城崎温泉での初出勤日の流れ【午前編】【#2】

リゾートバイトの初出勤日の流れは普通のアルバイトなどとほとんど変わらない。事前に更衣室やタイムカードなどの場所を教えてもらっていれば出勤して着替えてタイムカードを切り、先輩にあいさつしてやることを教えてもらえばいいだけだ。

僕は旅館の調理場で裏方として働く中番(なかばん)という職種だったこともあり、朝6時出勤だった。更衣室で制服に着替え、5:50には調理場に着いた。僕以外に誰もおらず電気もついていなかったので、とりあえず待っていたら6時ぎりぎりになって180㎝以上ある細身の若い男の人が現れた。

「派遣スタッフのAtsushiです。よろしくお願いいたします」とあいさつした。リゾートバイトの初日のあいさつは他のアルバイトと同じく、同じ部署の先輩や上司にはこんな感じでしておくとよい。普通は現場の社員や上司には新しいスタッフが来ることは伝わっているはずである。

社員の若い人はろくに自分の名前も教えてくれず、「全部のお盆の右上にこの料理を置いて行って」と適当な教え方をした。

僕は右も左もわからない新人にろくに仕事の説明をしない先輩はアホだと思っている。新人には早く仕事を教えた方が自分が楽になるのに、それをしない理由はないからだ。


その後も若い社員は「あーそこは滞在やから置かんでいいねん」などと新人の僕にはわけのわからない言葉を使ってきた。僕は「知らんがな。説明してくれ」としか思わなかった。僕は自分が今している仕事は何で、何のためにしているのかもわからずにただ言われたとおりにしていた。


中番というのはおそらく旅館にしかない職種で、かんたんに言えば調理師が盛り付けた料理を冷蔵庫などで保管し、仲居がいる各部屋の前まで運ぶ仕事だった。例えば、調理師がすべての料理を保管して各部屋ごとに別けるのは効率が悪すぎるので、調理場と各部屋の間で料理や小物などを運ぶ専用の係として中番がいるわけである。

料理を運ぶのは部屋の中ではなく部屋の前までで仲居に渡すだけなので、中番がお客さんの前に出て接客することはない。

料理を運ぶ以外にも皿を管理して盛り付けが始まる前にお客さんの数だけお盆に皿を並べて調理師が盛り付けしやすいようにしたり、旅館の懐石料理には欠かせないコンロや固形燃料、各種調味料など細かいものの用意もする。

中番の仕事内容は旅館によって異なり、調理場の手伝いとして簡単な盛り付けなどをすることもあれば、洗い場と中番が一緒になっている旅館であれば洗い場に入ることもある。中番の仕事内容については別の記事で詳しく書くつもりだ。


あとから詳しくわかったことだが、僕が最初にしていたのは朝食の準備で、前日の夜にすでに盛り付けておいたイカそうめんやら温泉卵などをお盆に乗せる仕事だった。

そうこうしていると昨日会った主任のOさんや50代ぐらいのおじさんが出勤してきた。50代のおじさんはTさんといい、社員のWさんやOさんが来ている作務衣(さむえ)ではなく僕と同じ白衣だったので、社員ではなくアルバイトらしかった。

TさんはWさんと違い丁寧に仕事を教えてくれる人だったので、僕はTさんに教えられながら各部屋ごとに"おひつ"に分けた白ご飯や寸胴(ずんどう)に入った味噌汁を各パントリー(=食器室。仲居が料理の準備などをする場所)に運んだりした。

ここの旅館は小規模なのだが、建て増しを繰り返してだんだん大きくなっていったらしく、廊下は一本道に見えて意外とややこしかった。二階建てで階段が2つあり、奥には宴会場があるなど複雑なつくりだった。


7時頃に各部屋の朝食をわけ終えたらすぐにその日の夕食のお皿や、次の日の朝食のコンロの準備などをした。途中で宴会場の朝食が終われば宴会場に行って御膳を拭いたりした。

旅館の調理場や仲居、中番はお客さんが朝食と夕食を食べるときに働くのが基本である。そのため、「中抜けシフト」と呼ばれる朝3~5時間、夕方から夜にかけて4~6時間働くのが一般的である。

この城崎温泉の旅館でも中番の朝の仕事は早くて10:30、遅くて11:30に終わるのが普通だった。朝の仕事が終われば調理場のすぐ隣にある従業員食堂でお昼ご飯を食べた。僕のように派遣会社を通したリゾートバイトスタッフは無料で食べられる。

お昼ご飯を食べ終わったら着替えて寮に戻り、午後の15時出勤までは自由時間である。僕は朝5時に起きていたので、昼寝することにした。


【おまけ】

中番の細かい仕事内容について書きすぎたため、経験者以外の人にとってはわかりずらかったかもしれません。

(つづく)

Atsushi

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