【質問箱回答】相場の決め方
こんなご質問を頂きました。
質問内容の整理
私と同じ、駆け出しのイラストレーターさんからのご質問。お知り合いからの依頼に関する値付けの相場に関して、どう決めれば良いのか、ということですが…
一応、まず「相場」について広辞苑検索で調べてみました。恐らく、ご質問の文脈上④の「世間一般に定まっている考えや評価。また、大体の見当」という意味の「相場」のことを指している、という前提で考えてみます。
「世間一般」…ものすごく広い言葉です。
ただ、ご質問者様はクライアント様のことを「知り合い」と表現されているので、ここで言う「世間一般」は恐らく「ある程度親しい人」の総称と捉えて差し支えないかな、と推察します。
ある程度親しい人からの依頼の、相場。
悩ましいですよね…
欲しい金額は言うべき
結論から言うと、これくらいの金額は欲しい、と言うのは正直に言ってしまった方が良いです。
もちろん、「知り合いでいつもお世話になっているから割引したい」と自分から思うのであれば値引きしても良いと思いますが、そうでないのなら、忖度して値引きする必要はありません。
駆け出しと言えど、趣味ではなく仕事として活動しているなら、なおのこと。依頼が一回くらいならまあ最悪値付けを少なく見積もってしまってもその場限りで終わりますが、もし低い価格で継続で来てしまうと、その分ずーっとこちらが損することになります。それだけは絶対に避けたほうが良いです…
基本的に値引きはしない。というスタンスでいた方が、後々トラブルに発展しにくいです。
それでもどうしても角が立つなあって時は、最終奥義「次会った時にご飯ご馳走してください作戦」をすることもあります(オススメはしませんが…)。
人は何に対してお金を払うか
自分の相場を考えるとき、いつも気にしてることがあります。(とある方に教えていただきました)
「人は、モノにお金を払わない。そのモノが自分に何をしてくれるか、にお金を払う」
「単価」という考え方そのものが、ちょっとズレてる気がしてなりません。クライアントが欲しているのは、実はイラストではなく、イラストによって実現する何か、です。「イラストでサイトを華やかにしたい」「分かりやすくしたい」「ブランディングしたい」…
クライアントの頭の中には、理想があります。その理想を達成することが求められているなら、お金も当然、「それを達成できる手段」にかかります。
相場の決め方
さて、上記を前提とした時に。
そのイラストによって、クライアントがどれくらい理想を達成できるか(利益を得られるのか)、を考える必要があります。
例えば、商品を10個売りたいクライアントがいるとして。イラストを使って宣伝することで、クライアントの商品が1つ売れる場合と、イラストを使って商品が100個売れる場合。
1つしか売れないなら、それを売るためのイラストにかけられるお金はそんなにありません。けれど、100個売れる、となったら、ちゃんとお金かけよう、ってなりますよね。
相手は自分のイラストでどれくらい利益を得ようとしているのか。それを実現するために自分のイラストはどれくらい貢献できるのか。
…を、考える必要があります。
なので正直、他の人がどんな価格帯でやってるかなんて、あんまり関係ないなあ、っていうのが私の現時点での相場に関する持論です(もちろん参考にはなりますが。
クライアント側は予算を出す基準として相場を考えることはあるとは思いますが、それはあくまでも依頼する側が考えることであって、こちらが無理して合わせるべきものではないはずです。
また、個人のお客様で、明確に「これくらい利益を出したい」という発想でない方の場合は、「イラストと似た効果を実現できる別の商品の値付け」を参考にすることもあります。
例えばアイコン作成なら、業者に頼む名刺の見積もりが結構参考になったりします。
アイコンは「自分が何者であるか」を表すためのものですよね。また、最近感じるのは「SNSを名刺がわりに使う人が増えたな」ということ。名刺を渡さずにSNSを交換する…
クライアントが、そのアイコンを用いたSNSを名刺とほぼ同じ機能を持つものとして使うのであれば、アイコンを含むそのSNSのページは、名刺の代替品として似ている価値を持っている、ということにります。
クライアントが「そのイラストで実現したいことは何か?」という視点で見ることが大事だなあ、と感じています。
自分のイラストにどれくらいの価値がある?
ただ、正直、自分ができる価値提供って、わかりにくいです。
なので、わからない時は時給プラス技術料、という計算で依頼を受けるしかないのもまた事実。私も現在、イラストでできる価値を説明ができるようになってきた部分から順に、値付けの方法を上記に切り替えていってる最中です。
でも、自分のイラストの価値なんてそう簡単に分からないよ…って感じですよね(書いてる私も模索中です…)…。
私が実践している「自分のイラストにある価値」を調べる方法として、「実績作りに安くしてよ」と依頼を持ちかけてくる方に協力していただきます。
以前は「実績作りにして良いから安くしてよ」というワードに対して「買い叩かれるのはやだ」と拒絶感がありましたが、実際のところは交渉次第で「自分のイラストでどれくらい価値提供ができるかのデータ」を集めることができるので、一概に悪い誘いとは言えません。
もしアイコンなら、「安くする代わりに、アナリティクスのデータを毎週スクショして1ヶ月分ください」みたいな感じで言えば、アイコンによってどれくらいフォロワー数が増えた、とかインプレッションが上がった、などの指標となるデータが集まります。それを次のクライアントとの交渉の際の材料にすれば、自分のイラストに見合った金額を請求する手助けにもなります。
実績作り、は単に納品した作品数やクライアントの数を増やすだけが狙いではなく、むしろ本質的には「自分の価値」を知るためのもの、と捉えています。
時給計算は最低価格
少し話題は変わりますが、ご質問の中に「時給」というワードが登場されました。
よく聞く方法で、「単価は時給のことを考えれば見えてくる」というのがありますが、個人的にはそれが適正価格であるかどうかは全くの別問題だと考えています。
時給計算するのは、あくまで「これ以下の金額になったら依頼そのものを断る」基準にしか考えていません。バイトの最低賃金と同じだと思っています。
確かに値付けの参考にはなりますが、だからと言ってそれをそのまま単価に反映させると、設定した時給によっては割りに合わない仕事になる可能性もあります。
最後に
と、いろいろ書きましたが…
こういう発想で値付けをしているため、私は料金表というものを作っていません。サイトにもないです。
頼む側から考えるとちょっと不便、と思われるかもしれませんが、私はむしろそれでも連絡してきてくださる方に寄り添いたい、と思っているので、ちょうど良いなあと感じています。
モノではなく提供できる価値を軸に考えられるように。クライアント様と自分がハッピーに、より最適な値付けができるように、精進しようと思います。
ご質問、ありがとうございました!
頑張って書いてみました!もし良ければサポートよろしくお願いします!