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リリコン初体験その6・リリコン多重録音

 リリコンだけで多重録音でひとり4重奏アンサンブルをやってみたけれどとにかく音程・ハーモニーを合わせるのが難しくて・・・というお話。


 さて。吹奏楽部アガリかつビッグバンドを長くやっていることもあり合奏が大好きです。特にジャズサックスアンサンブルは学生の時WSQを聴いて衝撃を受けて以来国内海外問わず、かなりCD蒐集しました。

 そんな背景もありウインドシンセを初めたときからこれでアンサンブルしたい!とずっと思っていたのですが自分的にようやく実現したのが2012年、AppleのGaragebandで初めて作ったのがこの録音(Someone to Watch Over Me)でいやあこのときは嬉しかったなぁ。
 以来、(主に)サックスアンサンブルの楽譜を使ってウインドシンセでのひとり多重録音動画をときどきyoutubeにアップするのが趣味となっておりますが、

 せっかくリリコンを触る機会を得たのだから、これでアンサンブルしないわけにはいかない!ということで外出自粛要請下の年末年始の時間を使って同曲の再録に挑戦してみました。

 リリコンだけの4重奏って、ちょっと調べても見つかりませんでしたが、もしかして世界初かな?違うかな? 
 しかしですね、たった2分ちょいの演奏なんですが、テスト録音に半日、本番録音に丸二日かかりました。何が難しいって、とにかく音程が合わないんです。
 合わないというか僕の耳がヘタクソで合わせられないというのが精確な言い方ですが、まずもって1partだけを完全なアカペラで演奏すると絶対音感の無い悲しさ、1曲の間正しいピッチを保てない。なにしろちょっとだけリップベンドの噛む強さが変わるとすぐ音程がズレてしまうので、ここに関してはサックスの方がよっぽど簡単。しかたないので、過去にWX5とIFWで録音したLogicのファイルを聴きながら、耳で音程をあわせつつ下のpartから1partづつリリコン録音に入れ替えるという大分姑息な作戦を実行。で、最後に1st part(ソロパート)を重ねて、良しこれで大丈夫、と思って聞き返してみると何故かハーモニーの音程がずれまくりだったり。どうもヘッドホンで聴くのとスピーカーで聴くのでは音量バランスの兼ね合いもあったりしてピッチの聞こえ方が違うらしいのと、SAW波系音色を聴きながらPULSE波系の音色のハーモニーを合わせるのも同じような兼ね合いで、合わせているつもりが合っていないということが起こりやすいようですが、とにかくトライアンドエラーの繰り返しでそのうち耳もおかしくなってきてワケワカメ・・・
 特に切ないのが、ツマミ式のアナログシンセなので前に録音したパートのやり直しの時に全く同じ音が再現しないこと。またサックス用の譜面を使用しているのでBb管とEb管の切り換え調整もあり、音色と音程の再調整だけで結構な時間がかかること。
 さらに特異的なトラブルとして、どうもお借りしているLyricon driverの個体は、気温が20度くらいに上がると最低音運指のCとBのキ—(左右の小指キー)の接触が悪くなるようで、運指に反応しないことがあり、良い感じで吹けていたのに最後の音で接触不良で変な音が出てしまい、、ということが何度も。しかたないので暖房を切って寒い中で録音したりして、いったい俺は正月からひきこもって独り何をやっているのか・・・・
 この片の問題(音程・トランスポーズ・メカトラブル)はWX5やEWIではほぼ無いですから、そりゃぁ当時皆さんリリコンからEWIに切り換えるわけですよねぇ。

