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映画記録 オッペンハイマー

3月29日、ついに日本でオッペンハイマーが上映されたので観てきた。公開時の現地版トレイラーを何度も見ていたし、日本公開の決まった夏からずっっと楽しみにしていた作品である。私は夕方の回で、いつもと違う、スーツ姿のオトナたちに混じった。目前のエグゼクティブシートの人たちは学割の私の3人分を賄ってくれていると考えると私たちを取り囲む映画体験とはなんだか感慨深いと思った。
私は小学生の頃に地下鉄サリン事件や広島長崎について新聞などのメディア媒体から見て、あまり詳しく書かれない事象についてごく普通の知的好奇心を持ち、本で知識をつけていたことを思い出した。王道のはだしのゲンを読んだり、貸し出しのできない鈍器のように重厚な写真集を見たり、オウム関連事件を研究している人の著作を片っ端から読んだりした。広島長崎について一番心に残っているのは、ナショナルジオグラフィック無料放送の時に録画してあったアメリカ軍の撮影した当時の映像だ。アメリカ側の映像や証言にフォーカスを当てているものは目にしたことがなかったので新しくそれは衝撃だった。
映画は理論物理学者オッペンハイマーとマンハッタン計画の経緯と関係を描いた大作だ。監督の得意な、様々な心情と時間を絡めた映画の構成は失われておらず、過去作品よりももっと音響の生み出す環境に気を遣っているように感じた。
日本公開を受けて日本人の意見を見て思ったが、果たして過去の事実というか現実を見せることは進展につながるのか、自国で反戦運動が活発になり平和主義者を増やせば核の悲劇が再び起こることはないのだろうかということだ。結局自分中心の人生を多くの個人が歩んでいるので見ることが変化に話ならないと思う。これは見ることから感じ取る物語。
そして科学者としてプロジェクトのリーダーであった彼の物語。被爆国としての私たちは今、何に対して憎悪を抱くのだろうか。科学に対して?科学者に対して?トルーマン大統領に対して?原爆を落とした戦闘機エノラ・ゲイに乗っていた軍人に対して?それとも戦争に対して? 戦争について私の持っている基本の考えとして、やった方は忘れてもやられた方は忘れないということ。この基本がわからないと議論も理解もできないと思う。
公開は遅かったものの、美しい日本語字幕と公式サイトの本当に各界の著名人コメントもこの作品に適切だと思った。
この作品の日本版ポスターにはこのように書かれている、

この男が世界を変えてしまった 第二次世界大戦下、世界の運命を握った天才科学者の栄光と没落 

本国版ポスターにはこう書かれている、

THE WORLD FOREVER CHANGES

'やられた方'である私たち 私はぜひそれぞれの目で劇場で見て、より多くの人に感じ取ることを体験してほしいと思った。

 


以下ネタバレを含む感想など
ダンダンダンと転機の象徴として流れる音。あれは会場の群衆の足音なのか、それとも爆弾がトラックで運ばれる時のチェーンが当たる音なのかどちらにも取れたので面白い
アインシュタイン役がトムコンティということで戦場のメリークリスマス大好き私久しぶりの姿に感動 最近のインタビューで監督が映画の名前を出していて嬉しかった。
見れば見るほど我は死なりのオッペンハイマーの姿に近づいで行くのがわかっていく映り方でよかった。

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