太陽と月のエチュード|夏ピリカグランプリ応募作|
『ハルのピアノが大好きよ。私はいつだってあなたの一番のファンなんだから』
鏡の中でハルに顔を寄せ、お母さんは笑った。肩を抱いてくれた手のひらが、じんわりと温かかった。
念願の音楽大学に合格した日、お母さんは飲酒運転の車にはねられて死んだ。
鏡に映った自分の泣き顔を、ハルは力任せに叩き割った。
以来、ハルのピアノから感情が消えた。
音大生となったハルは、機械になったようにピアノを弾いた。無表情で次々と難曲を弾きこなす姿は、他の学生たちを遠ざけた。
試験が迫った日