HYDE LIVE 2022 RUMBLE FISH 7月3日 ZEPP FUKUOKA (VS THE ORAL CIGARETTES)
2019年11月26日 ZEPP名古屋
この日、ジャパニーズロックのダークホースと世界を魅了しようと目論む日本を代表するカリスマロックスターが激突した
伝説的でいて感動的な一夜は人々の記憶に強く刻まれ、再び相見える日はそう遠くはないと確信していた
しかし誰もが予想だにしなかった未曾有の事態が世界を混沌へと変えてしまい
最早アーティスト、ライブハウスの存続すら危ぶまれる時代へと突入した
………あれから約2年半、彼らは生き続けていた
いや、それどころか進化し続けていたのだ
HYDE、L'Arc〜en〜Cielのvocalであるhydeと同一人物でありながらその音楽性は異なる
まるでジキルとハイドの二面性を持つような静と動の音楽を創造し
動にあたる今回のHYDEはカオスな空間を場所を問わず作り出すモンスターだ
そんなHYDEが約3年ぶりに開催したツアーは、HYDEでは初の対バンツアーだった
ロックフェス常連の面子や、若き才能に溢れる新世代バンドをゲストに全国のライブハウスを巡る
7月3日、この日はZEPP福岡でTHE ORAL CIGARETTESを招いての開催となる
THE ORAL CIGARETTES、通称オーラルは
BKW、番狂わせを掲げて数多の対バンやフェスを潜り抜け成長し
独自の世界観を創造し、今や国内ロックバンドトップクラスの人気を誇ると言っても過言では無いダークホースだ
それこそL'Arc〜en〜Cielに魅了され音楽を始めるような世代の彼ら
実際特にvocalの山中拓也は大いに影響されたアーティストの1人だ
そんな彼らがこの福岡の地で再び激突する
SEと共に幕が開かれると
既にそこにはメンバーが位置に付きフロアを挑発する
「福岡みんなの手を貸して頂戴‼︎ 分からん人は周り見て、分かる人は盛大に‼︎」
「1本打って‼︎ただいまより2本打って‼︎THE ORAL CIGARETTESによる3本打って‼︎」
「神に仕える二日目………ふふっw………庶民vs神………の巻を4本打って‼︎」
「始めたいと思います‼︎よろしくどうぞ‼︎」
開幕先手必勝とDream In Driveでスタート
4人の演奏が炸裂、オーラル流のロックなサウンドが高揚感を誘いキャッチーなサビで一気に惹き込まれる
更に続けてMACHINEGUNでスピードアップ
耳に残るギターフレーズや怪しげなメロディーに彼らの真髄が詰め込まれているようだ
早くもBKWの気迫を感じるスタートダッシュだった
「福岡2日目、今日もお招き頂きありがとうございます………ところで………それ何なん?www」
Ba.のアキラの服装がピンクで更にパリピな眼鏡を掛けてることを指摘
あきら「この眼鏡を外さずにライブやり切ったら5千円くれるって言うからw」
山中「え、何オネェなん?www」
あきら「あ、あぁ〜そーゆーこと言っちゃいけないんだぁ〜」
メンバーと戯れ合うくらいリラックスしているようだ逆に緊張の証かもしれないが
「このツアー、俺らの仲間達が沢山誘われてます。そん中でも俺らのライブが1番ヤバかったって‼︎福岡が1番だったって言わせます‼︎」
自身のワンマン以外では珍しいショートチューン、Tonight the silence kills me with your fire
タイトルがそのままサビの歌詞という声さえ出せたら更に進化が予見される楽曲既にフロアを興奮させるには充分な破壊力はあるようだ
さらに新曲の ENEMYへと繋ぐ
オーラルの新境地HIPHOPの要素を盛り込んだ曲でフロアを揺らす
静寂の後始まったのはレアなナンバー、僕は夢を見る(Redone)
前回の対バンでも『夢を見てるみたい』と演奏されたこの曲未だにやはりHYDEとの対バンは彼らにとって夢そのものなのだろう
「あの………こないだご飯行ってwww」
さっきまでの雰囲気をぶった切ってMCへ
「『夜空いてる?』ってお誘い頂いて………即『空いてます‼︎』ってwww 俺髪ね、撮影で染めたんですよ。ほんで(HYDEさん)俺のインスタとかもチェックしてくれはってるからね………ずっと黒髪やったからw そのお店に行った時にHYDEさんびっくりしてw『どこの輩が来たかと思った‼︎』ってwww ほんで隣に座ったら座ったで『似合うやん、かっこいいやん‼︎』って………もう……フゥ〜〜wwwフゥ〜www」
