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春ピリカグランプリ応募作品

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2023年・春ピリカグランプリ応募作品マガジンです。
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#恋愛小説が好き

貸し出し中?いえいえ、予約中です。(小説)

中学の卒業式の日。進学をきっかけに好きな人と離れることになり、私は告白をしようとした。けど待ち伏せた場所に彼は来なかった。公園でベンチに座って俯いていると、ランドセルを背負った男の子が目の前に立った。 「みーちゃん大丈夫?お兄ちゃんが何かした?」 「ゆうくん」 思わず私は苦笑する。 「かなとに会えなかった」 「うちに来ればいいじゃん」 「それじゃ意味がないっていうか」 「何それ」 ゆうくんはかなとの弟だ。そして私がかなとのことを好きだということをいち早く見抜いた。バレ

『その指に恋をして』 #春ピリカ応募

「私、今日の帰り柊ちゃんに告白する」  唐突な私の宣言に、教室で一緒に昼食を食べていた友人たちは好物のおかずもそっちのけで身を乗り出した。 「萌音、ついに柊哉先輩のこと好きって認めたね!」  「うちらが幾ら好きだね~って言っても頑なに抵抗してたのに!」 「『私は柊ちゃんの指が! 好きなの!』」  友人たちが声を揃えていつもの私の台詞を真似てみせる。 「ゆ・び・が!」と強調するところまで忠実だ。 「あんた柊哉先輩の指が好きすぎて、2,3年の先輩にソロ譲ってくれって頭下げ

指を食べる | 春ピリカ応募

「ぼくの指を、食べてみないか」 おどけた口調で恋人に指を差し出されて、軽く眉をひそめた。 「わたし、別にお腹減ってないよ?」 そう断ったものの、彼は差し出した指をそっとわたしの顔に滑らせて、にゅっと口のなかに入れてきた。 「おやつにぴったりだと思うんだけどなぁ。そのうち、もとに戻るしさ」 たしかに指くらいなら、一週間あればもとに戻るだろう。 子どものころに石に挟んで指を失ったときはこの世の終わりかと思ったけれど、そのあと指は何食わぬ顔でしれっと生えてきた。 とはいえ、