。例えば、夫の実家に帰省した時、長男の妻だからとなんでも手伝わされて居心地が悪い……とか。その悩みの背景には、家父長制とか、男尊女卑とか、ジェンダーの問題があることが多いので、私たちはその視点で相談を受けています。

A:やっぱりまだ女性には「妻だから」「嫁だから」「長女だから」といった様々な”縛り”があって、それぞれの”こうしなければならない”に捉われて悩んでいる方が多いと感じます。それが社会の当たり前の文化として刷り込まれているから、自分でもそのことに気づかずに、誰かに合わせて自分を犠牲にしてしまう方が多いように思います。

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”こうしなければならない”に「どうして?」と聞く

――どんなふうに相談に乗っていますか?

B
:まずは悩みを話してもらって、「こういうことでよかった?」「なんでそう思ったん?」って一個一個質問していくなかで、その人が何を考えているのか一緒に整理していきます。「夫の機嫌をみるのが当たり前」とか「いつも自分が悪い」とか、本人も気づいていない思い込みがあったら「それ、誰の当たり前なん?」って聞いてみたり、思い込んでしんどくなっていそうだったら「それやめてみたらどうなる?」って、想像してもらったり。

A:夫の転勤や結婚で仕事を辞めた女性が、ここで話をして気持ちを整理していく中で「本当は昔こういうことがやってみたかったんだ」と思い出してくれることがあります。そういう方は、結婚する前は自分で物事を決めることができていたのに、結婚して子育てをしていく中で、夫から「俺が稼いで食わせてやっている、養ってやっている」というようなことを言われ、パワーバランスが崩れてしまい、いつの間にか「自分は社会でやっていけない」「自分は何もできない」と自信を無くしてしまうことが多いんです。
そんな人に、「あなたは力を持っている」ということ、「自分の人生だから自分で決めていいんだよ」ということに気づいてもらえるようにしています。諦めていたけどやりたかったことが見つかって、挑戦している方は何人もいます。やっぱりみなさん、力があるんですよ。

女性の日常にある、さまざまな「暴力」

――「暴力」の相談もありますか?

B:
重いDVのケースももちろんあります。身体的な暴力だけじゃなくて、結婚した途端夫に「お前が悪い、間違ってる」って言い続けられた、といった精神的なものも多いです。日常的に怒られてコントロールされていくうちに、「私が悪いんだ」と思い込んで自尊感情がどんどん薄れていってしまう……。だから私たちはその人に寄り添い、「あなたは悪くないんだよ」「自信を持っていいんだよ」と伝えています。市の専門機関であるDV相談センターに繋ぐこともあります。

A:経済的な暴力もありますよね。夫の機嫌を損ねると生活費をもらえないとか、子どもの態度が悪いと夫が学校で必要なお金も出してくれないとか。まずはその状態がおかしいってことに気づいてもらって、じゃあどうしようか、って一緒に考える。よりよい道を自分で選択できるよう、話を聞いて、情報提供をします。

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相談を受ける中で価値観が変わった

――お2人が女性の相談に関わるきっかけを教えてくれますか?

A:
昔中学校の部活動の外部コーチを8年間やっていた時に、子どもたちがいい大人と接することが大事だって思ったんです。それで子どもが長く接するお母さんの支援ができたらいいなと思ったのがきっかけでした。

B:私はもともと相談の仕事をしたいと思っていたのと、まだ弱い立場にある女性たちに力をつけてほしい、と思いここで働き始めました。 
私自身もここで働く前は、ジェンダーの刷り込みが強くて。でもここで相談に乗る中で私自身も自分の思い込みに気づいていった部分があります。
生活の中で当たり前だと思っていたものってなかなか変えられないし、今までの考えていたことと違う別の考え方を受け入れることって、アイデンティティが崩れるくらいのつらいことだと思います。でも私も自分が縛られていたジェンダーに気づいて、価値観が変わっていって、楽になったな、って思いますよ。

「問題」をみつめ、「出口」を探す

――ウィングス京都の相談室の特徴はありますか?

A:「一緒に悩みを解決する」
ってことを大事にしているところですかね。傾聴して「悩みを吐き出してすっきりした」だけじゃなくて、話を聞くときも「なにが問題なのか」を意識して、それを相談者が一緒に考えて、解決までの「出口」を作ります。
その一つとして、ウィングス京都では法律相談も行っているのですが、相談員はそれへのサポートも行っています。事前に一緒に相談したいことを決めて、面接に一緒に臨むので、すごく心強いって言ってくれます。

B:
よく「女性はようしゃべる」っていうけど、実は”自分のこと”って意外としゃべってないんちゃうかな?って思ったりもするんですよ。相談に来た人で「自分のことばっかりしゃべってごめんなさいね」っていう人がいるんですよ。「ここは自分のことしゃべっていい場所なんだよ」っていうんだけど(笑) 
一対一でしゃべって聞いてくれて、何を考えているかゆっくり追究する場所と機会ってあんまりないから、「相談室」って「非日常」的な場所なのかもしれないですね。この場所で、なぜかわからないけどしんどい思いをしている人が、自分の力で動けるようにサポートしていけたら、と思っています。

〈お話を聞いて〉
女性が生きる中で直面する様々な暴力や生きづらさ。それに「傾聴」するだけでなく、「解決」まで並走してくれるのは、きっととても心強いはずだ、と思いました。もしもこの先、悩みを抱えながらも「相談してもしょうがない」と踏みとどまることがあったら、この相談室を思い出してくれたらうれしいです。「出口」を一緒に探す相談員がいます。

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*ウィングス京都閉館中(~5/31)は女性の電話相談のみの対応です。
 男性のための電話相談、DV相談、法律相談などもあります。
 詳しくは上記HPか、パンフレット(PDFで開きます)をご覧ください。


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