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気ままなドライブの道標

 会津の地に拠点をおいて、かなりの月日が経ちました。少し車で移動すれば、磐梯山や飯豊連峰、尾瀬など豊かな自然が私を迎え入れてくれます。東西南北、どちらに向かっても変化に富んだ美しい光景が広がり、北海道で生まれた私にとって、自然の美しさを感じることが何よりも嬉しいのです。天に向かって、「空を自由に飛びまわりたい」と願うけれど未だ叶わず、自然を切り開いた道路を車で走ることしかできません。でもこんな所にまで?と思う場所にも道が造られ、思いもしない驚きや感動を与えてくれたりします。建設に携わった方々の技術と努力に感謝しかありません。
 少し前のことですが、飯豊連峰の山々のエネルギーをもっと近くで感じたいと思い、車を走らせました。観光ガイドや道路詳細地図を頼りに計画を立てれば、時間的なロスを無くすことができるのでしょうが、敢えてその方法は採りません。目的の山々を目視で捉え、そこへ近づくルートを直感で選ぶのです。知っているルートはスムーズに移動できますが、知らない道に入るとそう上手くはいきません。山々が遠くにあるときは、どちらに進めばよいかが簡単にわかりますが、近づくにつれて、その山が見えなくなるのです。どこにいるのか、全くわからなくなることもあります。そんな時は、知らない地名の案内板から次のルートを直感で決め、進んでいくのです。残念ながら、1回目のチャレンジは失敗に終わりました。西側へ大きくそれ、新潟県津川の国道49号線に抜けました。でも面白いもので、収穫もありました。宮古そばを堪能、飯豊連邦の絶景ポイントを発見、そして、新潟から帰宅するときの新ルートの開拓です。なかなかの収穫だと思いませんか?
 後日、再チャレンジです。今回は、西へそれた原因と思われる分岐点で、別なルートを選択しました。思った通り、目的の山々が大きく見えてきます。何処がベストなのかを直感を頼りに進んでいきます。近づきすぎると見失うことがわかっているからです。そして、「ここだ!」というポイントで車を停め、目の前に広がる飯豊連峰の雄大さを体中で感じ取りました。自然から届くエネルギーは圧倒的です。なんと氣持ちの良いことか。日常生活で生じるモヤモヤした気分などは、一瞬で吹き飛んでしまいます。どうして此処を目指したのか、ハッキリとわかった気がしました。晴れ晴れとした気分で車に乗り込むと、また直感が降りてきました。「この道は何処へ続くのだろう」と。引き返すことをやめ、いざ出発!初めて通る道ですが、ワクワク感は止まりません。道は狭くなり、行き止まりになるのかなと思いながらも、「いや、行ける!」と直感を信じて登リ続けました。もうすぐ峠だなと思ったとき、山と山を結ぶ比較的大きな橋が見えました。此処に大きな橋をかけるのは大変だったろうなと思いながら、橋の中央で車を停めました。橋から見下ろす風景は、自分が鳥になったかのようです。そして自分が今、飯豊連峰の中にいることを実感したのです。そうであれば、峠を越えられるはず。どんな峠が待っているのか、期待を膨らませてワインディングロードをイメージしていました。しかし、あるカーブを曲がったとき、予想を裏切る光景が目の前に出現しました。「トンネル」です。こんな便利なものが、この山道にあるとは・・・複雑な気持ちでトンネルに入りました。しばらく進むと山形県飯豊町の標識が見え、山脈を抜けたことが実感できました。一服しようと思って車を降り、ふと振り返ると、そこには、山形県から望む雄大な飯豊連峰がそびえているではないですか。飯豊連峰の絶景をダブルで楽しめるとは、何という幸運なのでしょうか。道端にひっそりと咲いている花でさえ、輝いて見える。「世界は僕のためにある」そう感じた瞬間でした。
 気ままなドライブは、実に楽しいものです。みなさんもいかがですか?でも夜間は十分に注意して下さい。山道に迷い込むと大変なことになります。自分が何処にいて、どう進めば良いのか分からなくなり、不安が襲いかかってきます。暗闇はもっと不安を煽ります。そんな時は、次のことを覚えておいて下さい。「消えゆく光は追わず。ただ光ある方向へ進む」人生と同じですね。

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