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第一夜、始まりの夢

その人は寒い国の針葉樹みたいに
震えながら泣いている
両手を固く閉ざして震わせて
歌うみたいに叫ぶみたいに
大きいからだがまるで小さくて
怖くてあったかくて切ない
記憶の奥に葬られたみたいな
古い木造りの教会
朽ちかけた床板の乾いた音
西に傾いた陽が
私達の足もとに堕ちる

もたれかかる
泣きじゃくる身体の重み
秘めやかな胸の軋み
(私の声が聴こえるかな)
でも私は
その人の背中に手をまわすことも
涙を拭ってやることすらできない
そちら側に行くことはできない
行けない
私は行けない

今はただ夜を待つ

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