 そんな愚痴はさておき、試行錯誤の結果をまとめると次のような感じ。まあこんなメモはマニアックすぎて何の役にも立たないでしょうが・・・
・最初に低音パートを録音する(チューナーを見ながら突拍子も無い音程になっていないかチェックしつつ。ただしLogic内蔵のチューナープラグインはあまり参考にならない)。聞き返してみて音程が酷いようなら、WX5とか音程の安定している楽器でガイドパートをまず録音し、それを聴きながら練習したり、聴きながら録音したりする。
・その次にリードパートまたはメロディーの多いパートを録音。
・その次にリードとベースを聴きながらハーモニーのパートを上のパートから録音。
・低音パート以外は別楽器で録ったガイドパートは使わずに低音パートとメロディーパートを聴きながら合わせていく。
・録音時のヘッドホンの音量およびその時録音するパートの音量は控えめにする。大きいと音程合わせづらい。
・音色の波形が異なると(SAW波パートにPULSE波パートを重ねるとか)合わせにくい。オシレーターシンク等変調がかかかっているものも合わせにくい。
・SEMの場合、低音域は低い下側に音程がズレていく傾向なのでそのシンセサイザーのクセも考慮してFreqを調整する。特にバリトンサックスパートで顕著なため、バリトンサックス的な最低音域と高音域でリップベンドで音程を調整する必要あり。ベンド幅を小さくすると特にバリトンサックスパートはリップベンドで調整しきれなくなるのでこの方法での音程安定化は出来ない。(ある程度幅の広いベンド幅に設定した上で音域毎に噛む強さを変える必要あり。マジか。)
・1パート録音毎にスピーカー、および種類の違うヘッドホンで聴き返して音程ズレが無いかチェックしたほうが取り返しがつきやすい。
・完全に個人の問題だが、自分的には2テイクくらいやって上手くいかなかったらしばらく間を置いてからやり直したほうが良いテイクがとれる

[2021/1/10追記]
 この記事の後、facebook経由でオランダのリリコンオーナーの方から"Lyricon Driverはbend downじゃなくてbend upのCV出力を使ってcalibrationしたほうが安定するよ"とアドバイスいただきまして、現在bend upで丁度良いところを探り中です。設定関係は後で別記事にまとめておきたいと思ってます。Thank you Mr. Frank!

 あと、動画的にはついでに初挑戦としてyoutubeでもよく見かけるピクチャーインピクチャーで「リリコン4本」を強調してみました(MacのiMovie 10使用)。だけどこれ動画作成にとっても時間がかかりますね・・・・

 なお、このyoutubeの前のテスト録音の記録はこちら。https://soundcloud.com/wx5sandbox/someone-to-watch-over-me-lyricon-test-20201213
 細かい設定無しにテキトーで一発録りに近いものですが最終的な出来はそんなに変わらないという、あるあるな感じになっておりますですね。

 さらになお、2013年にWX5とIFWで再録してyoutubeにあげたものはhttps://youtu.be/5FOqlM9H0Y4
なんですが、これも悪くは無いと自画自賛しているのですが4パートがピタッと上手くいったときの説得力はさすがにリリコン+SEMのほうが上かな、とは思います。

で、せっかく試行錯誤したんだからもう1曲くらいやってみようということでやってみたのがこちら。

Lyricon One-man Quartet - Besame Mucho

 テナーパート2つは前回のオシレーターシンク音色を使ってます。この曲に合うと思ったんですけどそれ以前に音程ですね。これも色々試行錯誤したんですが、結局不安定さは改善出来ず、、、リバーブを深くして誤魔化してます(誤魔化しきれてないけど)。
 これも昔WX5とIFWでやってみたのは
https://soundcloud.com/wx5workbook/besame-mucho-wx5-ifw1-0b23
でして、音色の説得力はさすがのリリコン+SEMですが、音楽的には音程が安定してるほうが優先順位高いですよね。


 つくづく音程をとる難しさに打ちのめされたリリコンアンサンブル挑戦でした。・・・そろそろレンタル期間終了だし、たぶんもうリリコンアンサンブルは挑戦しないと思うけれど、リリコン話は・・・あと少し続きます。



余談:
2曲とも使用した楽譜は"Saxophobia"のアレンジ・模範演奏付きの"Jazz Standards for Sax Quartet"。無駄な小難しさが無く中級アマチュアが初見で演奏できる譜面ながら、簡単過ぎず面白くカッコ良く奥が深いという非常にお薦めの曲集です。ジャズ系サックスアンサンブル楽譜ではイチオシ。模範演奏聴くだけでも買う価値あると思います。vol.2も出てて両方お薦めです。


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