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洋上風力の入札ルールの見直し会議の速報

2022年6月23日、洋上風力の入札ルール(公募占用指針)の見直し会議がありました。ここでは、以下の4つの論点について、各委員の気になる意見をまとめます。また、今後の展開についても予想します。

  1. 迅速性評価(早期運開インセンティブ)

  2. 落札制限(総取り規制)

  3. 定性評価の最高点を120点に引き伸ばし(価格・定性1:1評価)

  4. 選考委員の事後公表

迅速性評価(早期運開インセンティブ)

10名の委員のうち、桑原委員、原田委員、大串委員の3名が反対、清宮委員、飯田委員、石原委員が賛成のコメントをしていました。加藤委員、中原委員は、評価の方法論について発言していたので、賛成なのでしょう。

反対理由としては、「迅速性のためには、できるだけ先行して動いた方が有利になるため、セントラル方式に矛盾する」という桑原委員の発言が説得力があります。

賛成理由としては、「先行した事業者が評価されるべき」という清宮委員、石原委員の発言が特徴的です。Class NKのウィンドファーム認証や経産省電安課の専門家会議の委員でもあるお二方は、認証の遅れで建設・運転開始が遅れる案件をいくつも見てきたから、そうおっしゃるのでしょう。

そうはいっても、桑原委員の反対理由は、いかなる賛成意見をもってしても、反論の余地がない完ぺきなものに思えます。

落札制限(総取り規制)

桑原委員、原田委員、大串委員、飯田委員が反対で、石原委員が賛成でした。方法論のコメントを含めると、加藤委員も賛成とみなせます。

反対理由としては、桑原委員から「適正な競争をゆがめる」、原田委員と大串委員から「どの海域がどのラウンドに出てくるのかわからないと前もって対応できない」というコメントがありました。

賛成理由としては、石原委員から「メーカーの多様性の確保」という意外すぎる発言がありました。

私は、ここでも反対理由のほうがロジカルだと思います。

定性評価の最高点を120点に引き伸ばし(価格・定性1:1評価)

桑原委員が「国民負担軽減のため価格重視であるべきで、定性評価の最高点の引き伸ばしは価格点の意味を薄める」として反対でした。

清宮委員と石原委員は賛成していました。お二方とも基本的には「いくら価格が安くても予定通りに進捗できなければ意味がないから、価格点と定性評価点はイーブンにすべき」という趣旨だったと思います。お二方は、Class NKのウィンドファーム認証や経産省電安課の専門家会議の委員でもあるのですから、「実力のない事業者がスケジュール通りに建設・運転開始できない事例をたくさん見てきたから」と本音をズバッとおっしゃってほしいところでした。

事業者の実力差がいかに事業の進捗に大きく影響するかを、委員の皆さんが知らずに、賛成・反対の議論をするのは無意味です。

選考委員の事後公表

加藤委員は選考委員の公表の意義を問うていたので、反対ともとれますが、特に明確な反対は出なかったように思います。賛成理由としては、「公共事業なのだから、事後に公表するのは当然」というものでした。

私は以前のnoteの記事で「選考委員の公表はしないだろう」と予想していました。理由は、「選考委員はどの事業者とも仕事をしていないことが条件なので、そうなると風力業界の素人になる可能性が高く、公表後に炎上する」と読んだからです。私の予想は見事に外れました。

なお、調達ポータルで、選考業務と思われる案件(0000000000000329954)が募集されています。これだけの予算額の業務を風力の素人が取ったということになったら、やはり炎上するでしょう。

今後の展開

迅速性評価(早期運開インセンティブ)と落札制限(総取り規制)は意見が割れたままなのに、来生委員長が「最後はエイやという割り切り!」とか、山内座長が「事務局に一任してほしい。続きはパブリックコメントで!」とか、無茶苦茶な幕引きを図っていました。

この感じでは、迅速性評価(早期運開インセンティブ)と落札制限(総取り規制)は押し切ることになるでしょう。この後、若干の手直しを加えて、公募占用指針案が公表されると想定すると、公募占用指針案の公表とパブリックコメントの募集が7月、パブリックコメントの回答と公募占用指針の公表が8~10月あたり、ラウンド2の公募開始は10~12月あたりでしょうか。

会議の最後に、国交省から、「公募占用指針に基地港湾の利用可能期間を明記し、期間の変更は原則不可」とのコメントがありました。つまり、次の公募占用指針で、ラウンド1の三菱商事グループがいつまで基地港湾を使うかがわかるということでしょう。ラウンド2に入札予定の事業者は、すでに建設工程を組んでいるでしょうから、それと照合するためにも、その情報だけでも早く出してほしいものです。

雑感

桑原委員の論証は、さすが弁護士という感じで、印象的でした。この手の国の審議会は、安い単価で会議時間分の謝礼しか出ません。それにもかかわらず、桑原委員は資料を事前に読み込んでコメントも用意して臨んでいるように感じました。役所の資料の量は多いので、事前に読み込む時間を考えたら、社会貢献ボランティアです。弁護士単価よりもはるかに低い謝礼で、そこまでして臨む姿勢に敬服しました。

それにも拘わらず、ハナから押し切る気の委員長、座長、事務局。「なんなんだ?この軽い扱いは!失礼にも程があるだろう?」とあきれるばかりです。

そして、事務局の経産省・国交省の官僚さんたちの虚しい努力を思うと気の毒でなりません。彼らだって、迅速性評価(早期運開インセンティブ)と落札制限(総取り規制)はおかしいとわかっているはずです。それにもかかわらず、萩生田大臣からのリクエストで押し切るしかなかったわけです。

国の役に立ちたいと官僚になった彼らが、「国益より自民党益のために働いている」現状は、なんだかやりきれない気持ちにさせられます。

読者の皆さんは、どうお感じでしょうか。コメント欄で教えてください。

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