「ズレズレなるままに」出入禁止

 大谷翔平選手を巡り、日本テレビとフジテレビがドジャースから取材パスを凍結されたそうな。なんでも、ロスの新居を事細かに報じたからだとか…。

 昔を知っている人なら覚えているかもしれないけど、かつて「プロ野球選手名鑑」には選手の住所まで公然と掲載されておりました。今の若い人からすると考えられないと思うけど。
 ちなみに、記者にも「東京運動記者会」の名簿があって住所も電話番号も掲載されていたけど、さすがにテレビの女性アナは局付けになっていたような記憶です。

 さて脱線したけど、出入禁止。どこの部署の取材か知りませんが、日テレもフジテレビも現場は困るよね。とはいえ、あまり喋らないオオタニさんだから、配信映像と原稿でしのぐしかないんでしょう。

 出入禁止、色々と経験しました。一時期、「夕刊フジ」のデスクをやっていましたが、着任したときはすでに巨人から出入禁止。夕刊紙の性質上、ナナメから見たり、多少イジワルに書かないと存在意義を示せないから仕方ないところもあります。とはいえ球場には入れるけど、監督の会見なんかには入れないって感じです。
 ところが、あるとき出禁が解かれることになりました。実はかつて夕刊フジは、お隣にある大手町の読売新聞の輪転機で少し刷っていたことがあり、なんと渡辺恒雄主筆が愛読しているというではないですか! そこで、今は亡き大先輩の江尻記者がインタビューを申し込んだら快諾。デスクとしても1週間ぶっ通しで終面(いわゆる裏1面)で掲載したわけですが、取材の席で江尻記者が「うちは巨人から出入禁止なんですよ」と話したら、ナベツネさん「ナニ? そんなもんすぐ解除するよう言っておくよ!」。翌日には解除されました。色々と言われるナベツネさんですが、こんな面もあるんです。

 さて出入禁止といえば、警視庁捜査一課担当の頃はよくくらいました。間違いなら笑われて恥かくだけなんだけど、たとえば「◯◯に逮捕状」なんて書いて当たっていると、一課長から激怒の電話がブースの内線にかかってきます。
私が一課担当の仕切りですから、「ちょっと来い💢」と課長室に呼ばれます。「キサマの記事でホシが飛んだら(逃げたら)どう責任取るんだよ!」なんて怒鳴り上げられ、呼び付けておきながら「無期限で出入禁止だ。出て行け!」なんて言われます。
 ブースに戻ってキャンプに出禁を言い渡されたと報告すると、「ご苦労さん」とニヤリ。まぁ事件記者にとっては勲章みたいなもんですかね。

出禁もさまざまで、無期限でも長くて1ヶ月くらいだったかなぁ。短いとその日だけとか、1週間で解除とか。いわば当局は他社に対して“見せしめ的”にケジメをつける手法と言っていいかもしれません。規定はないけど、何となく暗黙のルールのようなものがあった気がします。

 今回の日テレとフジテレビ、ネタは限られるのに尺は長いから、なんでも食いつきたくなる気持ちは分からなくもない。ただ、やっぱり今どきのコンプラ? からしたら、やはりデスクや編成の幹部が注意すべきだったんじゃないかと思います。何でも許される時代じゃなくなったことくらい理解しているはず。何より、ロスの現場にいる記者は肩身が狭いのではないかと気になります。

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