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[WS音源探訪メモ] GForce Oberheim OB-X

GForceから2023年10月にリリースされたソフトウェア音源のGForce Oberheim OB-Xを触ってみた記録です。

OB-X概要

OB-XはOberheim社のハードウェアシンセの伝説的銘機ですが、これをソフトウェアエミュレーションしたのがGForce社のOberheim OB-X。OB-Xのエミュレータソフトはいくつか存在しますが、このGForce社のは「初のOberheim公認」のソフトであるところがウリ。

Mac/Win プラグイン、スタンドアロン £99.99(時々セールされると予想)
https://www.gforcesoftware.com/products/ob-x/

 デモ版もあり、一部のプリセットしか読み込めないのと、作成した音色の保存ができない制限はあるものの7日間6時間以内ほぼフル機能を試すことができます。

デモ版を試してみた結論

 私はGForce社のOberheim SEM(これも初のOberheim公認SEMエミュレーションソフト)を愛用しておりまして同じGForceということで期待も大きく早速デモ版を試してみました。
 結論から言うと、ウィンドシンセで充分使えてポリ発音もできて良い音がする良いソフトでしたが、操作性もあわせると僕が今よく使っているソフト(GForce SEM、Cherry Audio 8Voice、VPS Avenger)を置き換えるほどではないなぁということで購入には至りませんでしたが、ウィンドシンセでコントロールするときの設定について記録としてメモしておきます。

良いと思った点:
・プリセット鳴らすだけでも気持ちよくなる音色。
・ブレスによるフィルター開閉ノイズは発生無しとみなせるレベル
・音の切れ目のパツパツも少し工夫すれば無くせる
・VOICEの設定値を増やしてDETUNEツマミとVINTAGEツマミを増やすだけで気持ち良く分厚いデチューンサウンドになる
・2VCO,ローパスフィルター1種とシンプルな構成で変に悩む必要がない
・VELOCITY、AFTERTOUCHでカットオフ、ゲイン等をコントロールできる
・ほとんどのツマミとボタンにMIDI CC LEARNできて、一つのCCを複数のノブにアサインすることも可能
・MACROツマミで全てのツマミを最大値を決めてコントロールできる。MACROツマミにCCをアサインすることでCC(例えばブレス)でツマミを最大値を設定してコントロールできる。
・グライド可能

あと一歩と思った点
・1VCOをモノで鳴らすだけならSEMのほうが使いやすい
・パツパツは無くせるがOSC1、OSC2のレベルをブレスで変える設定が必要で少しめんどくさい。
・MACROツマミ利用でブレスによるモジュレーションマトリクス的なことは可能だが、反転やマイナス方向の設定が少し手間がかかるのと、例えばCUTOFFをMacro1、Macro2の両方でコントロールすることはできないので実用上充分だが、凝った細かい設定まではできない。

ウィンドセンセでコントロールする際の設定メモ

いろんな方法があると思いますが、私の設定方法のメモです。

ウィンドコントローラー側

・ブレスセンサーから、CC2とAftertouchの両方を出力。
・グライドセンサーから、CC5(0〜127)を出力
・MWiCでハーモニー機能を使う場合のみ:XtraキーをHarmonyに設定しさらにそのON/OFF時にCC3が出るように設定。かつHarmony Velocotyを10%に設定

OB-X側

MIDI LEARNの設定(図1参照)
・Macro1ノブにCC2(息)を設定
・Macro3ノブにCC5を設定
・(MWiCでハーモニー機能を使う場合のみ):MONO〜POLY切り替えボタンとUNISONボタンの2つにCC3を設定し、さらに、ホストDAWのMainstageでCC3のカーブを「反転してCC3=0のとき80、CC3=127のとき0」に設定

図1.  OB-X MIDI CC LEARNの画面

 Cutoffに直接CC2をアサインするだけも充分演奏できるしこれでも良いのですが、この場合cutoffの範囲は常に0〜127に固定されてしまい音色作りの自由度が下がるので、Macroノブを経由することで最小値・最大値を設定した音作りを可能にしています。

音量とCutoffのコントロールの設定のポイント

 前述の通り、cutoffはMacroノブ経由でModulation Matrix的に行います。
Macro1ボタンの隣の「+」を各ノブにドラッグするとアサインができます。そのノブを「右クリックしながら動かす」ことで動かす範囲を設定できます(図2)

図2. Macro1ノブにcutoff、OSC2の音程、OSC1とOSC2 の音量、OSC1のパルス幅をアサイン

ブレス-Cutoffの設定(息に対する反応も)

 Macro1ノブ(CC2をアサイン済み)でCutOffをコントロールします。開きのカーブがキツイと思う場合は、左側の「Aftertouch」のデスティネーションでVCFを選択し、ノブを少しプラスにします。こうするとCC2とAftertouchが加算されてcutoffが動くので、より少ない息でcutoffが開きます。cutoffノブの最小値と合わせて、息に対する反応を好みに設定します

