「濃厚接触者」の定義とそのコントロール〜職場で感染者が出た時のために

はじめに

会社(組織)としての新型コロナウイルス対策を考えた場合、社員に「感染者」が出た場合の対応を考えておくことは極めて重要になると思います。

本日(4月4日)、赤坂警察署の23歳の女性警察官が新型コロナウイルスに感染したことことがニュースとなりました。NHKのウェブサイトを見てみますと、下記のように報じられていました。

東京 港区にある警視庁赤坂警察署に勤務する23歳の女性警察官が新型コロナウイルスに感染したことが確認されました。警視庁は一緒に勤務していた署員ら60人余りを休ませる一方、警察署の機能を維持するために本部から100人余りを増援する大規模な対応を取ることにしています。

このニュースや、今まで感染者が出た組織での対応を見てみると、組織のメンバーから感染者(あるいは感染の疑いがある者)が出た場合には、概ね以下の対応が必要となるかと思います。

・感染者本人のケア(検査による感染の特定と、適切な医療機関での治療)
・感染者本人の行動履歴の調査と、濃厚接触者の特定
・濃厚接触者のケア(2週間の自宅待機の要請など)
・感染者に関わりのある場所(会社の机やその周辺など)の消毒
・感染者や濃厚接触者が業務を一定期間抜けることに対する、必要な措置(別の人員の補給、一時的な業務の停止など)

ここで少し曖昧だと思ったのは「どこまでが濃厚接触者なのか」でした。というのは、この「濃厚定義者」を最小限に抑える対策を事前にとっておかないと、いざという時に、感染者と濃厚接触者が「前線」から最低2週間退かざるを得なくなり、組織が「機能不全」になりかねないと考えたからです。そこで今回は、「濃厚接触者」の定義について調べ、組織として必要な対応を個人なりにまとめてみました。

「濃厚接触者」の定義

濃厚接触者については、国立感染症研究所の「新型コロナウイルス感染症患者に対する積極的疫学調査実施要領(2020年3月12日暫定版)」の中に記載があり、おそらくはこれが基となっているのではと思います。上記ページに掲載してあるPDFでは、「濃厚接触者」を含み、以下のように用語が定義されていました。

●「患者(確定例)」とは、「臨床的特徴等から新型コロナウイルス感染症が疑われ、かつ、検査により新型コロナウイルス感染症と診断された者」を指す。

●「疑似症患者」とは、「臨床的特徴等から新型コロナウイルス感染症が疑われ、新型コロナウイルス感染症の疑似症と診断された者」を指す。

●「濃厚接触者」とは、「患者(確定例)」が発病した日以降に接触した者のうち、次の範囲に該当する者である。
・ 患者(確定例)と同居あるいは長時間の接触(車内、航空機内等を 含む)があった者
適切な感染防護無しに患者(確定例)を診察、看護若しくは介護していた者
・ 患者(確定例)の気道分泌液もしくは体液等の汚染物質に直接触れた可能性が高い者
・ その他: 手で触れること又は対面で会話することが可能な距離(目安として2メートル)で、必要な感染予防策なしで、「患者(確定例)」と接触があった者(患者の症状などから患者の感染性を総合的に判断する)。

●「患者クラスター(集団)」とは、連続的に集団発生を起こし(感染連鎖の継続感染連鎖の継続)、大規模な集団発生(メガクラスター)につながりかねないと考えられる患者集団を指す。これまで国内では、全ての感染者が2次感染者を生み出しているわけではなく、全患者の約10-20%が2次感染者の発生に寄与しているとの知見より、この集団の迅速な検出、的確な対応が感染拡大防止の上で鍵となる。

個人なりに考える「濃厚接触者」

上記の国立感染症研究所の定義を読み解くと、濃厚接触者は、おおよそ以下のような方になるのではと思います。

1.検査により新型コロナウイルス感染症と診断された方(以下、感染者)の家族
2.感染者と長時間の接触(車内、航空機内等を含む)があった方
3.感染者と、長時間でなくても、「換気の悪い密閉された空間」で「2メートル以内の距離での会話など」を「必要な感染予防策なし」で行った方
4.感染者の気道分泌液もしくは体液(唾液など)の汚染物質に直接触れた可能性が高い方
5.適切な感染防護無し(防護服や医療用マスクなどをせず)に感染者を診察、看護若しくは介護していた方

実際に感染者が出た場合は、保健所の指導のもと、より厳密かつ総合的に濃厚接触者を特定(判断)していく必要があると思いますが、組織での対策を考える上で重要だと思うのは、上記の2, 3, 4でしょうか。

どこまでを長時間というのか、に曖昧なところはありますが、例えば
・換気の悪い密閉された会議室で
・2メートル以内の間隔をあけずに、密接する形で
・マスクなどの感染予防策なしに
行われた会議があった場合、その会議の出席者に感染者が出た場合は、出席者は「濃厚接触者」となる可能性が高いと思います。そのため、このように「濃厚接触者」を出さないためにも
・会議はできるだけオンラインで行う
・どうしても対面で行う必要がある場合でも、2メートル以上の間隔をとり、マスクを着用する
などの対策が必要になるかと思います。これは社内の会議であっても社外の会議であっても同じです(必要に応じて、取引先にも求めていく必要があります)。

また少人数であっても、食事会や飲み会は、「密接した接触(=2メートル以内での会話)」となる可能性が高く、マスクもしないと思うので、意図せず唾液などにも接触してしまうことがあることを考えると、避けた方が良いとなるかと思います。

その他、やむを得ずオフィスに出社させる必要がある場合でも、シフト制や交代制にしたり、活動範囲をある程度制限することで、できるだけ「濃厚接触者」の数を少なくする(=コントロールする)ことが重要になるように思います。

まとめ

まとめると、以下のような事が組織には求められると思います。

・「感染者」が出た場合に組織が「機能不全」に陥らないためにも、「濃厚接触者」の数が少なくなるようコントロールする必要がある
・リモートワークは、社員本人が感染するリスクを減少させるだけでなく、「濃厚接触者」を少なくするためにも有効な措置であり、リモートワークでできる業務はできるだけリモートワークで行えるようにし、不要な出社は控えさせる
・やむをえず出社しないと行けない場合も、交代制・シフト制の導入、活動範囲を最小限に絞るなど、必要な対策やガイドラインを設ける
・やむをえず対面で会議をする場合も、2メートル以上の間隔を設ける、マスクを着用するなど、必要な対策やガイドラインを設ける(社外の会議も同様)
・上記の内容を含む組織としての方針を早めに固め、トップから明確なメッセージとして構成員や取引先などに伝える

今回の記事が、何らかの参考になれば幸いに思います。

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