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梁世柱氏のペアリング基礎理論:チョコに合う辛口ワインは〇〇?

突然ですが、チョコに合う辛口ワインってなんだと思いますか?

チョコレートやバニラなどの共通の風味を持つとされる、濃くて樽の効いたニューワールドの赤ワインを想像される方もいるかも知れません。

しかし、世界のソムリエ・BEST50にも選ばれる、梁世柱氏によると、チョコに合う辛口ワインは「ありません」。

つい先日、梁世柱氏の「ペアリング基礎講座」をヴィノテラスワインスクールで受講した際にこの話を効いたのですが、これに留まらず、ペアリングについての有益な考え方が学べたので、少し紹介したいと思います。

ペアリングの基礎理論 講師 梁 世柱:ヴィノテラスワインスクール

チョコに合う辛口ワインが「存在しない」のは何故か?

まず、冒頭の問いに直接的な答えを書きます。

それは、チョコの持つ強い甘みに匹敵する甘みが無い辛口ワインは、負の相乗効果で悪い苦味を生じさせるからです。
つまり、明確なNGを絶対に踏み抜いてしまうからチョコに合う辛口ワインが存在しないのです。

これは「甘み」に関する3つの基礎理論のうち、ハーモナイズの原則に基づくものです。

甘味の基礎理論(1.ハーモナイズ)
料理に甘みが含まれる場合、料理よりもわずかに甘みが強いワインを合わせることによって、調和が生まれる。
※ワインの甘みが下回った場合、苦味が生じる。

梁世柱「ペアリング基礎理論」

私の経験的にも、デザートと辛口ワインを合わせると、必ず口の中がキュッとなり、後味が悪くなる感覚があり、非常に納得のいくものでした。

(講座では、ジャムをなめた後に①辛口の白ワインと、②中甘口の白ワインを飲み比べることで、体感を持って原則を確かめることが出来ました。)

ペアリング基礎理論とは?

大前提

甘味に関する話だけではなく、「ペアリング基礎理論」という総論も非常に有用だと思ったので、大まかに考え方を紹介したいと思います。

ペアリング基礎理論の素晴らしいところは、前提に「最終的には主観」であり、「失敗しないための理論」であることが掲げられていることです。
ペアリングをサービスとして提供するソムリエには、サービスの受け手が主観的に満足することが求められます。そのために、危ない橋を渡らず、好まれやすい選択をするというスタンスを取っています。

講座の中でも、高アルコールは辛味を増幅するため推奨はされないが、間違いではなく、「そうしないと物足りない」「それがいいんじゃないか」と感じる受け手もいることに丁寧に触れられていました。

ペアリング基礎理論の2Step

ペアリング基礎理論は2Stepに分かれます。各Stepのうち、左の要素ほど重要度が高くなっています。

各要素には、上で引用したような原則が2~4個あります。
1st Stepの各要素を押さえることで失敗がなくなります。その上で、2nd Stepを踏むことで、より面白みのあるペアリングが出来るようになるという仕組みです。

各要素の理論については触れる事はしませんが、面白いのは、「風味」や「テロワール」が2nd Stepにある点です

ペアリングといえば、キャッチーなテロワールや風味の話が真っ先に出て、悪い場合はそればかりになったりしますが、この理論では1st Stepの後のスパイス的な扱いになっています。(軽視しているわけではなく、それだけ1st Stepに重きをおいているということです。)

冒頭のチョコの話で考えると分かりやすいのですが、「濃くて樽の効いたニューワールドの辛口赤ワイン」は、共通の風味(2nd Step)は持ちますが、ペアリングが失敗するのは、甘味の考慮(1st Step)を怠っているからです。

うんちく知識偏重になりがちなペアリングですが、この理論は五感の体感をベースに考えることが出来る優れたものだと思いました。
受講を迷っている方がいたら是非おすすめしたい講座です。

メモ

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