「さっきも言いましたが今回のツアーは俺らの仲間が沢山ゲストに呼ばれてます。ロットンにcoldrain、Dragon Ash、そして俺ら。先輩達でも緊張したりガチガチだったと聞いて、やっぱりHYDEさんが音楽シーンを創り上げて引っ張ってきたんやなって実感しました」
「でもいつまでもHYDEさんに頼ってばかりじゃ……それも違うと思うんで。俺らは俺らで新しいロックシーンを、ライブハウスやフェス、色んな場所で創っていきます。と言う訳でこっから後半戦、ブチ上げていきますがよろしいでしょうか⁉︎ HYDEさんにバトンを渡す頃には、全員足パンパンになるまでやりたいと思いますが行けますか⁉︎⁉︎ みんな見えてますから、HYDEさんのファンもサボってたら睨みますよw 全員で行こう‼︎」
ここから所謂キラーチューン祭りの始まりだ
まずはカンタンナコトでジャンプとヘッドバンキングを乱立どちらのファンとか関係無く一体感が高まってきたところで
「まだまだこんなもんじゃないでしょ⁉︎」
間髪入れず彼らの代表曲狂乱 Hey kids!!へとなだれ込む
宣言通りここで足をパンパンにされてしまいそうだセーブしようにもオーラルのキラーチューンはドラムもベースもギターも全て体が自然に踊り出してしまうようなフレーズばかりだ
もう選択肢は足がパンパンになるまで踊り狂うしか無い
そんなフロアを見て満足気に「福岡よくできました‼︎」と讃えたかと思うと休む間もなく疾走感満載のイントロが始まる
BLACK MEMORY、HYDEも評価するオーラル渾身のロックナンバー
スモークの演出も加わり盛り上がりはピークへ
コーラスも声を出せない代わりに拳で応えるフロアそれが逆に誰が見てもロックバンドの激しいライブと疑わないような熱い光景となった
キラーチューン祭りを締めると山中が語る
「HYDEさんに、L'Arc〜en〜Cielに憧れてバンドを始めて、ずっと夢を願い続いて、色んな人に言葉に出して伝えて、結果……皆さんが今日ここに僕達を連れて来てくれました」
「みんなもあるやろ?夢やなりたい自分………ずっとその理想や夢を追い続けて欲しいなと思ってます。」
「1人じゃないよ」と今日ラストに届けられたのはLOVE
タイトルの通り憧れの相手やファンの人達への愛と
1人じゃなくみんなで踏ん張っていこうと言うメッセージが込められていた
人の心、その闇の部分に寄り添ってきた彼らだからこそのある意味ラブソングだ
その優しさは両ファンの心を暖かくした
「幸せな時間をありがとうございました‼︎」
深々と頭を下げるメンバーとフロアから鳴り止まない拍手
ワンマンライブのエンディングかのようにその時間はしばらく続いた
限られた時間でこの場を掌握した彼らは
まさに番狂わせと言う愛情表現でHYDEにバトンを渡した
暗転と共に不穏なSEが流れ出す
不思議とそこに恐怖は無く、むしろ歓喜と幸福感すら抱いてしまう
なにせあのHYDEが帰ってきたのだ
2019年、アルバムANTIを引っ下げて国内外問わず勢力的にツアーを回り
その終着点が幕張メッセでファンと共に創り上げた圧倒的なカオスだった
しかし、あの頃のライブは一瞬で奪われた
その後配信と二階席のみ有観客で行われたANTIの外伝とも呼べる単発ライブのラストでは、絶命したかのようなパフォーマンスを繰り広げ感動と衝撃を受けた
もうこのHYDEと言うプロジェクトが物語を紡ぐ事は無いかもしれないと
そんな不安を抱えながら日々を過ごしていたが遂にあの日からまた物語が動き出す
幕が開くといかにも悪そうな4人のマスクマンを従えて、センターには仮面を装着したHYDEが佇む
そして待ち焦がれたHYDEのライブがFAKE DIVINEで怪しげにスタートした
オープニングナンバーとしても数々のライブでチョイスされてきたお馴染みの楽曲だからこそたった1曲であの頃を全員が思い出す
それはアッパーに表情を変えるサビで煽られるまでも無く飛び跳ねるフロアの熱量で確信した
早くも曲が終わると仮面を外し高らかに天へ突き上げる
言わばリミッターのような役割も兼ねてるとも推測される仮面をいきなり外した事で
『今日は容赦しない』と宣言してるようにも見えた
そしてマイクスタンドと一体になった旗を担ぎ、ヘヴィなサウンドがたまらないLET IT OUTで内臓ごと揺らす
