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溶鉄のマルフーシャではEDがあなたを迎える。その難易度調整の妙。

溶鉄のマルフーシャはハイテンポシューティングと銘打っているように非常にテンポがよくて、EDまで1時間ほどで難易度もかなり易しい作品だ。

プレイヤーは徴兵された市民として敵国の機械兵が門を破壊するのを阻止する。いわばタワーディフェンスのように敵を迎え撃ち、終わるとランダムな3つのパワーアップのうち一つを選んで購入してまた迎撃するというのを繰り返す。

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1度の戦闘が10~20秒ほどですぐ終わるので非常に小気味よく進む。どうしようもないときも一気に負けるのでダメなときも小気味よく終わる。

敵の行動は基本的にまっすぐこちらに向かって来たあとその場に留まって門を攻撃するような単純なものがほとんどなのでエイム力などはなくても問題ない。勝因、敗因がわかりやすいので強化のコツもつかみやすくて非常に遊びやすい。

難しくないけどなぜか常にじわっとした緊張感がある。
それは金欠に悩まされるのだ。

●易しい難易度で成り立つ厳しい世界観

敵を殲滅して防衛に成功すると一日の給料が支払われる。だが特に序盤は税収があがるので収入は安定しない。
頑張ったのに税金が高くて手取りが0なんてこともある。

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毎回内訳が書かれた給与明細書が送られて憂鬱になる。

どれだけ強力な銃を買っても日毎に耐久力が減っていくので常に買い換えられるだけの貯金をしておきたい。しかしすこしずつパワーアップをしなければ今後の敵の数が増加したときに捌けない。
サブウェポンがあれば一時的に強力な攻撃ができてとっさの対応ができるけど一時しのぎには違いない。人手がほしいけどお金がなくてどもっと強い仲間を雇用できるチャンスを逃してしまうかもしれない。
そういった将来の悩みを抱えたまま解放されることなく続く。

不安の表現方法も非常によくできている。

そもそも国のために戦っているのに銃を買うのも強化するのも給与から自腹で、守るべき門が壊れたら給与から天引きされたり自費で修理したりする必要がある。
つまりミスが多いと補償をどころかさらに収入が減らされる。
そして収入がないと強化できないので戦況は悪化していき、さらに敵の攻撃を許してしまうという悪循環におちいってしまう。

だが給料以外でお金得たりや購入以外で強化を得る手段は限られているがないこともない。

時折購入画面でチャンスカードと呼ばれるものが現れる。
選ぶとランダムな効果のうち無償で強化や臨時の収入が入るが逆に国に公共事業の名目でお金を徴収されたり、
強い敵に襲われるイベントが発生するため、ピンチだからといってこれをアテにし始めると泥沼にハマる可能性もある。
チャンスカードはピンチを呼び込むリスクがあるゆえにあくまでチャンスの域をでないのだ。

ちなみに筆者はチャンスを求め公共事業徴収を三連続で引いてスカンピンになった。

いずれにしてもこの不安そのものからは逃れられない。
敵を倒しても次の敵は倒せるのか?いい銃を買えても次の銃は使いものになるのか?
貯金は足りるか?税金は上がらないだろうか?ステータスは十分か?サブウェポンはなくてもいいのか?


これらの不安を後押しする世界観も素晴らしい。
たまにある休日で休める薄暗い寮では指導者への奉仕精神を謳うスローガンが流れ続け、テレビは身を粉に働く労働者を称える。
配給で食べる食事はトレーにサプリメントだけが乗っているなんてこともある。

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ゲームの難易度の易しさに反して絶えず未来に向かってプレイヤーの精神を削り続けてその手を緩めない。それは決して優しくなることはない。
本作はハードな世界観に合うように難易度をそのままハードにせず、お金で不安を煽るというスマートな別解を示している。

●溶鉄のマルフーシャではEDがあなたを迎える

さて、難易度のバランス調整がよくても強化の選択肢がランダムなので、最適な選択とベストな操作をしてもどうしても運が悪くて負けるということはあり得る。
ゲームオーバーになれば初日からやり直し、もできるが本作のメインモードはなんとゲームオーバーになっても強化内容をそのままに同じ日からリスタートできる
さらにお金が普段の給料より多い20増えて購入画面に移って武器や強化を上乗せできるため、繰り返し挑めば最強になれる。
ごく一部のED条件を満たせない以外のデメリットなくそのまま続行可能だ。
なので一度ゲーム全体を通してどれぐらい強い敵がでてくるのか、武器や強化は何を優先したらいいのか、わからないまま終わるという悲しい事態を避けられる。
ランダム強化な選ぶというといわゆるローグライトのような印象もあるが一周終わるまでロストも発生しないほどの親切さである。

それとは別にロストありでどれだけの日数を長く生き残れるかに挑むチャレンジモードがある。

メインモードでは出現する敵はほぼ固定のパターンがあるのでステージクリア型に近く、初見で生かさず殺さずのバランスになっている。
パターンを覚えれば攻略もかんたんになるので周回して別のEDを見るのも楽になっていく。

対してチャレンジモードでは敵の種類などにバラつきがあり、よりプレイヤースキルと運を楽しめるやりこみ要素となる。

この2つのモードが別れていることでまず誰もがサッとメインモードでEDをみて充足感を得られる。
そのあとゲームに慣れたあとでよりハードな楽しみ方を選ぶかどうかをプレイヤーに任せることができる。

総じて、忙しい人でもサクッと楽しめてプレイヤースキルを問わず、あらゆる人を救いのない世界へと引き込めるゲームと言えるだろう。
負けた諦めではなく、撃っても勝っても終わらない、本当の絶望をみんなで味わいましょう。


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