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メタバース、デバイスの課題

本記事は、ランサーズ新しい働き方LABの「研究員制度」の活動の一環として、私個人が行う「働き方実験」についてまとめたものです。

18人の大学職員が1週間メタバースで働いてみた結果

Business Insider Japanに次のような記事があった。

18人の大学職員が1週間メタバースで働いてみた結
果…2人は数時間で脱落 | Business Insider Japan

Stephen Jones、Business Insider Japan(Jun. 24, 2022)

 まるまる1週間の間、ずっとVR空間で仕事をするとどうなるかという実験の結果は、ネガティブなものだった、という記事。この記事を読む限りでは、デバイスの重さといった身体的な不快感と、物理的な身体を持たないバーチャル空間での生産性も関係しそうだ。

VRデバイスの問題

 VRデバイスについては、軽いと言われるOculus Quest 2であっても、ヘッドセットという形状である限りは、常に頭部への圧迫感は避けられない。マスクでさえ長時間つけていれば不快なのだから、ヘッドセットは負担が大きい。

Oculus Quest 2

 さらに記事の中では、被験者がメタバースで長時間過ごす事で、不安感を感じる、あるいは幸福感が下がると答えた、としている。

 VRの不快感は慣れるもの、という話もあるが、個人差もあるだろう。自分自身はVR酔いをする傾向があるので、今はメタバースに入る時も実はPCから入っている。そのため、特に不快感や不安などを感じることは無い。恐らくメタバースに長時間入っていることそのものが、不安感や不快感を増幅させるのではなく、VRデバイスの問題が大きいのではないかと思う。

 現在、多くのメーカーがVRデバイスの軽量化に挑んでいる。没入感で言えば、今のところはヘッドセットが最強だが、今後はARデバイスのようなグラス型、さらにはVRコンタクトといった、電子回路をコンタクトレンズに埋め込んだものを装着する事で、メタバース空間を行き来する事が可能になるかも知れない(もちろん、そのためには超高速通信技術が不可欠ではある)。

もっともこれらはあくまでも視覚情報だけの話なので、メタバース空間での長時間作業がもたらす不安感などが、どの程度低減されていくかは分からない。

メタバース空間での感覚制限

 そもそも、メタバース空間で長時間過ごすことによる不安感の正体は何なのだろうか?

 一つは「五感」が制限されることではないかと思う。現段階では、視覚と聴覚以外の感覚をメタバース空間で体感することが出来ない。普段使えている感覚が制限されることによるストレスは、不安につながる。記事の中にある実験では、メモを取るという簡単な動作がバーチャル空間では物理的に出来ないことによる生産性の低さを感じた、との報告があったそうだ。ただ、これはPCやスマートフォンでメタバース空間に入っている時は、殆ど感じない。それは体感的に、メタバース空間とリアルな空間を物理的にしっかり別のものと認識出来るからだろう。一方、VRデバイスで入った場合は、没入感がリアルに近付くほど、リアルとのギャップがストレスになるのではないか。

 また、人とのコミュニケーションも一種のストレスになるかも知れない。人はコミュニケーションの約65%を身振りやアイコンタクトなどの非言語で行なっているという。その膨大な情報量を処理するには、まだ技術が進んでいない。

 メタバース上で、フルタイムの仕事をする為には、身体も含めた執務環境を如何に快適化するかが課題になりそうだ。

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