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メンタルヘルスの不調は所得に悪影響を及ぼす?

メンタルヘルスの不調が所得に与える影響を分析した論文によって、メンタルヘルスの不調が所得に悪影響を及ぼす(所得が低くなる)ことが明らかになりました。

1.どんな研究に関する論文なの?

今回取り上げる論文は
「メンタルヘルス不全が所得に及ぼす影響に関する実証分析」
というタイトルの論文です。

どんなことをしたのかをとてもざっくり解説すると、個人単位のメンタルヘルスの状態と所得が分かるデータを活用して、どんな関係があるか統計的に明らかにしましたというところでしょうか笑。

その論文の中で、メンタルヘルスの状態と所得の関係についてはこのように結論付けられています。

メンタルヘルス不全や精神疾患の者は健康な者と比較して,逆の因果性を排除してもなお有意に所得が低くなることがわかった。また日本における所得低下割合は,諸外国の先行研究において報告された数値を大きく上回る推計値となった。

https://www.hws-kyokai.or.jp/images/ronbun/all/201705-01.pdf

わかりやすく言い換えれば、メンタルヘルスの状態が悪い人は健康的な人に比べて所得が低いことが統計的にわかった、しかも海外での研究結果と見比べると諸外国より日本はメンタルヘルスの状態が悪くなった際の所得低下割合が大きいということです。

2.所得とメンタルヘルスの関係性

この研究で明らかになったことはメンタルヘルスの不調・不全を抱える人は所得が健康的な人よりも下がりやすいという関係性ですよね。
じゃあ所得が低い人はメンタルヘルスが不調に陥りやすいのかと言われるとそういうわけではありません。先ほどの結論の中に「逆の因果性を排除しても」という言葉がありましたが、それを言い換えると「所得が低い人はメンタルヘルスが不調に陥りやすい可能性を排除してもメンタルヘルスが不調の人は所得が下がりやすいことが明らかである」ということになります。
とってもいまいちピンとは来ないですよね笑…(-∀-;)

とりあえず、メンタルヘルスの不調・不全を抱える人は所得が健康的な人よりも下がりやすいけど、所得が低い人はメンタルヘルスが不調に陥りやすいというわけではないということだけ覚えておけばいいと思います。
(それでもややこしい…?)

3.日本が諸外国に比べて所得低下の割合が高かった理由

この研究において他の海外の研究と比べた時に、日本は諸外国に比べてメンタルヘルスの不調・不全を抱えた人の所得低下割合が大きいということが分かりました。

この論文内ではその理由について

国や民族による雇用環境または就業意識の差異が考えられる。有給消化率が低く、仕事を休むことへの罪悪感を感じる者の割合が高いわが国の現状が、所得低下の規模を大きくしている可能性がある

https://www.hws-kyokai.or.jp/images/ronbun/all/201705-01.pdf

ことを理由に挙げています。

たしかに、日本人の真面目な性格を考えれば、メンタルヘルスに不調をきたすことは悪いこと、それを理由に仕事を休むのもよくないという価値観の人が多いことが根底にあるというのはあり得そうですね。

4.最後に

この結果を踏まえると、諸外国よりも所得の低下割合が高いという状態はメンタルヘルスへの理解がまだまだ日本では進んでいないという証左でもあるように思います。
メンタルヘルスの不調を抱えた人と健康な人の所得が一切変わらない状態というのは実現が難しいかもしれませんが。所得の低下割合を小さく抑えることは可能なはずです。メンタルヘルスへの理解やケア、そして価値観の変化が起こればその割合を小さく抑えられるようになるでしょう。
日本でもメンタルヘルスへの理解が進み、不調を抱える人の数が減り、不調を抱えた際のケアや理解がより進んだ社会が来てほしいと切に願います。

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