見出し画像

[WS音源探訪メモ] ソフトウェアSEMシンセ5種+1のちょっとした比較

Oberheim SEMをシミュレートレートしたソフト音源5種+1をウィンドシンセ用設定でちょっとだけ比較してみた記録です。SAW音色と、オシレータの音程・デチューン程度を比べてみました。

使ったソフト

1.Cherry Audio Synthesizer Expander Module (1.0.2)
https://cherryaudio.com/products/synthesizer-expander-module

2.GForce Oberheim SEM (1.6.1)
https://www.gforcesoftware.com/products/sem/

3.Cherry Audio Eight-Voice (1.4.0, oversampling quality = 1)
https://cherryaudio.com/products/eight-voice/

4.Arturia SEM V2 (2.12)
https://www.arturia.com/products/software-instruments/sem-v/overview

5.Plugin Alliance Brainworrx bx_oberhausen (1.3)
https://www.plugin-alliance.com/en/products/bx_oberhausen.html

6.discoDSP OB-Xd 2.5.1
https://www.discodsp.com/obxd/

テスト環境
Apple MacBook Air (M1 2020), OS12.6.1
Abelton Lve 11 Suite (11.3.13), 48000Hz, 128 Samples
Wind MIDI Controller: Berglund Instruments NuRAD


結果(動画)

https://www.youtube.com/watch?v=mD9eXxW4Fls

動画の解説

テスト1(動画0:00〜 SAW wave sound)

VCO1(OSC1)だけ、SAW wave、Resonanceはゼロ。フィルターcutoffと Volumeをゼロから最大までリニアカーブで息でコントロールする、という設定で比べました。最大音量はDAW(Live)の方のミキサーで出来るだけあわせてます。最初はLive付属のRoomリバーブあり、2回めはリバーブなし。 微妙に差はあるものの、最初の4つのソフトは好みの問題でどれも問題なくウインドシンセで使えます。bx_oberhausenはパツパツがどうしても消せないのと、ブレスコントロールの設定がしにくいので、ウインドシンセ向きでは無いと思います。OB-XdはそもそもSEMのエミュレータではないのでオマケの実験ですが 他のソフトと逆転したSAW波形ですね(SEMがNegative Saw, OB-XdがPositive Saw)


テスト2(動画0:42〜 VCO1 frequency)

VCO1(OSC1)でSAW WAVEでAの音だけ出しています。各ソフトのOSCのFreqは0に揃え、DetuneやFine tuneもゼロ設定、つまり画面に表示される設定値からはA=440Hzの音が出るはず、という設定にしてAの音を吹いてます(画面下のTunerに周波数が表示されてます)が、Cherry AudioのSEMとGForceのSEMは、440Hzから多少ズレてます。その他はほぼ440Hzですね。ズレてるから悪いというわけではなくて、アナログシンセのエミュレーションとして意図的にズラしている設計と推測します。

テスト3(動画0:42〜 VCO1&2 detune)

先程のVCO1(SAW)だけの状態にVCO2(SAW)をミックスしていき、その後VCO2だけにしています。設定値としてはVCO2のFreqはゼロ、Detuneのパラメータもゼロにしているので、VCO1とVCO2を同時に鳴らしててもデチューンはかからずぴったり同じ音程が出るはずですが、全てのソフトでVCO1と2でわずかに音程がずれる=デチューンがかかっています。アナログシンセのエミュレーションとしては当然理解できる挙動ですが、デチューンの程度はソフトによって大きく違いますね。 Cherry AudioのS.E.Mは最も大きいです。GForceのSEMも大きめ。eight-voiceは同じCherry Audioですが、S.E.Mよりズレは少ないです。推定ですが、ポリ発音を前提としたソフト初期設定でデチューンが多いと音作りがしにくくなるので、あえてデチューンを少なくしているのではないかと思います。同じ理由なのかポリ発音ができるArturiaのSEMvもズレ少なめ。bx_oberhausenとOB-Xdはデチューンはゼロではないですが極めて少なくチューナーの表示値上の差は無いくらいの差ですね。 OB-XdはVCO1と2でデチューンというよりもphaseが違うかも。なお動画にはありませんが、GForceとArturiaは音域によっても微妙にデチューン量が違っており、そこまでこだわって実際のハードウェアSEMをエミュレートしていることが伺えます。 あと、GForceはVCO2のほうはVCO1よりズレが少なくA=440Hzに近いので、正確な音程を求める運用の場合はVCO2をメインに使ったほうが良いかもしれないと思いました。

結論

・bx_oberhausen以外はウィンドシンセ用に使える
・OSCのFreqをゼロにしてもDetuneがかかること、また必ずしもA=440Hzが出るわけではないことをを踏まえた上で音色づくりをする必要がある
・他のシンセと同時に音を重ねて音作りする場合も注意する必要がある。場合によっては音程のズレが少ないeight-voiceやSEMvが適切な場面もありそう。
・なお、A=442Hzに合わせたい場合はどのソフトもそれぞれのTuningやTuneの設定を使って設定できます。

蛇足

で、君はこんなにSEMソフト持ってて結局どれが一番良いと思ってるんだね、という話ですが、現在のところGForceのSEMを一番良く使います。シンプル操作でノイズレスで欲しい音が出ます。
Cherry AudioのS.E.Mもとても良いので、GForce持ってなかったらこれで満足してたかもしれません。現在のところ無料なので「初めてのSEM」としてはこれがイチオシですね。
ポリ発音が欲しいときはCherry Audioのeight-voiceを使います。voice毎に違う音色にしたりというギミックがやりやすいです(設定の手数は多いけど操作はしやすい)

Arturiaは音も機能も問題ないのですがGForceより今ひとつ操作しにくい感覚があるのとeight-voiceよりギミックが仕掛けにくいのであまり手が伸びないですもったいないな・・・
bx_oberhausenはウィンドシンセ的にはパツパツが消せなかったりして使えないと判断しております。もったいなかったな・・
OB-Xdは無料で使えるOB-Xと考えれば良いソフトですが”SEM”としてはCherry Audioのほうが良いと思います。

ハードウェアのSEMは、よしめめさんから復刻版のSEM Proをお借りして試したことはございまして、

もちろんハードの「通る音が出る」点はなにものにも変えられないのですが、ソフトウェア音源の運用の楽さもまた、変えられないメリットですのでできればソフトウェアでいろいろ追求していきたい今日この頃です。

とはいえBehringerのクローンハードも気にかかるわけですがいつ出るのかな・・・


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?