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ヘブライ語22文字解説

私は30代前半にミルトス社の「はじめてのヘブライ語」を通してヘブライ語の勉強を始めました。ちょうどそのころ、初めてイスラエルにも旅行で訪れました。

その後、イスラエルのキブツで勉強してみたいという思いもあったのですが、夢かなわず、いつしかヘブライ語の学習はやめてしまいました。

最近、JTJ神学校の臼井勲先生のイスラエル史の講義を聴く機会がありましたが、現代にヘブライ語を復活させたイェフダーの話を聴いてから、自分の中に何か燃えるものがあり、18年前に買ったテキストを手に取っていました。

「はじめてのヘブライ語」の音声カセットは、引っ越しのときに処分していたのですが、アマゾンで検索したところ、音声CDが中古で売り出されていました。以前にも音声CDを探したことがあったのですが、そのときはどこ探しても見つからなかったのです。

というわけで、音声CDも手に入り、ゆっくりと学習を再開することにしたのです。すべてのことには時があることを思わされます。

学習成果というほどでももありませんが、学んだことをツィッターで呟いてみたら、意外と反響があってびっくりしました。他にもヘブライ語の学習者が何名かいたのです。

今年の2月23日から4月24日まで、なんと2か月ほどかけてやっと22文字の解説を終えました。ある意味、世界一ゆっくりとした解説かもしれません(笑)。

というわけで、ツィッターで2か月かけて書いた解説をここにまとめたいと思います。

ヘブライ文字について

ヘブライ語の文字は、22文字です。すべて子音文字です

7世紀ごろには、発音を表すための母音記号、ニクダーができたそうです。現代ヘブライ語の発音は、9世紀のスペイン系ユダヤ人の発音に準じているとのことです。

ヘブライ文字を総称して「アレフベート」といいます。これは、ヘブライ文字の最初の2文字、アレフאとベートבに由来します。

ギリシア文字は、英語と同じように「アルファベット」といいますが、これも最初の2文字 「アルファ」と「ベータ」に由来します。

1.アレフ א

発音しない子音文字。

つまり、アイウエオのいずれの発音にもなりうる子音文字です。

日本語や英語にはない類の文字ですが、韓国語には、イウン「ㅇ」という似たような働きの文字があります。母音文字をつけて、아 (ア)、야 (ヤ)、어 (オ)、여 (ヨ)のように発音します。

2.ヴェート ב / ベート בּ

発音は、英語のbと同じです。

アレフ א とベート א を並べると、

אב(アバ)


という単語ができます。これは、「父」という意味です。

ゴスペル曲の歌詞などでが、"Abba father"が出てくるときがありますね。

ヘブライ語は、アラビア語やペルシア語と同じように右から左へと読みます。

余談になりますが、かつて英語マニュアルを多言語に翻訳する仕事をしていました。アラビア語やペルシア語の場合、文字を読む方向が反転するので、レイアウトも反転させなければなりませんでした。DTPソフトも専用版を使う必要があったので、結局外注していました。納品された原稿のチェックが大変でしたね。ヘブライ語のマニュアルの制作の依頼はありませんでした。おそらく、当時扱っていた製品のイスラエル向けのマニュアルは英語だったのだと思います。

このヴェート בの真ん中に点(ダゲッシュ)を入れると、b音の בּ になります。

3.ギメル ג

発音は英語のgと同じです。

ちょっとキリンのような形をしたかわいい文字ですね。

4.ダレット ד

発音は英語のdと同じです。

ダレット דとギメル גを並べると、

דג (ダグ)

という単語ができます。これは、「魚」という意味です。

ちなみに、古代ギリシア文字の3番目の文字は、g音のガンマΓ で、4番目は、d音のデルタΔ です。発音はヘブライ文字と似ていますね。

余談になりますが、僕の出身高校では、英語系と数学系のクラスが成績の良い順にアルファ、ベータ、ガンマに分けられていて、僕は数学系はガンマにいました。なので、ガンマというと、ずっとどん底というイメージをもっていたのですが、一応3番目の文字なんですね。卒業後31年経ってやっと気づきました(笑)。

5.へー ה

発音は英語のhと同じです。

何となくカタカナの「ハ」に似てなくもないですね。

へー הと、英語のrに近い音のレーシュ רを組み合わせると、

הר (ハル)

