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俳句の鑑賞⑫


裸木の貨車の響きに手を置けり

村上鞆彦句集「遅日の岸」P.22

季語:裸木(三冬・植物)

葉をすっかりと落とした裸の木々。それらが、単線の線路際に植わっている景が浮かびます。その線路を、貨車が通ります。その振動を、木を通して感じ取ることができたのです。

自然に囲まれた人々の暮らし。その中を通る単線の貨車。
手を置けり、という下五の措辞に、木への、そして、多くの荷を運んでいる貨車への優しい心が感じられます。
自然と人の生活の共存、大切であります。

私自身、木肌を触り、目を閉じ、その木の声を聞こうとすることがあります。共感の御句であります。


初蝶やネクタイ固く職を欲る

村上鞆彦句集「遅日の岸」P.25

季語:初蝶(初春・動物)

初蝶、その春に初めて見かける蝶のこと。蝶の方としては、立派な蝶のつもりなのでしょうが、こちらとしては、つい、初々しさ、たどたどしさを感じてしまいます。

一方で、ネクタイを固く結び、職を「欲る」男性。就職試験の面接でしょうか。かなりの決意が感じられます。
ですが、初蝶のイメージがつきまとい、「頑張れ!」とエールを送りたくなりました。


峰雲や応援ときに嘆きの声

津川絵理子句集「夜の水平線」P.30

季語:峰雲(三夏・天文)

甲子園、あるいは、その予選大会を思いました。
みごとな峰雲がそびえる大空。その下で、懸命に試合をする球児たちと、そして、同じく懸命な応援団。
嬉しい叫びもあれば、嗚呼残念という嘆きの声もあることでしょう。
ザ・青春!な御句であります。


麻服をくしやくしやにして初対面

津川絵理子句集「夜の水平線」P.31

季語:麻服(三夏・生活)

麻は、とても爽やかで、見た目も上品ですが、扱いがとても難しい素材です。よほど気を付けていないと、すぐ皺になってしまいます。
そんな麻の素材の服を、やはりくしゃくしゃにしてしまった主人公。しかも、相手の方とは初対面。
ああ、、、頑張って麻を選んだのに、残念。

村上主宰の、初蝶の御句と同じく、とても初々しさを感じた私でありました。


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「南風」村上主宰と津川顧問句集の「俳句鑑賞」の経緯はこちらの記事に。
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