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アイラブユー

2023年12月29日(金) 天気:晴れ

自分はいわゆる"冷え性"で、特にこの冬の時期は、一度外へ出るとしばらく指先が冷たいまま。手を繋ぐと、"ありがとう"とか"嬉しい"の前に「冷たいね。大丈夫?」になってしまうことが多い。

「手が冷たいほど心は温かいんだよ」という、誰もが昔から聞いてきたであろう、よく分からないフレーズで笑い合うまでがセットだが、単純に手の平の温度を考えれば、僕が相手に温めてもらったということになる。

隣にいる子の身体を、心を、温めたい。そう思って手を取ったのに、むしろ温めてもらうことになる自分。情けないような、幸せであるような。

幸せとは
星が降る夜と眩しい朝が
繰り返すようなものじゃなく
大切な人に
降りかかった雨に傘を差せることだ

これは、back numberの中でも特に好きなフレーズのひとつで、曲のタイトルは『瞬き』。

アルバイト先に看護学科の後輩がいて、来年の2月から、病院での実習が始まるらしい。そして、それは非常にハードなものらしい。たしかに、医学生の僕らが同じ病棟で実習をしているだけでも、それが過酷な数週間であることは多少察することができた。

まずは、課題の多さ。すべて手書きで、控え室では隣り合って黙々と机に向かう看護学生の姿をよく見かける。次に、立ち振る舞い。看護師さんが学生に対して優しいとはいえない雰囲気がある。病棟では直立不動で一直線に並んで待機しているし、ナースステーションでは決して邪魔にならないようにと空気を消して(あくまで僕の視点と感覚で、ということだが)いるように見える。

僕が「そっか、大変なんだね。自分には想像つかないけど…応援してる。」とうまく寄り添いきれずにいたところに、薬学部3年生のYが通りかかり「彼女が看護だから、俺は分かるよ。睡眠時間1時間とかだし。本当しんどいよね。」などと素敵な言葉をかけてくれた。
「めっちゃ優しい…ありがとうございます。頑張ります!」となり、その場は明るい雰囲気で流れたが、どうも気になって仕方ない。

他人の苦労とか悩みがそう簡単に分かるだろうか。もちろん、Yと恋人がとても親密で、何でも共有できる関係なのだろうとは思う。
しかし、少なくともそれは、back numberの曲を聴いてタイトルを当てるよりも難しい。あるいは、マクドナルドやスターバックスで食い逃げするよりも難しい。僕にはそう感じられる。

隣にいる人の汗や涙に気が付き、その意味を理解しようと努めるのは素晴らしいことだし、僕もできる限り相方にはネガティブな部分も含めて寄り添いたいと思う。しかし「僕には分かるよ」なんて言葉は目の前にいる相手を傷つけてしまわないだろうかと心配になる。心を開ける相手は限られていて、勇気を振り絞って、信頼できる”あなた”に苦しみや迷いを打ち明けたのに。

「分かるよ」「大丈夫」「頑張って」ー優しさを纏いながら、ボロボロになった心に"とどめ"を差してしまう言葉は少なくない。冷たくなった身体を温めたい、癒しになりたいという気持ちは尊いし、傍にいる時間をつくるのも素晴らしいことだ。
だからこそ、パートナーとして大切な人の"居場所"になることはとてもとても難しいんだと思う。

どんな言葉が願いが景色が
君を笑顔に幸せにするだろう
地図なんかないけど歩いて探して
君に渡せたらいい

さて、この曲の題名タイトルは何だったろうか。

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