2022年、値段高騰でウイスキーが飲めなくなる日【前編】
当サイトではウイスキーの長期投資と「厳選したボトル収集」を推奨していましたが、2022年完全に状況が変わりました。
今後、数ヶ月から1年で異常なほどにウイスキーの値段が上がると予想します。いくつかその理由があります。
1.円安が継続した場合、レートが反映される
2.戦争による原油と穀物の高騰
3.コロナによる世界的な需要拡大
4.蒸留所のグループ会社化による味の影響
5.インターネットの情報共有化
6.中国市場がもたらすもの
特に6の中国市場は、私たちが想像する以上に影響が大きいことが判明しました。1〜5は無料記事、6は有料マガジンでお届けします。
非常に長い文章で【前編】【後編】に分けて解説していきますので、興味のある箇所からお読みいただいてもかまいません。私はイチ洋酒愛好家でありジャーナリストでもエコノミストでもありません。一部、解釈に誤りがあるかもしれませんのでご容赦ください。
今までのウイスキーの値上がりのメカニズム
さて、最初に”今までのウイスキーの値上がりメカニズム”について、おさらいしてみます。モノの値段は、常に需要と供給によって決定します。
需要が大きなモノでも供給量が十分にあれば値上がりしません。例えば「サントリー天然水」の原料は山で採れる水です。代替品も数多くあり、需要も大きいですが、供給量も膨大です。
そのため、過去20年を振り返っても天然水の値段は横ばいです。プラ原材料、運送コスト、消費税などによって10~20円ほど値上げされていますが100円の水が1,000円になることはありません。需要が大きなモノでも供給量が十分にあれば値上がりしません。
今までウイスキーは、緩やかに上昇していました。理由はいくつかありますが、「市場で人気が確立され需要増加した」ことと、「原材料や樽材などコスト増加した」ことが考えられます。
見落としがちですが、「味や風味がある」というのも影響しています。例えばサントリー角瓶は30年前の商品が中古で出てきても、二束三文しか価値がありませんが、山崎や白州は100倍以上の価格で取引されています。
これは、生産量が少ない「希少性」に加えて「昔の方が味が良かった」こと(後述)に起因します。同じようにマッカランのような海外蒸留所も味が良かった時代は、値上がりをしています。
現行の供給量が十分にあっても、過去のボトルが緩やかに値上がりを続けたのは上記のような理由によるものです。
2022年からの「値段高騰メカニズム」は全く異なる
最初におかしいなと思ったのは、マッカランが異常に値上がりした2015年ころからですが、ここ1~2年で際限なく値上がりを続けるウイスキーが出てきました。
はじめは軽井沢、羽生、イチローズモルト、山崎、白州、竹鶴、宮城峡、余市など国産ウイスキーが何倍、何十倍、ひどいと現在200倍近い値上がりをしています。
2008年にたった1万円で売られていたウイスキーが、200万円で売買されている事例もあります。今までは国産ウイスキーとマッカランだけでしたが、スコッチウイスキーでも、一部銘柄の品薄と値上がりが顕著になってきました。
去年まで私の考えはこうでした。「きっと日本と中国でちょっとしたブームが来ているだけで、数年すれば下火になり値下がりするでしょう」
今思えばコレは間違っています。今後、まだ手頃なウイスキーが続々値上がりを続け、ビットコインとアルトコインバブルのような状態になると予想します。
1.円安が継続した場合、レートが反映される
最初に触れておきたいのが現在の為替市場です。
寝る前に財布にあった一万円札が、朝起きて五千円になっていたら、どう思いますか?これに似た現象が起こっています。
去年103円だった米ドルが20年ぶりに126円になりましたが、このまま円安が続くとさえ予想されています。ドルに対して日本円が3割下がれば、100万円の貯金が70万円になるのと同義です。健全なインフレが発生して、高度経済成長期のように賃金も年々上昇、銀行利息も上がり続ければ焦ることはありません。
例を上げると、ゆうちょ定額貯金は昭和55年には年8%の利率に達していました。10年預け入れると複利で2倍に増額する計算になります。つまり円安でも実質的に財布の金額が増えるので、問題がないことになります。
ところが今の日本では8%どころか、0.002%です。100万円預け入れても年間の税引前利息が20円です。2,000万円預けて、やっと1回分のATM手数料をもらえるかどうかです。
物の値段が上がり続けてコスト・プッシュ・インフレが起きているのに、賃金も銀行金利も上がらないスタグフレーションの状態に陥っています。恥ずかしながら経済学者きどりで補足してみると、日本は石油や天然ガス、鉱物といった資源が乏しく、農業も弱く、製造業とサービス業頼りです。原料や半導体も輸入に依存している限り、製造業での円安のメリットを享受できない状況です。それだけでなく人手不足の移民により給料も下がり続けています。
経済低迷と給料に対して若者を中心に貧困化しています。エンジェル係数が増加しているレベルではなく、食料品、酒類、衣類、水道光熱費、通信費、サブスク、交通費、自動車、ガソリン、化粧品、生活用品、医療費、保険料、税金など思いつくだけでも上記のものが値上がりしています。
