千代子_遥_hedder

【新説魔法少女:感想】キャラの魅力をストーリーと戦闘の両面から追求した作品

ウィキダです。プレイするすべてのキャラを好きになる。それは簡単なことではないだろう。プレイヤーはゲームの有利不利で価値を決める以上、弱いキャラが偉そうな口を聞いていると腹がたってきたりとかセリフが少なかったりすると印象が薄くなったりする。

だからSRPGやRPGなどで操作するキャラが多くなるほど「好きじゃないけど強いから使ってる」とか逆に「カワイイから弱くても使う」というジレンマになりがちだ。もちろんプレイヤーの好みの問題もあるから最大出撃人数より多くのキャラから選択させるとかカスタマイズ性をもたせるという解決だってアリだ。

しかし今回感想を書く「新説魔法少女」はそのジレンマを限りなく解消し、プレイするすべてのキャラの魅力を伝えているのではないかだろうかと思う。
以下、新説魔法少女のネタバレを含むためまだプレイされていない方は以前書いた紹介記事を先にご覧いただきたい。

以下ネタバレ












私はリメイク前の「魔法少女」をプレイしており、だいたいの流れはもうわかっているためそんなに大きく心が揺さぶられないだろうなと思っていた。

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ゆ゛ い゛ ち゛ ゃ゛ ん゛ …!!!!

流れはわかっていてもこのシーンで涙目になってしまった…というか知っていた分、月菜ちゃんはやや贔屓して育てたし、最後に唯の持っていた道具は回収して極力ほかのキャラに経験値が入るように進めていた。けどまさか新規CGを描き下ろすなんて…。もしかしたら私はこの最期の笑顔を見るためにプレイしたのかもしれない。ゥゥッ……ゥッ……

……さて私がこんな風になってしまった理由、そして本作の魅力ついて語っていきたいと思う。

◯理不尽とリアリティが感情移入を強めるストーリー

新説魔法少女のストーリーは大雑把に言えば学生生活のなかで地球にやってきた怪物を倒し、黒幕のいるエレエス星、イド星へ赴くというものだが、黒幕の手がかりを得るスピードは遅く、敵の正体も目的もほとんどわからないまま進み、いざ敵地へ乗り込むというときはかなり終盤だ。その間は数々の事件と日常にフォーカスがあたっている。それはなかば拒否権のない戦いを強いられた彼女たちにとって必要な正義とリアリティを描くシークエンスでもある。

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そんななか互いに怪物と戦うという共通の目的をもってはいるが理不尽な戦い故にその過程で衝突することもある。というか衝突ばかりだ。

度の過ぎた自己犠牲精神を持つ千代子、千代子のブレーキ役を買って出るが愛が重くガサツな遥、自分の能力とその責任に潰れそうになるリリー。そして自分の居場所を求めて道を踏み外した唯。

マジカロイドのシステムは事の是非ではなく強い感情によって力を与える。そして実際に攻略において非常に強力な技を与える。少し現金な話だがその力がプレイヤーにとっても有利に働く。だがそれによってすこしでも問題が解決して平和を取り戻して欲しいという思いでキャラへの感情移入は強くなる。

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唯に自己肯定感を与えてくれたのはマジカロイドの力だけだったが
それを誰かに認めてもらうために戦い続ける。

◯プレイヤーを引き込む設定と能力が密接に結びついたキャラクター

プレイヤーがゲームをプレイするということはその世界における利害関係者になることだ。だからプレイヤーのなかでも強いキャラ、弱いキャラの選別が起こる。プレイヤーの立場だと価値のあるキャラは当然強いキャラになる。

特に人型に有効打を与えられる千代子、遥、唯、テロメアなどは明らかに優遇されているし、琴音は作中天才で(絵を描く以外の)技術習得の要領がいい分、移動力、攻撃力が高くモンスターの巣の早期破壊や苦手な敵を先んじて倒せる上に経験値が多く入るスキルを持ち合わせている。

このゲームは使用キャラ達の境遇も残酷だがある意味、能力が才能に依存している部分も非常に残酷だ。中学生と言えば体格や運動能力、学校の成績でも差がつきはじめてそのことを意識することも多い。そして地味とされるキャラは地味だし天才は作中も天才だ。それが無力ということに必ずしも直結はしないが年頃を考えれば意識せずにはいられないだろう。

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中学生としてアイデンティを得られない上に
比較するような人に囲まれているというのはある意味キツい。

でもどんなに評価の高いキャラを育てても突出させると囲んでボコボコにされるし敵の弱点を全く考慮せずに技を繰り出してもMPの回復アイテムもすぐには回復しないので少し打たれ強くても継続戦闘力には限界がある。

そのため他のキャラにも頼る必要がある。他のキャラを使えば自然とレベルが上がるので初めはパッとしない性能でもそのうちに強力な技を覚えるようになる。(強いていえば香、ひより、玲奈といった遠距離系キャラは反撃のダメージを受けにくい分、削りでの戦闘が多く、トドメをさす場面が少ないので意識しないと経験値はやや溜まりにくい。)

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リメイクによって早期加入した祐樹には助けられた。
赤魔道士ポジションだって立派な才能。

やがて一人一人のキャラのストーリーが進み、才能や有用性についてわかる程にそのキャラの良さがわかってくる。解放念花で必ず味方に会心を出せる琥珀、防御バフで敵を引きつけながら削れる梢。低い移動力を空中移動と火力高めの中距離攻撃で補う加音。これらの技がストーリー進行のものを除いて事前に知ることが出来る点もキャラを見放さずに期待をかけられるのが良い。彼女たちが互いにどれだけ比較しあうとしても一緒に戦う仲間であることには間違いないのだから。

他にもリメイクの追加要素として移動混雑を解決する念動クレーンをつかえるひよりの追加や比較的セリフの少なかったキャラクターのシナリオ修正など今作のリメイクはまさに磨ききったダイヤモンドといえるゲームだろう。

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前作非常に空気といわれた米子。キャラ性能も見直された。
セリフが劇的に増えたとまでいかないがお母さんポジションを手に入れた。

◯まとめ

私が前作をプレイしたのは4年ほど前。あれからさらにナラティブ、オープンワールドといったキーワードでプレイヤー自身の選択を尊重し、一体感をもたせることを重視したゲームの認知度が日本でも高くなった。新説魔法少女はキャラの加入も逃亡も死亡もプレイヤーでコントロールできないし、終盤は洗脳されたテロメアの説得から真千代のニセ遥との接触などむしろストーリーに振り回されることも多い。「さすがに時代とともに好みが変わったし、思い出フィルター的な部分もあるかな?」と心配したが全くの杞憂だった。むしろ振り回されるからこそ伝えられるものだと思えるだけの力があった。本作は作者の努力と工夫と情熱の結晶であると同時に、ストーリーとキャラクターによってプレイヤーをゲームの世界へと引き込むようなゲームも決して廃れることなくリードしていけると確信した一作だった。

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ゥゥッ……

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