見出し画像

おいしいワインを選ぶコツ(家飲み編)


本稿はワインビギナーの方向けに作成しました。
全文無料公開ですが「投げ銭」制も採用しています。

まとめ
1. 白で迷ったら甲州から始める
2. 赤で迷ったらマスカットベーリーAから始める
3. 税抜き1本¥2,000を目安に

 

 おいしいワイン、いいワインを飲みたい。

 ・・・でも、どうやって選んでいいかわからないという気持ちで幣ブログをご覧になったいるワインビギナーの方もいらっしゃると思います。
 そんなモヤモヤを抱えた方は以下の方法でワインを選んでみてはいかがでしょうか。
 具体的に日本ワインの品種を例示していますが、一番の肝は「税抜1本¥2,000を目安に」ですので、輸入ワインでももちろんOKです。特にヨーロッパのワインはEPA関税撤廃の影響で以前より少し安くなってきているので少しおトク感がありますね。


1. 白で迷ったら甲州から始める

 甲州とは日本で古くから栽培されている固有品種です。日本ワインのアイコンと言ってもいいでしょう。OIV(「国際ブドウ、ワイン機構」=ワイン業界の国際的な組合のようなもの)でもワイン用ぶどうとして認められています。

 理由その1: 甲州にはお勧めの価格帯(¥2,000円未満)のワインが多い
 eコマースサイトや店頭で調べて頂くとおわかりのように、甲州には幣ブログでお勧めの税抜き1本¥2,000円未満で買えるワインが多いです。特に大手飲料各社の甲州の品質は安定でコスパが非常に高いと感じますので、まずはそこから始めてみるのもいいかと思います。

 理由その2: 和食と合う
 日本の気候と甲州というぶどう品種の特性上、アルコールは高くなく穏やかながら、リンゴ・柑橘などのフレッシュな果実の香りと爽やかな酸味、後味の旨味を備えたワインが多く、あっさりした和食によく合うワインと一般に言われます。
 近年日本の食卓は洋食化が進んでいると言われますが、これからも和食の要素が日本の食卓から消えることはなく和洋折衷がいっそう深化するのではないでしょうか。洋風の食事でも比較的シンプルであっさりした味付けの料理、サラダや魚料理などであれば、甲州は好相性ではないでしょうか。
独特のスモーキーな香りとやや苦みを感じる甲州もありますが、味香りの「アクセント」になる程度のものがほとんどで甲州「らしさ」とポジティブに捉える向きもあります。これら甲州の「らしさ」が極端に苦手な方はシャルドネなど人気のヨーロッパ品種を好まれるかもしれません。

 理由その3: ラベル記載が日本語
 英語が苦手な方、フランス語、スペイン語、イタリア語に至ってはなおのことと思いますが、エチケット(ラベル)が意味するところが全く分からないのではないでしょうか。逆に日本語だとラベル上の文字情報は理解でき、裏ラベルには原材料表示以外の情報が書かれていることも多いため、今から楽しもうとするワインの「物語」が心に浮かんでくるのではないでしょうか。
 ワインを飲んだ時の満足度は直接的な味香りだけで決まらないはずです。・・・と言い切るのも過去の研究結果からそのことが部分的に証明されているからです。(それら実験についてはいずれ別稿で綴ろうと思っています。)


2. 赤で迷ったらマスカットベーリーAから始める

 マスカットベーリーA(以下ベーリーA)は、川上善兵衛という方が生み出した「交配品種」と呼ばれるぶどうです。100年以上前に善兵衛さんが拓いた歴史あるぶどう畑、岩の原葡萄園はサントリーの傘下として今も上質のワインを造り続けていて感慨深いですね。日本の気候風土に合う品種と言われており日本各地で栽培されていますので、ワイナリーや産地による違いを比較して楽しむことも可能です。こちらもOIVがワイン用と認めたぶどう品種です。

 お勧めする理由は甲州と同じく「幣ブログ推奨価格帯での入手のしやすさ」、「和食との相性」、「ラベル記載が日本語」であるためです。飲みごたえは軽めから中庸で、フレッシュな新酒タイプからやや熟成感を狙ったものまで食事とのペアリングでも幅広く活躍してくれそうです。¥2,000ワインとなると熟成タイプでなく新酒タイプが多くなるかもしれません。

