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やまがたワーママ図鑑027

「そのままでいいんだよ」。過去の自分を含め、ワーキングママたちに伝えたい

木村菜緒さん(32歳)米沢市在住
職業:一般財団法人三友堂病院/看護師
お子さま:3歳女の子、0歳10カ月男の子

<これまでの経歴>
米沢市出身。三友堂病院の看護学校を卒業し、2011年から看護師として勤務。消化器外科病棟、緩和ケア病棟、呼吸器循環器内科を経験し、2021年5月末より緩和ケア病棟に復帰。現在は第2子の育休中


生まれる瞬間と同じくらい重みのある、亡くなる瞬間に立ち合う仕事

—今のお仕事に就いたきっかけを教えてください
中学生のころ、病院が好きではなかった祖父が、最終的に病院で亡くなったんです。それ以前に、曽祖父が家で最期を迎えた姿を見ていたこともあり、「家で最期を迎えられるような地域医療をつくる」という約束を祖父としました。そして看護師を目指しました。

—仕事のやりがいを教えてください
1人暮らしやご夫婦2人暮らしなど、介護してくれる人がいない方でも、最期は自分の家で過ごして自宅で亡くなりたいと思っている人はたくさんいます。緩和ケア病棟は、家族で介護することが大変な時や、つらい症状を薬でコントロールするための場所としての役割もあって、どうしたら家で過ごせるか、どうやって家族が支えていくか、患者さんのご家族とも話し合って一緒に考えながら、患者さんが家で最期を迎えるためのお手伝いをします。

「病院は病気を治すところ」という一般的な考えからすると、働くことに対するやりがいを言葉で表現するのは難しいですね。外科病棟にいたころは、手術をすれば治る患者さんや、治療をして社会復帰していつもの生活に戻っていく患者さんを見てきましたが、緩和ケア病棟ではそうならないことも多い。ただ、昔は病気が治らないと「負け」だと思っていましたが、祖父は病気に負けたのかと言われるとそうではなく、たとえ病気だったとしても心が健康ならその人は幸せなんじゃないかと思う気持ちもあります。

もともと外科病棟でかかわった男性の患者さんを、数年後、緩和ケア病棟で担当させてもらったことがあって。奥さまが家で介護をしたくないと言うほど夫婦仲があまり良くない状況だったんですが、緩和ケア病棟でお互いの気持ちを伝え合うことができ、最期は家で過ごすことができました。患者さんの長い歴史の中にかかわれる、生まれる瞬間と同じくらい重みのある亡くなる瞬間に立ち合わせてもらえる職業なんだと感じました。

緩和病棟で最期を迎えたとしても、そこで過ごした時間はきっと、ご本人もご家族もずっと残るものだと思うので、残された時間をつらい時間としてだけではなく、痛みを少しでも減らして、その方らしく過ごせて良かったという時間になるようお手伝いできればと思っています。

母親である自分がすべて何とかしなくてはという思いにとらわれていた

—仕事と育児の両立で大事にしていることはありますか?
もっと人に頼ったり、甘え上手になりたいと思っています。長女を出産後、夜勤もこなすフルタイムで復帰して、娘とほぼ合わない日々が続いたことがありました。休みの日ぐらいは娘と一緒にいる時間を大切にしたいけど、自分の体も休ませなければいけない。育児については、母親である自分がすべて何とかしなくてはならないという思いにとらわれて、仕事中も家で子どもがどう過ごしているかすごく気になってしまったり。「なんのために働いているんだろう」と悩むことも多かったですね。すごくつらかった。「完璧なお母さん」というしがらみに取りつかれていたんだと思います。

今思えば周りにもっと甘えれば楽だったんですよね。先日も娘の3歳児健診があったのですが、以前であれば母である私がなんとしても行かなければと思っていましたが、思い切って夫に任せました。任せる、1歩引いてみる、見守る、こういう気持ちが大事なんじゃないかなと思っています。また、うちは義母と同居しているんですが、先輩から「子育てに協力してくれる家族がいるのは強みだよ」と言ってもらったこともあって。だからこそ、次の復職は働き方も考えて、無理せずに、仕事と家庭を両立していきたいと思っています。

—これからの夢を教えてください
家族のために働くというのはもちろんあるけど、看護師として、困っている方、つらい思いをしている方をサポートできるようこれからもスキルアップしながらがんばっていきたいです。また、アロマセラピストの資格を取得して、育休前は緩和ケア病棟の患者さんにアロマセラピーを実施していました。働く人の疲れを癒したいという目的もあって資格を取ったので、患者さんのために、はもちろん、職場の同僚の疲れを癒すような活動もしていきたいです。

—どんなワーキングママでありたいですか?
喜怒哀楽いろいろとありますが、いろんな自分がいるということを受け止めて、それに気づかせてくれる子どもたちには感謝しています。娘が私の失敗を見て、「お母さんっておもしろいね」と言うことがあるんです。失敗する姿、未完成の姿、完ぺきじゃない姿を見せながら、子どもたちと一緒に成長していきたいなと思っています。

そして子どもたちには自分がやりたい道を進んでほしい。自分が好きなことを極めていった結果、それが仕事になっていたというのがいいなと思います。私も中学生のころに見つけた看護師になるという目標をかなえているので、看護師として楽しそうに仕事をしているお母さんでいたいです。

—では最後に、同じワーキングママのみなさんにメッセージをお願いします
過去の自分に向けたメッセージでもありますが、ちゃんと子育てしなきゃとか、ちゃんとお母さんしなきゃと思わず、「そのままでいいんだよ」と伝えたいですね。家族や周りの人に甘えて、頼って、自分の時間もうまくつくって楽しんで仕事と家庭を両立していけたらと思います。 

<木村さんの1日のタイムスケジュール>
5:00 起床、洗濯
7:00  朝食
7:30  出勤、夫と子ども起床
8:00  夫が院内託児所に長女を送る
18:30  夫が子どものお迎え 
20:00  お風呂
21:00  帰宅
23:00  就寝

                                                                                                                文/kae



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