去年の東京蚤の市の話

去年、初めて行った東京蚤の市の帰り際、ひとりの女の子に話しかけられた。

「あの……」

「はい?」

「……いきなりで申し訳ないんですけど」

「はい」

「お姉さんが持ってるそのカスミソウのドライフラワー、どこで売ってたんですか?」

そう言って指を指したのは、私の方に掛けられたトートバッグから覗くカスミソウのドライフラワーだった。大きなねこじゃらしみたいな謎の植物と、色水で染色したオレンジ色の水色のカスミソウの花束。

その色の組み合わせが可愛かったのと、ちょうど終わりの時間が迫っていてセール価格になっていたのに惹かれてちょうど20分前ぐらいに買っていた。

ただ。

「あ~……」

どこで買ったか、に私は答えられなかった。正確には、覚えていなかったのだ。


東京蚤の市は、広大な公園の芝生スペースに100を超えるブースが立ち並ぶ。

https://tokyonominoichi.com/2023_spring/outline/


https://tokyonominoichi.com/2023_spring/map/

至るところにいろんなブースがあって、正直自分がどこを歩いているのかもわからないし、東京蚤の市では「いろんなお店を見てから後で買おう~!」は困難を極める。

もう一度行きたいブースは、ちゃんとブース名を確認してマップと照らし合わせておかないと、もう一度はなかなか見つけられない。

私は、このカスミソウをたまたま見つけたブースで、「お、いいな」と思って買っただけだったから、どこで買ったか、なんという名前のお店だったかはまったく覚えていなかった。

「あの、ほんとに申し訳ないんですけど、全然覚えてなくて……確か、隣で古い絵本をたくさん売ってるお店があったような気がするんですけど……でも、古本売ってるお店なんてたくさんありますよね。……ごめんなさい、覚えてなくて」

覚えてないので、正直に謝った。

「あ、いえいえ全然! そうですよね、この中だと見つけるのほんと大変ですもんね(笑)いいな~! お姉さん、いい出会いがあったんですね、羨ましいです! ありがとうございます!」

その子はそう言って、「頑張って見つけてみます~!」と、お辞儀して人込みに紛れてしまった。


いい出会い。

そうだな、確かに。こんだけたくさんあるブースの中から、たまたまセール品で、たまたま見つけた可愛い色合い。


そんな出会いから1年が経つ。私は明日、1年ぶりに東京蚤の市に行ってくる。

”終わりよければすべてよし” になれましたか?もし、そうだったら嬉しいなあ。あなたの1日を彩れたサポートは、私の1日を鮮やかにできるよう、大好きな本に使わせていただければと思います。