という単語ができます。これは、「山」を意味します。

例えば「富士山」は、ヘブライ語で、הר פוג'י (ハルフジ)と表記します。

6.ヴァヴ ו

発音は、英語のv音と同じです。

2つのダレット ד (d音)の間にヴァヴ וを挟むと、

דוד

という単語ができます。これは、ダビート(david)と発音します。

ヴァヴ ו は、母音のuやoにもなります。

אור (オール)

は、「光」を意味する単語ですが、真ん中のヴァヴ ו の発音はo音です。聖書の中で非常に重要な単語です。

ちなみに、v音は、日本語、韓国語、中国語のいずれの言語にもない音ですね。他の音で代用されます。

Davidは、日本語ではご存知の通り、ダビデです。vがb音で代用されています。

韓国語では、다윗 (ダウィッ)。vがwi音で代用されています。

中国語では、大卫 (dà wèi)。vがwe音で代用されています。

それぞれの言語で工夫がこらされていますね。

7.ザイン  ז

英語のz音と同じです。

z音のザイン ז、h音のへー ה、v音のヴェート בを並べると、

 זהב (ザハーヴ)

という単語ができます。これは、「金」を意味します。

出エジプト記に記載された奉納物の金も זהב と表記されます。A.J.ポロックの「幕屋」によると、幕屋のזהבは、イエス・キリストの神性と神の義を表すとのことです。

8.ヘット ח

発音は、喉にひっかかったものを吐き出すようなh音です。日本語、韓国語、中国語、英語にもない音です。

ヘット חとg音のギメル גを並べると、

חג (ハグ)

という単語ができます。これは、祭りを意味します。

ヘブライ語と英語のバイリンガルは、חגでハグされたよなんてシャレをいうのかもしれません(笑)。

9.テット ט

英語のt音と同じです。

テット ט、ヴァヴ  ו、ヴェート בを並べると、

 טוב (トーヴ)

という単語ができます。「良い」という意味です。

ヘブライ語の「おはよう」は、בוקר טוב (ボケルトーヴ)。

ボケル בוקרが朝 (morning)で、トーブが良い(good)なので、英語のおはようと同じ表現になるようです。

10.ユッド י

英語のy音と同じです。

y音のユッドי、o音のヴァヴו、m音のםのメムソフィートの並びで 

יום (ヨム)

という単語ができます。「一日」を意味する単語になります。

創世記1:5には、「こうして夕があり、朝があった。第一日。」と書いてあります。ヘブライ語聖書を見ると、יוםが見受けらます。

11.ハフ כ/カフ כּ

カタカナの「コ」に形が似ていますね。

喉の奥から絞り出すようなkとhの中間音です。

「食物」を意味する単語は、

אכל (オヘル)

です。

このハフכの真ん中に点(ダゲッシュ)を入れると、k音のカフכּになります。

日本語の「はい」に対応する語は、

כּך (ケン)

です。

余談ですが、2003年に初めてイスラエルを一人で訪れたとき、バスの中で隣に座ったお年寄りにヘブライ語で話しかけられました。何を言っているのかわからなかったのですが、話を遮るのも悪いと思い、ひたすら、笑顔でכּך(ケン)、כּך(ケン)と答えて応じました(笑)。

ヘブライ語の11番目の文字ハフכが語末に来ると、語形が変化して

カフソフィート ך

になります。

r音のレーシュרと形が似ています。発音はハフ כ と同じです。

「王」を意味する単語は、

מלך (メレフ)

と表記します。語末にカフソフィート ך が置かれます。

「ダビデ王」は、

דוד המלך

と表記します。מלךの前に定冠詞へーהが付きます。

12.ラメッド ל

 発音は、英語のl音です。

平仮名の「ら」に似てなくもないですね。

上記でカフソフィート ךを紹介するときに解説しましたが、「王」を意味するヘブライ語は、

מלך (メレフ)

です。真ん中にラメッド לが入ります。

ちなみに、ハングルのl音は、リウルㄹです。これは似てないですね。

13.メム מ

発音は、英語のm音と同じです。

メムמは、ハングルのミウムㅁと形も発音もかなり似ています。

語末に来ると、変化してメムソフィートםになります。

「水」を意味する単語は、

מים (マイム)

これは日本人にも馴染みのある単語ですね。

14.ヌン נ

英語のn音と同じです。

「川」を意味する単語は、

נהר (ナハール)

