松井久子さんのこと

私の性格上、サブとして上に立つ人を支える立ち位置が最も向いていると思っている。投稿誌Wifeの編集・発行を引き継いだときも、すでに有限会社を立ち上げて医療ライターとしての仕事も絶好調だった私は、Wifeで前面に立つつもりはなかった。会員の中でカリスマ的な存在だった赤井さんをフォローするからと強く押して、3期目のWifeがスタートしたのだ。
しかし、予想もしなかったのが、彼女の早逝だ。思い悩む余裕もなく、副編集長は編集長になった。そして、Wife50周年の記念行事を企画し実行。フォーラムや大懇親会の開催、記念書籍の発行など、いままでそんなイベントは経験したことはない専業主婦たちが実行委員となり、ゼロから創り上げていく様子をドキュメンタリー映像にもまとめた。
その怒濤の1年の中で最もお世話になったのが、映画「折り梅」や「レオニー」の監督・映画プロデューサーの松井久子さんだ。翌年には、フェミニズムを唱える女たちのドキュメンタリー映画「何を恐れる」の製作を通じて、松井さんとの距離はグッと近くなった。もちろん女学生のように「べったり仲良し、親友よ」という関係ではない。彼女とは能力も性格も全く違うが、20代で結婚・出産、夫から逃げだしたところは似ているから、勝手にシンパシーを感じている。
その松井さん、いまやベストセラー小説家だ。「疼くひと」「最後のひと」に続いて、ネットで連載している「つがいを生きる」が実に面白い。あくまでも小説ではあるが、彼女が紡ぎ出す言葉のひとつひとつが、時代が望む「いい女」になりきれなかった、生きづらかった私には響く。


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