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旅の醍醐味は移動にあるかもしれない(まえがき最終回)

衝動的にベトナム行きを決めた。旅程は7日間。最終日は日付が変わるとともに日本に戻る飛行機に乗るので、実質6日でベトナムをまわる。人生初の海外一人旅だ。

直前のタイ・ラオス旅行は、同行者に合わせて行程を決めたので、自由に決められる旅行にワクワクを感じていた。人に合わせる旅行が嫌いな訳では無い。予想もつかない旅は大歓迎で、むしろ大好きだ。

とはいえ、心の中にあるモヤモヤしたものや、街並みに対する興味を徹底的にぶつけることの出来る一人旅。やりたいこと、行きたい場所はいくらでも出てくる。

ベトナムは南北に長い。それぞれの地域で気候も違えば風土も少し違う。ベトナム戦争などの影響を受けて、街の雰囲気もそれぞれの地域で異なると言う。
せっかくなので、ぼくは1週間でベトナムを南北に縦断することにした。

航空券の都合で、旅の始まりと終わりはハノイで迎える。この国の首都でもあるこの街は、ベトナム北部に位置する。
そこから徐々に南に下ることにした。ベトナムの旅と聞いて思い浮かぶのは、「水曜どうでしょう」のバイク縦断の旅だろうか。20年ほど前に、大泉洋さんたちが果たした縦断旅である。憧れもあるし彼らも1週間で国を渡ったというが、異国の地でバイクに乗るのは少し怖い。バイク旅を思いついた2秒後に首を振って却下した。

もうひとつ、ベトナム旅として人気なのが統一鉄道に乗ることらしい。ベトナム戦争の終結を記念して統一鉄道と呼ばれるようになった、正式名称を南北線という述べ1700kmの長距離路線だ。これは直線距離で旭川から鹿児島までに等しいらしい。
都市や山間部を次々と繋いでいくこの路線。「世界の車窓から」でもたびたび取り上げられているという。
観光地以外の景色も見られるとあって、人々の生活を見てみたい僕にはあまりにも魅力的。寝台車に乗る旅、なんだか面白そうだ!

ただし、統一鉄道はとてつもなく遅い。時速50kmほどまでしかスピードが出ないという。ハノイから、終点ホーチミンまで行こうとすると36時間もかかってしまうらしい。
途中下車すれば尚更時間がかかる。
さすがに6日間の旅行でこれは非効率だ。電車に乗るだけで旅が終わってしまう。(正確には電車ではないらしいが)
鉄道の旅には興味があるが、鉄道そのものには興味が無い。統一鉄道の旅も諦めた。

最終的に飛行機と鉄道を組みあわせ、なんとなくの旅程を立てた。冒険と効率のハイブリッド。挑戦と保身を同時に考える、いかにもぼくらしい旅程だ。

大まかに移動の予定が決まり、ベトナム国内線の航空券、鉄道の乗車券も手配した。時間がもったいないので移動は夜中〜早朝に行う。2日に1回のペースで車中泊などが混在する予定になった。

かくして、ぼくのベトナム旅行は3泊7日で南北を縦断する、ほんのちょっと強行軍な様相を呈した。

アイデンティティが崩壊したぼくは、過去の生き方に向き合いつつ、新しい人との関わり方を模索するため、人生の区切りとして2週間ぶりの東南アジア旅行に出かける。

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