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心電図添削で、「よくある」研修医の読影間違い

以前、心電図読影について、心構えを述べましたが、実際に現場で研修医に指導していて感じる「よくある」間違いについて、述べていきます。今回は、「リズム」に関することではなく、12誘導心電図の所見に関することを取り上げます。

よくある間違い① 下記の3つを混同する

A. 左脚ブロック
B. 陳旧性前壁心筋梗塞
C. (通常の右室留置の)ペースメーカ波形

 これは、分かる人には「あぁ、なるほど」と思われるところなのですが、意外と多い間違いですね。
 特に、左脚ブロックというのは研修医は見慣れていないというのがまず原因だと思います。左脚ブロックそのものが少ないので、「教科書で代表的な波形を見たことはある」程度のため、実際に見ても気づかないことが多いようです。そのため、左脚ブロック波形を見たときに、V1-3がQSパターンに見え、しかもSTが上昇しているように見えてしまうのです。これはいわゆる前壁の陳旧性梗塞の初見になりますので、見慣れていない研修医は前壁梗塞だと思ってしまいます。
 また、ペースメーカ波形も見慣れていない研修医が多いです。ペーシングスパイクがない(もしくは小さい)とVペーシング(心室ペーシング)されているかどうかわからない、という人も多いです。すると、(右室ペーシングでは)QRS波形そのものは限りなく左脚ブロック型になりますので、左脚ブロックと間違える(そもそも左脚ブロックを見慣れていない)。

よくある間違い②移行帯のチェックをしていない

 間違い、というよりは「見落とし」なのですが、多くの研修医が、胸部誘導の移行帯をチェックする習慣がありません。そのため、

a. 反時計方向回転
b. 時計方向回転

を見抜けないケースが多いです。特別、これが診断に直結することは少ないし、マイナーな所見なので良いのですが、問題は、

c. R波の増高不良

を見落とすケースです。これは左前下行枝の高度狭窄を示唆する所見であり、「循環器内科医」的には「絶対に見落としてほしくない所見」です。V1からだいたいV5くらいにかけて、R波が徐々に増高していくのが「正常」であるという認識を持っていないと危ないです。胸部移行帯をチェックするのはこういった意味で大事です。


 ※また、反時計方向回転も、たまに大きな見逃しにつながることがあります。回旋枝末梢の閉塞による「(心電図上の)後壁梗塞」です(エコー上は下(後)側壁ですね)。この部位の心筋梗塞では、STが上がりません
 そのため、「いわゆる『STEMIです、急いで来てください』とならない」のです。で、トロポニンが上がっているのを見た研修医が、エコーをよくよく見ると、後壁の壁運動低下があった、みたいなケースですね。来院から診断までの時間が大事な心筋梗塞ですので、胸痛患者の反時計方向回転(たぶんV1-3のST低下やV6あたりのST上昇も「目を凝らせば」あると思います)は要注意です


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