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女武者に関するいくつかの感傷



これは先日発見した私の複雑な感情の話である。

1,
去年の夏,私が「平家物語」にだだハマった話は先述の記事であるが,
その中でも推しは木曾義仲である。
漢気が溢れ倒していて,野蛮で実直で何だかとても愛すべきキャラだ。
とりわけ,平家物語には歌や笛が得意で雅やかな男性たちを良しとする傾向がある中で
明らかに異質,明らかなマッチョ,明らかな野蛮人,木曾義仲が輝いて見えるのは必然であろう。

一番格好いいのは木曾義仲。
一番格好悪いのは平宗盛。

だって,木曾義仲ったら今法皇様に言い訳しないと死ぬ,って場面で
「院様に弁明することは…ないぜ」
って言って死地に向かうんだよ,超かっこいい‼︎

かっこいい源氏枠に義経をあげる人が多いが
平家物語の中ではけちょんけちょんにされているので
どうしたってかっこいいと思えない。
悪しからず。

2,
木曾義仲といえば,その妻の方が有名ではないだろうか。
いや,木曾義仲を知らないタイプの夫ちゃん(理系レトリバー)は当然その妻も知らなかったのだけれども。

木曾義仲の妻といえば,平安の女武者巴御前である。

みんな,知ってるよね,巴御前。
静御前とセットで語られがちだけど,
静は白拍子,今で言う芸者さん
巴は武者,お侍さん。

「鎌倉殿の13人」でも最後まで生き残って超かっこよかったですよね?

そんな巴御前,今見たら本当にかっこよくて
「あんなふうになりたい!!かっこいい!!」
と思えた。

これは,私にとって進歩である。

3,
いきなりだが,私はかつて巴御前だったことがある。
幼稚園の時,お遊戯会で私はなぜか巴御前だった。
確か年長さんの時のお遊戯会で,
それまで二年間,大きなお姉さんがお姫様のお芝居をするのを見てきた私は
年長さんになったらあのシフォンがジョウゼットでパフスリーブのお姫様か
あるいは,透き通る羽根にキラキラの衣装の妖精かができると信じていた。

そこに巴御前である。

この天性のロリータ,フリルとレースのカルマのある私が
巴御前。

祖父や母は喜んでくれたのだが,当の私は何だか不意打ちで地獄に連れて来られた位に絶望した。

何より年長さんのお遊戯会は卒園記念に写真を撮られる。
そこで,自分以外の同級生はシフォンやジョウゼットのドレスを着て
あるいは透き通った羽根をつけて写真を撮ってもらっているのに
自分だけ金襴の袴に白い着物,薙刀を手渡されるなんて,最悪もいいところだ。
全然嬉しくない。

気になってその写真を父に送ってもらったのだが
顔がめちゃくちゃ怒っている。
承服致しかねます,の顔をしている5歳の私。
その写真を見て,あの時の悔しさがみるみる蘇ってきた。

幼稚園のお遊戯会に女の子なら誰でもやりたいヨーロッパ風のお姫様と巴御前を同時開催させるのは,とてもよくない。
一生物の禍根になる。
ダメ,絶対だ。

どれくらい嫌だったかと言うと,これを書きながら涙ぐむレベルに嫌だったのだ。

現在そんなことになってる幼稚園さん,すぐに廃止してあげてください。

4,
しかし,そんな最悪な初対面な巴御前と今なら仲良くなれる気がする。

なるほど,上記の気の強さを見込んでの配役だったのかもしれない。
もしかすると幼稚園が代々上演してきた本命のお遊戯で
今思えば,他の姫様より断然布が良かったから私は選ばれし園児だったのかもしれない。

何より,巴,同担である。

ねぇ,巴,かっこいいよね,木曾義仲。
わかる,義仲になら命くらい安いよね。
義仲の一番かっこいいとこは巴を生き残らせたとこだよね。

巴、悪かったよ,ずっと嫌いでさ。

いや,でもやっぱどう考えても幼稚園の出し物で巴御前はやめてあげてほしい。

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