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「システム手帳STYLE」のキャッチコピーに時代の移り変わりを見る

80年代。システム手帳が日本に輸入され、ビジネスマンに普及しました。ユーザーは、男性が多かった気がします。
2010年代後半。システム手帳はビジネスの道具としては第一線を退きました。しかし、趣味の道具としてじわじわとユーザーが増えていきます。市場を引っ張っているのは男性ではなく、女性です。
2016年から年に1回、10月ごろに発刊される「システム手帳STYLE」という雑誌があります。その表紙に、そんな時代の変遷を見てみましょう。

第1号「一冊の手帳に知を集積せよ!」

記念すべき第1号は2016年の発刊。キャッチコピーは「1冊の手帳に知を集積せよ!」
明らかに男性ユーザーを意識したコピーです。手帳の色は赤ですが、バイブルサイズのアシュフォードのプレスコットコーチマン。重量級で、体力のある男性向けの手帳といえるでしょう。
現在では同誌は、多数冊使いを推した編集内容ですが、このころは1冊への集中をうたっていたのも面白いですね。

第2号「手帳という快楽」

「快楽」というキーワード、実用性よりも趣味性にシフトしているようです。表紙は黒背景に黒の手帳で、やはりまだ男性向けです。

第3号「一冊あれば楽しみ無限大」

この号から、表紙の雰囲気もコピーも、女性を意識した雰囲気になりました。2号までとはガラッと変わりましたね。

第4号「大切なものをHAPPYに集めよう」


女性に人気のM5が表紙に。コピーも完全に女性向けです。
M5は90年代から「ミニ5穴」「名刺フォン」という名前で存在していましたが、2010年代後半になってこんなに盛り返してくるとは思いもしませんでした。
自分の好きなものを集めるバインダーとして、女性がシステム手帳を使うようになったのでしょう。

第5号「カスタマイズが楽しい趣味と実用の手帳」

表紙はM5だけで構成。コピーに「趣味」という言葉が入りました。
3号、4号と比べると、中性的な雰囲気でしょうか。

第6号「毎日が楽しくなる/趣味と実用の手帳スタイル」

5号に続いて「趣味と実用」という言葉が入っています。
実際のところ、1号のコピーのように「知を集積する」なら、システム手帳はPCやスマホにはかないません。
しかし、趣味としてなら、これほど愛着のもてる道具は他にありません。エイジングしたバインダーや、手書きしたリフィルや、好きなペンがひとつにまとまっているのですから。

第7号「日々を整え/人生を楽しくする/手帳選び」

表紙はアシュフォードの「キャバリエ」と、ノックスの「フラクト」。システム手帳黎明期から一貫してバインダーやリフィルを作り続けてきた2大ブランドの、最高級ラインに位置するバインダーです。
「人生」というキーワード、手帳ならではですね。スマホがいくら高性能になっても「人生」というキーワードは似合いません。どれだけ愛着を持っても、3年もたてばバッテリーが劣化します。30年同じシステム手帳を使い続けている人はいるでしょうが、iPhoneで同じことはできないでしょう。

ということで、雑誌のキャッチコピーから時代とシステム手帳ユーザーの変遷を追ってみました。
システム手帳は第1次世界大戦で軍人が必要に駆られて生み出した、という記事は以前に書きましたが、現代日本では女性が趣味と実用の道具として使い始めた、というのは面白いですね。

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