「ヨルダン川」は、

נהר הירדן (ナハール ハ ヨルダン)

と表記します。

ヌン נ が語末に付くと、

ヌンソフィート ן

に変化します。

「息子」を意味するヘブライ語は、

בּן (ben)

です。ヤコブの13番目の息子ベンヤミン(Benjamin)は、

בנימין

と表記しますが、「右側の息子」という意味になります。

15.サメフ ס

発音は、英語のs音と同じです。

形が、m音のメムソフィート םに似ています。

「馬」を意味する単語は、

סוס (スース)

出エジプト記14:20には、パロの馬も戦車も騎兵も海に入る場面がありますが、この סוס が出てきます。

16.アイン ע

発音は、喉の奥から出すヘブライ語独特の音で、日本人には発音が困難とのことです。

でも、ちょっと喉を詰まらせて「ア」と発音すれば何とかいけそうです。

「目」を意味する単語は、

עיך (アイン)

これは英語のeyeとちょっと似ていますね。

ちなみに1番目の文字アレフ א とアイン ע の発音の違いについて熱く語っている動画を見つけました。この方の結論は、発音の違いを気にしすぎるなということでした。完全にマニア向けの動画です(笑)。

https://www.youtube.com/watch?app=desktop&v=2-9MMghUsLo

17.フェー פ/ペー פּ

英語のf音と同じです。

フェー פ にダゲッシュ(中点)が付くと、p音のペー פּになります。

「本」を意味する単語は、

ספר (セフェル)

「牛」を意味する単語は、

פּרה (パラー)

フェー פ が語末に来ると、変化してペーソフィート ף になります。

「鼻」を意味する単語は、

אף (アフ)

詩篇18篇8節には、「煙は鼻から立ちのぼり」という表現が出てきますが、אףの変化形が用いられています。ここでは、神の怒りが表現されています。

なお、ペー פּ に関連して重要な単語は、

פּסח (ペサハ)

ですね。「過ぎ越す」、またはユダヤ三大祭のうちの一つの「過越の祭り」という意味です。レオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」は、実は、このפּסח期間中の一場面なのです。

イエス・キリストのご受難も、פּסח と深い関係があります。

18.ツァディ צ

発音は、日本語のツ(ts)と同じです。

カモシカを意味する単語は、

צבי (ツヴィー)

ツァディע も何となくカモシカに顔に似たような可愛い文字ですね。

ツァディ צ が語末に来ると、

ツァディソフィート ץ

に変化します。発音は変化しません。

土地を意味する単語は、

ארץ (エレツ)

です。定冠詞 ה が付いた הארצ (ハエレツ)(the land)は、故国イスラエルを指す言葉でもあります。イスラエルには、הארצ という新聞があります。

19.クフ ק

発音は、英語のk音です。

カタカナの「カ」とハングルのキオク「ㄱ」(k音)に何となく似てなくもないです。

「声」や「音」を意味する単語は、

 קול (コル)

創世記3:8の「園を歩き回られる神である主の声」の「声」の原語は、קולです。発音が英語のcallに似ているところも面白いですね。

20.レーシュ ר

舌を巻いて振るわせる音で、江戸っ子が「てやんでぃ べらんぼうめ!」というときの「ら」の音に近いとのことです。(はじめてのヘブライ語より)

「霊」や「風」を意味する単語は、

רוח (ルーアッハ)

古典ギリシア語で対応する語は、πνευμα (プネウマ)です。

21.シン ש/スィン שׂ

形に特徴のある文字ですね。

発音は、英語のsh音です。

最も有名なヘブライ語「シャローム」は、このשから始まり、

שלום

と表記します。

金継ぎされた器の継ぎ目も何となく ש に見えてくる時があります。

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シン ש の左上に点がつくと、

スィン שׂ

になります。

発音は、サメフ ס と同じs音。

「畑」を意味する単語は、

שּׂדה (サデー)

です。

22.タヴ ת

最後の文字です!

形は、h音のヘット ח に似ています。

発音はt音です。

「家」を意味する単語は、

בּית (バイト)

「感謝」を意味する単語は、

תודה (トダー)

イスラエルを訪れたら、是非使ってみたい言葉ですね。

べブライ語の22文字は以上になります。

ヘブライ文字を歌で覚える動画があります。ぜひご視聴ください。

https://www.youtube.com/watch?app=desktop&v=0ZBqaaEJo0o

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