鎌倉の鯛焼屋さん

「同期の男性陣とはもう一生会えないかもしれないと思っていた…」
体調を崩して閉じこもりがちだったA子を中心に、鎌倉の鯛焼き屋さんに集合した。
この鯛焼き屋さんは、Bくんが停年前に選んだ第2の人生、住まいの調布市で始めたのはもう10年以上も前のことだ。その店をフランチャイズで人に任せ、息子夫婦と一緒に、新たに鎌倉にオープンして数年たつ。ここのところ頻繁にテレビ取材なども受けていて、わりと繁昌しているみたい。横浜でひとり暮らしのA子は、時々立ち寄って季節限定品を楽しんでいると言う。
店は小町通りの入り口近く、鎌倉好きの女性陣は、それぞれ個人的に何度も立ち寄っているのだが、遠くに住むCくんや、長い間腰痛やら胆石やらの持病をたくさん抱えているDくん、そもそも鎌倉に足を踏み入れたことがないという地方出身のEくんなどは、いつも「一度行ってみたい。でも、チャンスがない」と言っていた。「夫婦で鎌倉を歩くなんていいじゃないの」と水を向けても、「妻は行きたがらない」「妻はよくいくらしいけど」…、おじいさんは取り残されているのだろう。
会うのはA子とふたりだけでもいい、日にちと場所を決めて来られる人だけ集合~と声を掛けたら、一も二もなく集まった面々だ。もし店が混雑していたら、鯛焼きはお持ち帰りにして、どこかの店で…とあれこれ考えていたけれど、平日の午前中に鯛焼屋さんの店の奥にどんと座り込む人はあまりいない。開店と同時にじいさんとばあさんは、店中の粉もんをつまみに喋りまくった。小学生から、外国の観光客、さまざまなお客さんが入れ替わり立ち替わり…、大忙しのBくんは、店の奥に陣取ってああでもないこうでもないとしゃべっている我らと同じ歳にはみえない。
昼過ぎになると、地元で働く人たちがランチ休憩で店に入ってくるようになったので、お開きに。そのまま電車に乗って帰路についたDくん以外の4人は、だらだらと鶴岡八幡宮の階段の上まで歩いた。いつもの飲み会とは全く違う修学旅行の自由行動のようだった。

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