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ヴェルナーによる信用創造についての実証テスト

Werner, Richard A.(2014). Can banks individually create money out of nothing?—The theories and the empirical evidence. International Review of Financial Analysis, 36, 1-19 (in this issue).

『円の支配者』の著者として知られるリチャード・A・ヴェルナーによる2014年の論文。

銀行は本当に何もないところからマネーを創出しているのか?ドイツのある銀行の協力のもと、ヴェルナー本人が実際に20万ユーロのローン契約を結ぶ。ほどなくしてヴェルナーの当座預金口座に20万ユーロが入金されて融資が完了するまでの間、銀行内で何が行われていたのかを、銀行係員のアクションから端末画面、貸借対照表や預金口座などの内部会計の変動まですべてを記録。そこから導き出された結論は、銀行は貸出にあたってヴェルナーの預金口座にただ20万ユーロを記帳しただけであったというもの。すなわち、銀行は貸出の元本たる20万ユーロをどこからも調達などしていないことが明らかとなった。

実証テストの記述は論文全体の1/3にも満たない程度。他は銀行がマネーを創出しているのかどうかについての代表的な3つの仮説が歴史的な登場順に検討される。すなわち、「信用創造説」、「部分準備説」、「金融仲介説」。実証テストの結果はこのうち最も古い「信用創造説」の見解を裏付けるものであった。

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まず結論ありきのテストではないかと思わなくもないが、このような信用創造の実証テストは類例を見ない貴重な試みだと思う。

ヴェルナーの論文にはクライアント・マネー・ルールを免除されている銀行業の特殊性について考察したものなど、興味深いものが他にもある。

信用創造説に関心がある人にはぜひ読んでほしい。




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