 ベーリーAのワインは少し好みが分かれるかもしれません、独特の香味を感じることがあるためです。
 外国人のワイン業界人、特にヨーロッパの方にベーリーAを飲ませると「あまり好みではない」という反応が多いですね。フォクシーフレーバーと呼ばれる香りが原因のようです。一部のワインギーク(=おたく)の方からは「ベーリーAのようなフォクシーな交配品種は邪道!」との謗りを受けるかもしれません、それが今のところ世界標準であるからですね。

 とは言え、品質安定度とコスパの高い大手飲料会社のマスカットベーリーAワインは一度お飲み頂く価値があると思います。(関連稿として「日本ワインの赤選びは上級者向けの危険なプレイ?」をup予定です。)

画像1


3. 1本¥2,000を目安に選ぶ

 なぜ税抜き1本¥2,000なのか?なぜ¥980円ではないのか?なぜ¥5,000ではないのか? 3つの理由をあげます。

理由その1: 税抜き1本¥2,000周辺にコスパの高いワインが多いから
 幣ブログで「コスパが高い」というとき、平均的な収入~平均よりやや裕福で嗜好品に少しはお金が使える20代後半以上のワインビギナーさんにとっての「コスパ」を想定しています。
 成人したての方にとっては¥2,000でも厳しいかもしれませんが、来るべき大切な人とのお家料理デートやお祝い事を想定して読んで頂いてはどうでしょうか。


 私の今までの経験や後述の調査結果から、一般的な消費者さんにとっては、値頃感=相場を踏まえて満足度、選ぶ楽しみが最大化されるのは¥2,000/本あたりの価格帯ではないかと推察しています。
 日欧EPA発効はワインの売り手にも買い手にもまさに追い風で、ヨーロッパのワインも以前よりややお手頃になり、コスパの高い¥2,000ワインの選択肢がさらに増えるのではないでしょうか。関税撤廃による恩恵はスティルワイン(=泡ものではないワイン)でボトル1本750mlで¥93-94程度と決まっていますので¥2,000円のワインなら頑張っても4-5%の値下げではありますが、4-5%よりさらに値下げすると公言する/実施した輸入元、小売り各社も少なくないようです。逆に高いワインほどEPAのインパクトは少なくなります、100円弱の値下げですから。¥2,000ワインよりもさらに高額なワインを求めるワイン常習者の方にとっては相対的に小さな恩恵になってしまいます。なお、日本ワインの場合はヨーロッパ産品ではないのでEPAの恩恵は受けられません。


理由その2: 3ケタワインの選択肢の少なさ
 スーパー・コンビニで買えるような税抜き1本3ケタのワインにも驚きのコスパワインは存在すると感じます。全般的に品質のバラつきもなく、「難しいことはわからないし、とりあえずお試しで飲んでみて余ったら料理にでも使おうか」という方にとっては比較的手を出しやすい品質と価格のバランスであるように感じます。実際消費者アンケートや市場調査では1本¥500~1,500未満の価格帯のワインが売れ筋=ボリュームゾーンのようです。
(引用は以下)
https://myel.myvoice.jp/products/detail.php?product_id=22101
ワイン&スピリッツ専門誌「WANDS」2015年4月号: 統計データから輸入ワイン全体の約8割に¥1,500未満/本の希望小売価格が設定されていることが読み取れる

 しかし3ケタになると選択肢がやや限られてくるのが実情です。南米、スペイン、アメリカの大手生産者やスーパー・コンビニのPB品から1本を選ぶことになるでしょうか。品種や味わいのバラエティも上の価格帯と比べて狭くなるでしょう。
 ワインにおいて「選択肢」というのは意外に重要かもしれません。ワインビギナーの方にとってはスーパー・コンビニの品揃えでも最初は多すぎて選びきれないかもしれませんが、仮に月1本のペースで陳列棚にあるワインを片っ端から試してく場合、最後の1本の味見が終わった途端、急に新しいワインへの飢えを感じてしまうのではないでしょうか。実際私の周りに同じ銘柄のワインだけをリピートして継続的に飲み続けている人は見当たりません、繰り返し同じもの口にして評価する一部のプロを除いては、ですね。人はワインを飲むという行為に「新しい体験、新しい発見」を求めているのでしょうか。このあたりは別の機会に綴ることができればと思っています。

