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大相撲名古屋場所の展望


7月4日に始まった大相撲7月場所。例年3月場所は大阪、7月場所は名古屋、11月場所は九州(福岡)と年3回地方場所が行われるが、今場所は名古屋で開催されており、実に1年4か月ぶりの地方場所となっている。それでも協会、力士、ファンは引き続き、緊張感を持った興行運営が求められる。熱い声援はなくても、多くの熱戦を期待したいところだ。
さて、2日目を終えたところであるが、今場所のトピックと展望について語りたい。

■ 進退をかける白鵬
鶴竜が3月場所中に引退し、現在一人横綱の白鵬だが、怪我の影響で前場所は全休した。下図1の通り、6場所連続で休場している状況で、横綱として厳しい責任が問われているところ。本人も「進退をかける」とコメントしており、まさに土俵際まで追い込まれている状況だ。

優勝44回、通算勝利数1172勝、年間最多勝10度、63連勝など、ありとあらゆる大記録をもった大横綱だが、近年は相撲とは思えない荒っぽい取り口や行司への軍配に自ら「物言い」をつけるなど、大横綱らしからぬ所作も指摘を受けており、周囲の白鵬への視線は厳しい。前半戦に躓くようなことがあれば、引退は不可避だろう。

初日は新鋭小結の明生との力相撲を制し、2日目は相撲巧者遠藤をうまくいなして勝利した。初日は得意の右四つになれず手こずり、2日目は中途半端な立ち合いだった。やはり、本来の出来にはなく、スタミナ面含めてもつだろうかという疑念を払拭するには至らない相撲内容。長い15日間となるかもしれない。

【図1:白鵬の直近の成績】

図1:白鵬の直帰場所一覧

■ 綱取りを目指す照ノ富士
今場所最大の注目が照ノ富士の「綱取り」だ。先場所は帰り大関の場所で12勝3敗で優勝を飾った。その前の場所では関脇の地位で12勝3敗で優勝しており、2場所連続優勝中だ。

横綱昇進の条件は、横綱審議員会の内規に「大関の地位で2場所連続優勝、またはそれに準じる成績をあげた力士」と規定されている。
 千代の富士以降、横綱昇進を決めたケースは下図2の通り。昭和末期に成績の振るわない横綱を誕生させてしまった反省から昇進条件は厳格化され、「大関の地位で2場所連続優勝」が必須条件のように捉えられた時期もあったが、鶴竜、稀勢の里とここ最近はやや緩和している。

照ノ富士の場合、既に4度の優勝経験もあり、たとえ今場所優勝でなくても準優勝であれば、横綱昇進は問題ないというのが筆者の意見である。
それにしても、23歳で大関昇進、そして怪我による大関陥落、序二段まで転落した男が再び大関に返り咲き、そして今横綱の座を奪わんとするその姿は、漫画でもかけないような感動的なストーリーだ。

初日遠藤、2日目は新三役若隆景と全く問題にせず、既にその取り口は「横綱相撲」だ。膝に爆弾を抱えており、予断を許さないが、序盤戦に取りこぼさず連勝を続ければ、横綱昇進ムードも高まってくるだろう。

【図2:横綱昇進を決めたケース】

図2:横綱昇進ケース一覧


■ その他注目の力士
優勝争いはこの照ノ富士とやはり横綱白鵬を中心に展開されるだろう。上位陣では、先場所は9勝に終わった大関正代は、2連勝したが、先場所最後まで優勝争いを繰り広げた貴景勝は2日目の取組で、負傷し、病院に直行するなど心配なニュースが伝えられている。

また、本来であれば帰り大関が期待されていた高安は場所直前にぎっくり腰を発症し、1日目、2日目を休場し、3日目から出場とのことだ。但し、本調子からは、ほど遠いことが想像され、大関昇進を期待するのは酷だろう。

他には、新小結の若隆景にも注目したい。相撲巧者の印象があったが、ここ数場所で急激に力をつけ、力強い相撲が増えてきた。大いに上位陣を慌てさせ、優勝争いにも影響を与えて欲しい。

また嬉しいニュースは「異能力士」宇良の再入幕。怪我で一時は序二段まで番付を下げたが、4年ぶりに幕内に復帰した。小兵ながら、多彩な技を繰り出し、大男を倒す様はまさに相撲の醍醐味を体現している。今は十両に下がっている炎鵬と共に、大いに土俵を賑わせてほしい。

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