金沢おでん 気に入った

「金沢が、東京人に取られてしまったようで寂しい」
こう言ったのは、今回の、肝臓についての啓蒙記事全国ツアーを取り仕切っている新聞社の大阪支局のひと。大阪から金沢へは、それまで特急「サンダーバート」一本で行けたのに、北陸新幹線が敦賀まで延びたせいで乗り換え乗り換えに時間を取られ、遠くなってしまったそう。金沢医大の教授取材を担当するのは関西のライターにするか、それとも東京の?と話し合われた結果、私に依頼が来たというわけだ。確かに東京から金沢は近い。帰りに乗った「かがやき」は、長野の次はもう大宮だった。
特に観光をするわけでもなく、訪れた街をひたすら歩き、遠くても近くても電車移動が大好きな私にとって、こういうスポンサーありきのお仕事は性に合っている。待つ時間の方が長くて、実質インタビューは1時間弱。有り難いお仕事だ。
それにしても、地震などなかったように、金沢は以前となにもかわっていなかった。なかなか片付かない半壊の家、いまだにがれきの山の能登地域と同じ県だとは思えないくらいだ。私なりのささやかな「復興支援」になるかどうかわからないけれど、金箔入りの和菓子や餡もちなどを土産に買って帰ろうかと駅構内を隅々歩いたが、どうしてもウキウキ買い込む気にならない。代わりに、目にとまった「ちくわ」というカウンターだけの店で、金沢おでんの昼のみセットとやらをいただくことにした。魚類でだしを取ったおでんつゆがおいしくて、あまさずぜんぶ飲みきった。初めて食べたふわふわの白いちくわも気に入った。楽しい旅・・・ではなく、お仕事。

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