既にヘッドバンキングも沸き起こる程温まったフロア
HYDEだからこそ成立する攻撃的でもあり美しくもあるサビで心も体も支配されてしまった
「Are you fuckin Ready!?⁉︎⁉︎」
更にAFTER LIGHTで追撃
モッシュが自然発生しかねない程のアッパーチューンだがそこはルールを厳守
その場で体をフル活用して盛り上がる
コーラスをハミングで行うと言う独自のノリで楽しませ、たった3曲でカオスを復活させた
「ランブルフィッシュへようこそ福岡‼︎ このランブルフィッシュってのはね……一匹だと優雅に泳ぐんですが……二匹になった途端に縄張り争いを……喧嘩するんですよ」
「負けちゃいられねぇなぁ福岡⁉︎」
有観客ではアコースティックやオーケストラアレンジのみでしか披露されてなかったDEFEATが遂に本性を表した
重厚感あるラウドでありながら映画の主題歌のようにキャッチーになったかと思えばサビは疾走感が心地よい
続くThe Abyssはまだ未発表の新曲
HYDEのオーケストラツアーで既に披露はされていたが、こちらのライブにも深い闇の中で叫んでるかのような雰囲気がマッチしていた
そしてその闇の中から光が刺すようにBELIEVING IN MYSELFへ
ここまでほぼ未発表も含めた新曲で構築され、HYDEの新たな展開を楽しむ事ができた
「先程オーラルを見てましたがいやぁ〜お見事……お見事でしたねぇ……………自分のライブの直前にあんなステージを見れられるとね………僕Mなんかなぁw うわぁ〜すごぉ〜い……が、がんばろぉ〜///ってなるんですよw」
「それだけでもね、もうこのツアーはやって大正解だったなと‼︎ 自分だけだと井の中の蛙になりますからね……俺かっけぇってw」
「昨日ね……軽く打ち上げしまして……見事にノンアルコール組と飲んべぇ組で分かれましてねwww ふふっwww 『明日声が出なくなるかもしれないんで』ってwww ほぇ〜そうなんだぁ〜あぁ……そう言う………すみませぇんwwwってなりましたねwww」
「あと奈良県の事を随分とアピールされました……美味しいラーメン屋さんだとか……家に来て下さいとか……非常に興味深い奈良県のお話をして貰いましたwww………さぁさぁw次の曲行きましょうかね‼︎w」
ここから後半戦、緩やかなMCから一瞬で再び攻撃的なモードへ切り替わる
「あ〜それにしても⁉︎ 飲食店とかではもうお酒飲んで大騒ぎしてるのに⁉︎ 僕らはまだまだこんな状態ですが……僕達の事忘れちゃいませんかねぇ?いつどうなったら元に戻していいのかお教え願いたい‼︎ ………でも今はアレこれ言ってもしょうがないので……俺たちは新しいモノ掴みに行こうぜ‼︎ よーく見たら……前よりスペースがいい感じに空いてるじゃあありませんか……やれるよな?俺たちならやれるよな⁉︎あーゆー」
「MAD QUALIA‼︎」
狂気が更に解放される、ここからはHYDE流のキラーチューン祭りだ
開幕ヘッドバンキングからテンションは常にフルボルテージの必殺技のような曲だ
数年ぶりだろうが体に染み付いてるファンはカオスと言う名の一体感で応える
「福岡ちゃん‼︎気持ちは受け取った‼︎ 次は態度で示してくれ‼︎ 楽しみだなぁ〜‼︎ 今日イチのすげぇヤツが見れるんでしょ⁉︎」
ステージ端のスピーカーによじ登り端の方まで煽り倒すと更にカオスは歯止めが効かなくなる
汗だくでテンションのリミッターが壊れたフロアに警報音が鳴り響き拡声器でラップとくればSICKだ
ルールを守りつつも無秩序で一体感は保たれてると言う言葉にすると意味が分からない状態が続く
頭を振る者、拳を上げる者、クラップで煽る者
様々なノリ方があるのに全て妙にハマっているのだ
先程とは反対側のスピーカーへよじ登り拡声器越しに叫ぶHYDE自身が1番カオスだが
「そういや、オーラルでもう足パンパンなんでしょ? 休憩しようか、ちょっと座ろうか?」
「あぁ〜いい子ちゃん達………今のうちに水分取ってね〜?もう休憩無いからね〜?」
「スリー、ツー、ワンでジャンプするよ?いい?スリーってのはー……3の事ね?ツーはー……チュウの事♪」
「ワーン……トゥー……ワァーン、トゥー、3‼︎2‼︎1‼︎カモン‼︎」
キュートなレクチャーからHYDEの合図で全員がジャンプしたANOTHER MOMENT
ステージ前方と後方の左右に一体ずつ、計4体のエアーダンサーも飛び出す
