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やまがたワーママ図鑑023

なんで働いているかと言われたら、「生きるため」

渡辺初子さん(43歳)寒河江市在住
職業:農業/株式会社ういこファーム代表取締役
お子さん:高校1年女の子、中学1年男の子、小学5年女の子

<これまでの経歴>
東京都出身。大学で中国語を学び、外国語を活かした仕事をしたいと英語習得のために1年間オーストラリアにワーキングホリデーに。その後、中国で友人と起業しようと考えたこともあったが、派遣社員として約2年勤務。25歳の時に工業系の社団法人に就職。仕事で知り合った英語教授が、現在の夫の恩師で、その教授の誘いでサクランボ狩り体験に寒河江市を訪れたことがきっかけで夫と出会う。1年後に妊娠・結婚をして寒河江市に移住。2020年1月ういこファームを起業する


自分のキャリアがゼロになってしまったという思いがあった

-今の仕事についたきっかけと、起業した経緯を教えてください
夫と出会い、妊娠して結婚することになり、正直、自分のキャリアが結婚したことでゼロになってしまったという思いがありました。まさか自分が農業をやるなんて夢にも思っていなかったので。移住してきた当初は知り合いもいないし、初めての育児だし、冬には2メートルも雪が積もるし、追い詰められた状態でした。

それでも産後8カ月の時にベビースイミングを始めて、それをきっかけにママ友ができたり、いろいろなところに顔を出すようになって知り合いが増え、SNSも含めて話せる場所ができて、段々と気持ちが楽になっていきました。初めは、夫をサポートすればいいかなというぐらいの気持ちで農業を始めましたが、やり始めると、渡辺家の農業のために自分もイチから勉強しなきゃ、なんとかしなきゃ、という思いになっていきましたね。その後、野菜ソムリエの資格を取ったり、「やまがた農業女子ネットワーク(愛称:あぐっと~agood~)」の立ち上げにかかわったり、農業を通した広がりも増えていきました。

うちはサクランボを中心に生産しているのですが、サクランボってその年の天候に大きく影響を受ける作物なんです。温室栽培もやっているのですが、その場合、サクランボが採れなくても重油代はかかる。安定した収入を確保したいなと思っていた時に、知人から、有機・低農薬野菜や無添加食材の定期宅配サービスを提供する会社と、農家をつなぐ仕事を引き受けてほしいと声をかけてもらい、この事業を受けるためにういこファームを立ち上げました。

「私は農家だ。農業をやっていくんだ」という覚悟が持てた

-仕事のやりがいを教えてください
朝から晩まで休みなく働いてボロボロになっても、サクランボが採れなければまったく収入につながらないという時期もあって、何やってるんだろう…、やってもやってもマイナスになるってどういうこと…、と農業に対してマイナスなイメージしか持てない時期もありました。逃げたくて逃げたくて…。

でも2020年に自分の会社をつくったことで、「私は農家だ。農業をやっていくんだ」という覚悟が持てたんです。農業って単純な仕事の構造なんですよね。自分の手で作ったものを、自分の手で売って、それを食べてもらってお客さまに喜んでもらう。それがすごくいいなと思っていて。私は、人と会って話して、自分の世界が広がるのが好きで、うちのサクランボや、ういこファームの事業を通してたくさんの人とつながりができ、また私自身が人と人をつなぐことができていて、それが大きなやりがいです。なんで働いているかと言われたら、「生きるため」ですね。

娘が、将来会社を継ぎたいと言ってくれている

-仕事と子育ての両立で心がけていることはありますか?
子どもたちが小さいころは本当に大変で記憶がないぐらいです(笑)。今は、子どもの話を、子どもの立場でよく聞くようにしています。おかげで子どもとは、同じ趣味があったり、共通の話題で笑えたり、いい関係がつくれていると思います。仕事を優先しなきゃいけない時もありますが、子どもの意思を大事にして、子どもがやりたいことには全面的に協力して、できる限り「子どもファースト」でいたいですね。

-どんな姿をお子さんたちに見せていきたいですか?
いろんな人に助けられながら、楽しく過ごしている姿は見せられているかなと感じます。子どもたちにも、人との関係を大事にしてほしいと思っています。仕事として「農業もいいな」と思ってくれたらと。実は長女が経営を学びたい、将来私の会社を継ぎたいと言ってくれているんです。「ママ、大変だけど楽しそうだね」と言ってくれていて、とてもうれしいですね。

いろんな人たちに助けてもらって今の自分がある。今度は私が助ける側になりたい

-これからの夢を教えてください
会社を大きくして軌道に乗せたいです。安心・安全な食べ物をより多くの人に届けたい。そして、地域の中で仕事を探しているママたちがたくさんいるので、そういうママたちの雇用の場も提供していけたらと思っています。今までいろんな人たちに助けてもらって今の自分があるので、今度は私が助ける側になりたいです。農家と会社との両立、子どもたちとの時間のバランスを取りながら、今はいろんな種をまいておいて、子どもたちが手を離れて、本腰を入れられるようになった時に一気に打ち込めるよう、体制の準備はしておこうと思っています。

あとは、昔から旅行が好きで、これまで世界40カ国ぐらい周りました。これからは子どもたちと海外旅行がしたいですね。

-同じワーキングママのみなさんにメッセージをお願いします
気楽に、楽しくやりましょう、ということですね。私も山形に来たばかりのころや、子どもたちが小さいころは本当に大変でしたが、どんなにつらいと思っても、その時期は確実に過ぎていきます。点で考えるのではなく、線で考えて、あまり追い込まないでほしいです。視野を広げると、楽しいことがいっぱい転がっているので、楽しんで過ごしていきましょう。

<渡辺さんの1日のタイムスケジュール>
4:30 起床、お弁当づくり
6:00 長女朝食
6:30 長女登校(義父が駅まで送迎)
7:00 長男、次女朝食
8:15 仕事開始
18:00 終業、夕飯づくり
19:00 夕飯、子どもたちの塾の送迎、家事、会社の仕事など
24:00 就寝

                             文/ayuko

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