【ショートショート】ハートのジャック
「本当に綺麗な指だね」
そう言いたいのをぐっとこらえて、薫は目の前に集中する。落ち着いた雰囲気でも、ダイニングレストランは賑わっていた。
「…では、この中から好きなカードを1枚引いて下さい」
薫は、迷うことなく真ん中のカードを引いて渡す。
「はい、あなたが選んだカードはハートのジャックですね?」
「はい」
「では、このカードに魔法をかけます!」
佐藤君は、カードを裏返し大げさに念力を込める。
「ではカードを裏返してください」
薫がカードを裏返すと、カードはスペードの9に変わ