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夏ピリカグランプリ応募作品(全138作品)

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2022年・夏ピリカグランプリ応募作品マガジンです。 (募集締め切りましたので、作品順序をマガジン収録順へと変更いたしました)
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#ピリカグランプリ

「子供の瞳の輝きの由来」#夏ピリカ応募作

 鏡原は太古より鏡が捨てられた土地の名である。捨てられた鏡同士は繋がり、交接し、増殖した。  鏡の製法は大別すると三種類ある。硝酸銀を用いた化学反応により作る現行方式。青銅を研磨して銅鏡とした古代のやり方。生物の瞳と聖水と魔術により作られる錬鏡術と呼ばれる製法は、術師がいなくなったために廃れてしまった。  錬鏡術の失敗作の廃棄場所、それが鏡原の起源である。生物要素が強すぎて人の手に負えなくなった鏡が、映した者を取り込んでしまったり、自ら動き回って子孫を残したりするようにな

鏡の中のバディ【夏ピリカグランプリ】

 「あー、もっと可愛くなりたいよー。どうすりゃいいのかな」  ひなたは手鏡を片手にソファにごろんと転がった。お風呂上がりのスキンケアもそこそこに、ひなたは鏡の中の自分の顔を見ながら独り言を言った。すると、どこからともなく声が聞こえてきた。  「お前、何言ってんの?自分で自分を可愛いって思わないでどーすんの?」  ひなたは飛び上がって周りを見渡した。だけど、当然ここには自分一人しかいない。怯えるひなたにはお構いなしに、また声が聞こえた。  「ひなた、ここだよ。鏡の中だよ

【企画参加】 ともだち ~ 夏ピリカ

夫に先立たれて10年、1人の生活は寂しくないわけではないが住み慣れた家は居心地が良い。 一人娘のさとみは、毎日電話をかけてくれるし、時々帰ってきてくれる。 老いては子に従えと言うから、娘が言う事には「はい、はい」と聞くようにしている。 そのさとみが『そろそろウチで一緒に暮らさない?』と言ってくれるけど、まだ1人で大丈夫だからと断っていた。 いつの間にか83才にもなっているのだから心配するのも当たり前ではある。 ◇ そんなある日のこと 迂闊にも私は庭で転んでしまった。