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2018年3月の記事一覧

トワイライト

1  電車の到着を告げるベルが駅のホームに響いた。  英単語の暗記カードをぱらぱらとめくっていた僕は、その音に顔を上げ、電車の到着を待った。  数秒後、ホームに電車が停車し僕の前でドアが開くと、僕はその電車に乗り込んだ。窓から西日が差し込み、眩しい。夕方の電車は人が疎らで、どこか寂しい雰囲気がある。僕は車内に彼女の姿を認め、いつものように隣に座った。 「こんにちは」僕は言う。 「こんにちは」彼女が応える。 「今日は何の本を読んでいるんですか?」僕は彼女の広げている本に視線を