 ちなみに、CC2でMacro1とMacro2ノブの両方をコントロールすることはできますが、CutoffをMacro1とMacro2の両方で加算してコントロールすることはできません(Cutoffを動かせるMacroノブはどれか1個だけ)。

 息によるフィルター開閉ノイズは感じません。かつレスポンスも良いです。この点はウィンドシンセ的には素晴らしいです。

ブレス-音量の設定(パツパツ消しも)

 息でcutoffをコントロールするだけでもOKではありますが、加えて息で音量をコントロールするには設定としてはいくつかありますが私的にはOSC1のLEVELとOSC2のLEVELをMacro1(CC2)でコントロールするのがベストと思いました。これであれば音色がどんな設定の場合でもパツパツ音をほぼゼロにすることができます。ちょっと設定が面倒くさいのが難点ですが。

 他の手段としては、左端の「Volume」をブレスコントロールする場合は、内蔵エフェクト音(ディレイやリバーブ)の音量も変わってしまうためNG、LOUDNESS ENVELOPEのSUTAINをMacro1で0〜100%でコントロールするのはアリなのですが、cutoffの初期値がゼロで無い場合はパツパツが発生する、というデメリットがありました。なお、Aftertouchのデスティネーションを「GAIN」にするのは効果がありませんでした。

グライドの設定

 グライドセンサーの出力CC(CC5)をMacro3にアサインし、Macro3をPORTAMENTに最大値を決めつつアサインします。最小値・最大値を音色ごとに設定することができますので、特に最小値は、音の切れ目をはっきりさせたい音色の場合はゼロ、なめらかにしたい場合は少し上げる、というのを音色ごとに設定できます。

その他の音色コントロールや設定

例として
・VCOの波形をいろいろ変えてみる
・Macro1ノブでOSC1やOSC2のパルス幅をコントロール
・SYNCをONにしつつOSC2の音程(Frequency)を変えてハードシンク音色
・X-MODをうまくつかって変調
・内蔵のコーラス・ディレイエフェクトも活用

UNISONでVOICES値を増やす

個人的な感想としては、OB-Xは、1VCOでモノ発音のときの音色は悪くはないけど特徴も無いかなと思いました。1VCOでモノ発音の音色に限れば同じくGForceから出ているOberheim SEM (https://www.gforcesoftware.com/products/sem/)のほうが扱いやすいです。OB-Xならではの音であれば、モノ発音であっても「UNISONをONにして、VOICESを増やし、更にVINTAGEノブとDETUNEノブを適度に増やして、太いDetune音色にする」とよいのかなぁと思いました。

おまけ:MWiCのハーモニーモードの活用

NuRADやMWiCはコントローラー側でMIDIハーモナイザーを搭載していますのでOB-XをPOLY発音モードにすればどちらのコントローラーでも和音演奏ができます。
 NuRADはハーモナイザーの機能は充実していますが、主音とハーモニー音の音量は一緒なので、主音が目立たくなるのと、OB-XがPOLYモードの場合は単音演奏でもレガートにならず音の切れ目が管楽器的には不自然にパツパツしてしまう残念な点があります。
 MWiCはハーモナイザーの機能はシンプルでできることは限られていますが、MIDIハーモニーのON/OFFと同時に任意のCCのON/OFF送信ができるので、これをうまく活用すると、単音演奏のときはOB-XをLEGATOモードにし、和音演奏のときはOB-XをPOLYモードにする、ということができるので、より管楽器的に自然な演奏にすることができます。ただしMWiCとOB-Xの場合は、その送信される任意のCCの値がON=127, OFF=0でなく、ON=0、OFF=80にする必要があったのでホストDAWに使用したMainstageの機能でそのように変換しています。

試し吹き

OB-Xデモ版とコントローラーMWiCでの試し吹き動画をX(Twitter)でつぶやきましたのでリンク。途中前述のMWiCのハーモニーの設定を使ってますが、ハーモニー部分以外はNuRADやEWI5000やEWIUSBでも同じように演奏可能です。

最後に

最初に書いた通り私としては「自分が既に持ってるソフトで間に合いそう」なので導入には至りませんでしたが、ウィンドシンセ用ソフトとして充分使える良いソフトと思いました。OB-Xエミュレーションソフトには有料ではArturiaの OP-Xaがありますが(持ってる)、ウィンドシンセ的にはGForce OB-Xのほうが使いやすいと思いました。また無料(ドネーション)ソフトとしてOB-Xdがあり(https://www.discodsp.com/obxd/)これも良いソフトですが、凝った音作りをしようとするとmatrix的なことができなかったりCCアサインの制限があったりとやりたくてもできないことがありました。ウィンドシンセ的にOB-Xdの音が気に入っていて音作りもできるようになったけど更にいろんな音が作りたい、操作しやすいOB-X系が欲しい、という場合はGForce OB-Xはとてもおすすめできるソフトと思いました!


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