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成功者の意見だけ聞いていませんか? ~生存者バイアスに騙されるな~

何らかの成功を遂げた人の意見を参考にしたり判断の基準にしてしまうと、誤った判断を下してしまうかもしれません。

1.生存者バイアスとは?

そもそも生存者バイアスとは、以下のような意味でつかわれています。

何らかの成功を遂げた一部の人物や企業、物事のみを基準とすることで誤った判断をしてしまうこと。
事象や手段を評価する際に、成功せず失敗に至った数多くの事象を考慮することなく、一部の成功事例のみをもって判断してしまい、誤った結論を導き出してしまうことである。

https://makitani.net/shimauma/survivorship-bias

バイアスはここでは「思考や判断に偏りが生じている」ことを指します。生存者バイアスは言い換えれば「生存者」(成功した人や何かを成し遂げた人、事柄)だけを参考にしたため、思考や判断に偏りが生じ、誤った判断を下してしまうということになります。つまりは「生存者」ではない、すなわち失敗した人や何かを成し遂げられなかった人、事柄を考慮していないのです。
その大きな要因は、「生存者」の意見の方が大きいからです。「死人に口なし」ということわざがありますが、まさに「生存者」ではない人の意見というのはとても小さいか、そもそも意見としてあがってこないということが多いのです。その分、何でも発信できる「生存者」の意見が大きく聞こえてしまうのです。

2.生存者バイアスの例

・飛行機の損傷部分

おそらく生存者バイアスの中で最も有名なものはこの飛行機の損傷部分に関するものでしょう。
下のイメージ図を見てください。これは戦時下、任務から帰還した飛行機の損傷部分を表しています。もしあなたが飛行機を分析するチームの人間だった場合、敵からの攻撃を防ぐためにどの部分の装甲を厚くして強化してすればよいと考えますか?

出典:https://makitani.net/shimauma/survivorship-bias

おそらく赤い丸のところを強化すればいいと考えた人は生存者バイアスがかかっていると言えるでしょう。
これは任務から帰還した、つまり「生還した」飛行機についていた損傷の図です。つまり「生還」できなかった、つまり任務中に撃墜されてしまった飛行機もいたわけです。ではそんな「生還」できなかった飛行機はどこに損傷を受けたのでしょうか。それを考えると、赤い丸が一つもないあたりに損傷を受けたため「生還」できなかったのではということが考えられるはずです。

つまり、実際には赤丸部分以外こそ強化すべき部分ではないかと考えるべき場面であっても、一見しただけでは赤丸部分を強化すればいいと判断してしまうことこそがこの生存者バイアスなのです。

・事故の生存者

とある事故の生存者の話を聞いた時に、「その事故は大した事故ではなかったんだな」と判断するというのもまさに生存者バイアスです。100人が乗った飛行機が墜落し99人が亡くなってしまうような悲惨な事故でも、生き残った一人の話を聞いた時にはその事故の本当の悲惨ほどの印象を受けないかもしれません。
特に津波などの自然災害を後世に伝えるときにもこの生存者バイアスがかかってしまうかもしれません。生き残った方の証言を聞いても、生存者バイアスがかかってしまえばそこまで悲惨なことであったとは認識せず、教訓に生かされないということもあり得てしまうかもしれません。

3.ビジネスマンが陥りがちな生存者バイアス

成功を夢見るビジネスマンの中には、芸能人やプロのスポーツ選手、さらには数百億円を手にした企業のCEOなど、厳しい環境に打ち克って成功を手に入れた人の話を聞いて「私も成功した人になりたいからこの方法をマネしてみよう!」、「○○さんのような努力すれば自分も成功する!」といってただマネをしているという人もいますがそれこそ生存者バイアスです。
そんな成功者の裏には、才能を持っているが本人の力ではどうすることもできない要因や他の出来事のために成功できなかった多くの人々がいるのです。おそらく彼らも努力をしていましたし、成功した人と同じルーティンをやっていたかもしれません。成功するかしないかの結果が分かれてしまったのはただの偶然なのかもしれないのです。

ここで伝えたいことはたとえマネしたところで、成功するとは限らないという気持ちを持とうということです。「成功した人がやっていたことをマネすれば自分も成功するはず!」という気持ちではなく、「その方法をマネしたところで成功するか失敗するかわからないけどとにかくやってみよう!」というマインドを持ちましょう。

そして、上司や先輩が言う「昔はこうやったもんだ」、「俺らもこうしていたからお前らもやれ」という考えも生存者バイアスの典型です。少なくともその上司や先輩はその昔からの方法が型にはまっただけであり、その方法を受け入れられず辞めた上司、先輩もいたはずです。つまりその昔からの方法が良いのではなく、その方法に従えた人だけが今も組織に残っている(=生存している)だけに過ぎないのかもしれません。

4.最後に

今回は生存者バイアスについて取り上げました。
ぜひ普段の生活の中で「生存者」の意見だけを聞いて判断していることが無いか考えてみてください。せめて、その裏には数多くの「生存できなかった者」がいるかもしれないということは忘れずにいてほしいと思います。

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