 3ケタワイン(税抜き1本¥500~1,000未満)のワインから初めて、税抜き1本¥1,000~1,500未満を経て、さらに新しいワインとの出会いを求めたいと思うようになれば税抜き1本¥2,000前後のワインにチャレンジする、という形で段階を踏むのもいいかもしれません。


理由その3: ワインの値頃感
 先ほど引用した「MyVoice」というアンケート調査でもワイン専門誌「WANDS」の調査でも同じ方向性の結果が出ています、それぞれ調査年が少し古いですが。小売価格1本¥1,500未満のワインが全輸入量の約8割を占めるということは多くの人にとっての「ワインを買ってもいい価格の上限は¥1,500」ということになります。極論するとワインギークを除く多くの人は「いくらおいしいと言われても税抜き1本¥5,000のワインにはお金を出せない、もしくは価値があるかどうか決められない」と考えるのではないかと推察します。もっと上の価格帯になると、ワインギークでもなく超裕福層でもないワインビギナーの方が、例えば1万円ワインと2万円ワインの味香りを比べた時に価格差ほどの満足度の違いをお感じになるか、疑問が残ります。私自身1万円ワインと2万円ワインを横並びでブラインドテイスティングしたときに、1万円分の違いを見つけることができるか自信がありません。

 本稿でお勧めする¥2,000ワインも一般的な値頃感よりやや高めではあります。しかし国産輸入ともに¥1,000~1,500未満のワインより¥2,000前後のワインの方がより「満足度」の高いワインに出会える確率が高くなるように思います。少し乱暴な言い方ですがその数百円の違いが品質面では比較的大きくなるようなイメージです。EPAの影響で¥1,000~1,500未満のヨーロッパワインに面白い選択肢は増えてきているかもしれませんが。
 ¥500~1,500ワインの愛好家でワインとの新しい出会いを求めたいと思っている方はぜひ¥2,000円ワインにチャレンジして頂きたいと思います。特別な日に買って飲んでみて、満足したならデイリーユースに昇格・・・、といった形で。
 サッポロビールが行ったEPAに関する消費者アンケートでは先に述べた2つの統計とほぼ整合で¥1,400未満のワインへの購買意欲が圧倒的でしたが¥1,400~3,000のワインも健闘していて、それらに対する購買意欲は合計32%でした。複数回答可での32%ですので単純に3割の人がこの価格帯にチャレンジしようと言っているわけではありませんが、EPA発効がポジティブな影響を与えているな~と実感する次第です。
https://www.sapporobeer.jp/news_release/0000009200/

 コスパワインについて非常に高い経験知を持つブロガー/発信者さんもいらっしゃいますね。彼らが発信する情報をワイン購入の参考にされるのもいいアイディアですね。
彼らはまさに「ワイン百人組手」を粛々と実践されており、ワインビギナーのみならずワイン常習者の方々にとっても学びの多いブログですね。安ワイン道場師範さんはまさに百戦錬磨の域で、「バーチャルワイン会」というSNS世界ならではの面白い試みをされていますね。たいがくんさんの「庶民のワインポイント(SWP)」は試行錯誤を経て練り込まれたワインスコアリングが目を引きますね。 
テイスティングは熟達者と一緒に行うのが上達の近道と言われますが、なかなか身近に熟達者はいないものです。しかし、彼らのような探究心と発信力のあるナビゲーターと、我々を繋いでくれるインターネットのおかげで、たとえ同じ場所・時間にいなくても熟達者と一緒に共通のワインをテイスティングし、経験知を得ることができる。我々は「便利な時代に生きている」と感じます。

http://www2s.biglobe.ne.jp/~nikata/
https://taigakun-wine.com/

 とはいえ、依然ワインビギナーの方には「そもそも自分が飲んだワインがどれくらいおいしいのかわからない・・・」、というモヤモヤがあると思います。別稿:簡単!おいしいワインの「基準」と「値頃感」ではそんなモヤモヤに対しての提言を綴っています。ソムリエさんでなくても大丈夫、ワインの味香りの良し悪しは健康なら誰にでもわかります。自分の判断基準が身に付くとワイン選びも一層楽しくなりますね。

さんて!

じんわり

以降に文章はありません。
本稿は全文無料公開しつつ「投げ銭」制も採用しています。
今後の投稿へのご期待と応援を頂けますと幸いです。

ここから先は

0字

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?