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作品紹介②「空間」

hitchです!

前回は作品について書きました。

2人の作家が如何に1枚の絵画を描くのか、についてでした。それは言わばキャンバスに対峙した、[作家+作家⇄作品]の関係です。作家が2人である事を除けば他の作家がやっている事と何も変わらないですね。

今回触れようとしているのはその制作環境[作家+作家⇄空間]についてです。

想像してください。美術館に飾られている作品を観て、その作家の制作環境について思いを巡らせることはあまり無いですよね。クリムトが女性を囲っていたアトリエや、ウォーホルのファクトリーにしても、それは作家の物語性を高めるエピソードです。思うに作品はそれが完成し、現出した時点でこの世界に生まれ、それまでの過程というのは「無」であり「透明」です。

それに比べ、ライブペイントに置ける制作環境というのは、イコール絵を観ている人達と同一空間内であり、もはや進行形のパフォーマンスです。多くのライブペイントはパフォーマンス的・即興的に描く事が多く、描く環境はクラブや屋内外のイベント会場が多いです。そこでは音楽が鳴っていたり、フードが出展していたり、もっと言えば風が強かったり陽射しがキツかったりと様々です。作家はそこでお客さんとコミュニケーションを取ったり、お酒を飲んだりしながら作品を作って行きます。つまり ーこれは僕の理解ですがー ライブペイントはその場その時間、その空間を紡いで編み上げる作業だとも言えます。

さて、ではここで僕たちWHOLE9の具体例を示しましょう。

上の写真は先日WHOLE9が主催したイベント"Sunny Side"での一幕です。"party with a live paint"をテーマに、音楽有り、フード有りでペインター同士が楽しく遊べるイベントで、毎年2回開催しています。今回はゲストペインターに"cab"さんをお呼びして、WHOLE9とセッション形式で描きました。(この他にもたくさんの写真を撮ってもらったのでぜひごらんください。photo by 木村華子)

ライブペイントをしていてよく尋ねられる質問の一つが「どこまで決めて描いてるの?」です。その質問の答えはズバリ「なんとなく」です。なんとも歯切れの悪い回答ですが、そんなものです。今回の例に関すればまず当日にタコを描くことにします。(そこは単純にインスピレーションなので、裸の女性のときもあれば雄叫びをあげるゴリラだったりもするし、意味はありません)後はcabさんも具象モチーフを描くので画面を左右に分け、抽象イメージとモチーフを絡ませながら1枚の絵になるようにもっていきます。制作環境としてはバンドの演奏が空気に色を乗せ、お客さんがワイワイと騒ぐ賑やかな空間です。そこは静寂とはほど遠く -脱線ですが、静寂厳粛なライブペイントとかもおもしろそうですよね。"観衆がしんと見守る中、画匠の筆が紙に触れる…!"みたいな- 喧噪の渦です。僕らを含めお酒を飲んでる人は多いし、会場は高揚感、一体感を帯びたひとつの場を形成しています。

つまりそこでの僕たちペインターの仕事は、そのムードをキープさせながら絵に注意を払わせるべく、"描き続ける事"です。それはもはや力技で、各々の画力(スキル)をフルに使って画面を埋めていく事でしか購えません。喧噪の中、作家は頭のどこかで冷静な自分を持っています。自分自身の静寂を頼りに外界の喧噪に対峙し、頭に描いた完成を目指して筆を進めていくだけです。だから後は何を描いたって、何杯飲んだって、いい絵を描きさえすればいいのです -と思っています-。もっとくだけた自分なりの言葉では"ヤバけりゃ何だっていい"ですね。

はい、今回は以上です。まとめると、ライブペイントは制作過程、その場・空間を含めたアートフォームです。お客さんを飽きさせない為には"ヤバい"絵を描くしかありません。僕らは外界の喧噪と自身の静寂を揺蕩いながら「わいわい騒げる」不可逆な時間芸術を創り出します。そんなに気負ってないですけどね。

以上!次回のSunnySideはぜひお客さんとして、遊びに来て下さい!^^


#マチネの終わりに

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