値上がりしていないのは、「日経平均株価」と「給料」「年金支給額」くらいです。
2.戦争による原油と穀物の高騰
円安だけでも輸入が厳しくなるのに、さらに今回の戦争による原油や穀物の高騰が影響してきます。幸いにも市場価格に”まだ反映”されていません。ガソリンは敏感でしたが、穀物は秋に収穫されるものが多いので、先物の価格が上がっても市場に反映されるまで時間差があります。
ウイスキーでいえば、国内在庫が入れ替わるタイミングや、今年の秋の収穫高が減った場合に船渡し価格が上昇して、それが国内価格にダメージを与えるはずです。ご存知の通り、ウイスキーに宇・露の小麦は使っていません。
それでも穀物価格が高騰すれば、確実に英国の二条大麦にも影響を及ぼします。コモディティの中でも農産物類の値段が、大麦の価格を間接的に釣り上げると予想できます。それだけでなく輸送コストも上がり、今までは空輸できたものが露迂回ルートを通ったり、船便の運送コストも上昇します。
アイルランドFarmersJournalによると穀物および飼料市場の供給価格は、昨年の基本収穫価格から約50%上昇しているようです。ウイスキーの直接的な言及はありませんが、隣のスコットランドも例年通りの価格とはいかないはずです。今年の大麦仕込み分を、出荷価格に転嫁する可能性があります。
もちろん過去に仕込んだ原酒にはお金はかかりませんが、今年仕込む分が値上がりするのなら、売却金額を上げてキャッシュを厚くすると考えるのが自然です。
3.コロナによる世界的な需要拡大
以前からウイスキーを飲んでいる人は、最近うすうす感じているのではないでしょうか?「あれ、なんかウイスキーの種類減っていない?」と。
ほんの5年前までは、全国ちょっとした酒屋に行けば、ウイスキーの熟成モノが勢揃いしていました。
例:シングルモルト・ウイスキー 10年、12年、18年、21年、30年
小さな酒屋では10年・12年、駐車場のあるような酒屋では18年・21年。
店主が洋酒好きであれば30年まで置いてありました。
地方でも在庫があったので、東京都内の酒販店では気持ち良いほどキレイに勢揃いしていました。同じブランドの銘柄が10種類以上も横並びになっていたのを覚えています。その時はそれが当たり前すぎて、写真が残っていなくてすみません。
今では銀座、新宿や池袋の大手酒販店に行っても18年以上の長期熟成ウイスキーが激減しています。なにしろグレンリベットさえ長期熟成が無いのです。マッカラン、グレンリベット、グレンフィディック、ボウモア、ラフロイグ、ラガヴーリン、カリラ、当時あれだけ豊富にあった在庫が消えてしまっています。
ウイスキーに強い酒屋さんで、今年の入荷状況について興味深いことを聞きました。「今年になってからメーカー在庫がなく、取れても入荷が少ない。注文してから半年以上もかかる。卸価格の値上げが早速見られる。」このようにぼやいていました。コロナによる世界的な需要増加で、長期熟成のウイスキーは激減して値上りが続いています。
ここ1ヶ月に発売したボトラーズウイスキーの年数と価格に注目してください。ややマイナーな蒸留所のなのに、12年熟成のウイスキーが3万円近くでリリースされている事例が数多くあります。アイランズモルトの7年モノが2万円近い価格設定です。どれだけ異常か分かるはずです。
10年前はどうだったかというと、12年モノのボトラーズは1万円切っているものが多く、7年モノなんて短期熟成はほとんどリリースされていませんでした!
ラガヴーリン16年が5,980円で、グレンドロナック21年は12,000円です。
4.蒸留所のグループ会社化による味の影響
世の中には大量生産によって品質が上がるものと、下がるものが存在します。例えばパソコン、スマホ、自動車なんかは量産するほど品質が上がります。大量生産で部品の単価が下がり、不良品情報が製品にフィードバックされます。例えばアイフォンを1台だけ製造するとなれば、ハードウェアとソフトウェアで1台の価格が何十億円を余裕で超えてしまいますが、大量生産するため1台10万円を切った価格で購入できます。
一方で大量生産すると品質が下がるものがあります。ウイスキーやワイン、日本酒、珈琲豆、茶、味噌、醤油、野菜や肉魚など農産物は基本的に大量生産で品質が下がります。農産物の「美味しい」とされるものは、養殖や人工ではない天然モノ、もしくは、小さな区画で丁寧に少量作られたものです。(続きは後半)
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2022年、値段高騰でウイスキーが飲めなくなる日【後編】
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2008年より趣味で『ウイスキー収集』を続けるうちに、ボトルの価値が100倍以上になるものが出てきて驚きました。そこで独自の手法で、ウイス…
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