彼らも元気そうにニョロニョロと動き、ファンとの再会を喜んでいるようだ
楽しいジャンプの一体感から急転
鮮血のように真っ赤な照明からバットを持ったHYDEがSLIPKNOTのDUALITYをカバー
かつてはほぼ演出の一環だったが今回はしっかりフルで歌い上げる
世界的なアーティストの楽曲も自分のモノにする彼のレベルの高さを改めて実感した
バットで金属のオブジェクトを殴りつけるパフォーマンスは大迫力だ
「新曲やります‼︎6なのか9なのかって曲です‼︎タオル持ってる人はタオル回して下さい‼︎」
ここで新曲のサプライズ
アコースティックツアーを経て表現の幅が広がったのか今までにない斬新なアッパーチューンが産み落とされていた
レスポンスと揉みくちゃになるフロアで新しいカオスな空間が更新される近未来が脳裏に浮かんだ
もちろん現時点のタオル回しも最高なのは言うまでも無い
「フゥ〜〜いやぁ〜最高だね福岡………まだいたいよぉ〜〜でも台風が来てて……帰らないと大変なことになるぞーってwww」
「音楽を生業にして30年くらいですけど………途中でね、めんどくせぇなぁ……やめてぇなぁって思う事もありましたが……オーラルみたいなイカつい後輩が出てきてくれてね……やり続けて良かったなぁと思いました……」
「ですのでもう一度……最後に一緒に歌いたいと思います……奈良県からお越しの……山中拓也さん」
山中の表情はただのファンのようだった
「全員で行こう」と山中がフロアを誘うと、パンキッシュにアレンジされたGLAMOROUS SKYをコラボ
名曲をHYDEが高らかに歌い、山中がハモりを入れたりオクターブを下げて厚みを加える等のコンビネーションがたまらない
フロアも今日1番の盛り上がりだ
最後のサビに差し掛かるとこの日を迎えられた感動で山中は涙を流す
あの日から日常が奪われ、仕方ないとはいえライブやライブハウスが不要不急と否定され
もう2度とかつてのような日々が戻ってくる事は無いかもしれない
大袈裟では無くそんな不安はあった筈だ
それでも、まだ完全にじゃなくてもあの頃に少しずつ戻りつつある
あの雲を払って 君の未来照らしたい
この夢を抱えて 一人歩くよ GLORIOUS DAYS
あの虹を渡って あの朝に帰りたい
あの夢を並べて 二人歩いた GLAMOROUS DAYS
GLAMOROUS SKY…
山中を抱きしめて美しく優しい歌声でそう歌い上げたHYDEの目にも涙が浮かび
神々しい程の光景に何人もが感動の涙を流した
「ホンマにありがとうございました……」
そう言ってステージを後にした山中の言葉はHYDEだけで無く
ファンも含めた今日この日まで支えてくれた全ての存在に向けられてるような気がした
「あっはは………なんだよもぉ〜〜こんなつもりじゃなかったのにwww調子狂っちゃったなぁwww可愛いんだからwww」
タオルで顔を拭きながら笑ってるような泣いてるような声だ
「え〜wwwここからですねwwwびっくりするかもしれませんがwwwこの空気全部ぶち壊して帰りたいと思いますwww」
「いけるか福岡⁉︎Are you fuckin Ready!?」
ここで後方に設置されていたキーボードやドラムセットが限界ギリギリまでステージ前へと迫り出し
ドラムセットに至っては既に半壊
そのバスドラへと登るHYDE
ラストナンバー、MIDNIGHT CELEBRATION Ⅱの開幕だ
マスクマン達も本当にまともに演奏しているのか怪しい程激しいパフォーマンスを繰り広げ
HYDEも渾身のスクリームを何度も披露
フロアもタイミング完全一致のヘッドバンキングから一心不乱のジャンプや拳で散らかりまくっていた
狂乱の宴は何度もスリリングなピークを更新し
最後はHYDEの断末魔のようなスクリームがクライマックスを飾った
「福岡ちゃーん、最高だったよ。また来るからね‼︎元気でな‼︎首洗って待ってろよ‼︎‼︎」
そう言い残すとHYDEはマスクマンを引き連れて散らかしまくったステージを後にする
闇と光が両立するアーティスト同士の闘いはこうして幕を閉じた
良き先輩後輩でありながら最高のライバルとして強く意識し合う彼らが
日本のロックシーンを牽引した未来でまた再び闘い合う時
今日を遥かに超える
想像すらできない伝説の1日となるだろう
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