OCRかく語りき


 平成の終わりかけ頃までの生業、何をしていたかと言われれば、アナログをデジタルに変換するお仕事でした。
 なんて事を書くと、IoTの何とかカントカ、パソコン電子域の制御を行うエンヂニアやら技術者っぽく見られるかも知れませんが、なんて事はなく、提出された書類を定型の入力フォームに入力するだけ。
書類を見ながらキーボードやテンキーをポチポチ押すだけの軽作業をしていたわけです。
 まー、そのとき思ったのは、アナログ素材をデジタルの変換するのは、何でこんなに妙と言うか奇っ怪な手間をかけないといけないのか?と、思うところが多々ありまして。
 人の字なんて、達筆すぎれば、かえって読めなかったり、カタカナの「ユ」と「コ」どっちなんだよ・・・って字をみたり、書類の上下で自分の名前や住所を記入する欄のある書類にて、何で上下の名前住所が違うだとか、アナログデジタル変換の独特の苦労を受けたことをよく思い出します。

 ところで、アナログをデジタルに変換すると、ど~なる?

答:テキストデータになります。
 まだ石を投げるな。
 エラい人や専門家の言葉を借りると、デジタル化ってのは永続性を完全複製可能とパソコン様で扱いやすいデータにしやすいと、そんなところでしょうか?
 年代的にこの「デジタル化」と言う事件、最も印象に残っているのがCDの登場というヤツでした。
その当時、CDについて言われていたケチ?問題?は、「音質がなんか違う」と、言われておりました。
 理由は、CDに録音された音は人の聴力で聞き取れる音階部分という事でした。言い換えれば、人の耳では聞こえないとされている高い音(超音波)と、低い音(超低音)を、バッサリカットしてしまったと。
 う~ん、デジタル化って極端な要素やら人の個性なんかのピーキーな部分がなくなるって事なのか。確かにパソコン様にそんなピーキー部分をぶち込んでもしょうがないし、それ以前に対応できないだろうなぁ~。
 アナログ→デジタルを考えると、自らの体験、先の書類入力作業にもそんな所がありまして、相手が書類な物で、書いてある字を見ればまじめに書いているとかテキトーに書いているとか結構わかるものでして。
 でーすーがー、書類の入力必須部分をポチポチと入力して、データとして完成してしまえば、元の書類がテキトーに書かれたものか、几帳面な字だったかなんて事は、もうわかりません。
 これもデータ化によってデータになりきれなかったピーキー部分etcと言うことなんだろうか?
 さてTRPGも、電子データに関わる事無くデジタル化を強いられたところがあるんじゃないかな?と、思う所がありまして。
 「どこよ?」と、問われれば、「そは、リプレイ」と答えて申ぜましょう。
 「リプレイなんて、紙に印字されたまさしく『本』で、アナログなんじゃないの?」
 そう言われそうですが、媒体を問わず活字、いや、テキストになった時点でそれはデジタルなんですよ。
 確かに紙は案外あっさり劣化しますが、そこに印刷されたテキストは劣化しません。紙が変色しようが縮もうが、印刷されたテキストは紙が新品だろうが古文書だろうが内容に変化はないでしょう。
 媒体は劣化します。紙はもちろんハードディスクもフラッシュも、CD・DVD・BRなんかも、いつかは劣化しきって使えなくなる日がやってきます。それでも中のデータは不変です。
 リプレイというヤツがデジタル的だと言ったのは、先の書類入力のことと似た所があるんですよ。
 リプレイは、実際に行われたTRPGの1席を脚本チックに書き起こした文書なので、そのときのゲームマスターやプレイヤーそれぞれが、場面場面でどう想い、何を考え、どんな表情だったかは、なんて事は殆ど伝わって来ないと思うんです。
 まぁ、良くても、wwwwとか(怒)や(泣く)が付いてくるぐらいなんじゃないかな、と思う訳なんです。
 書類が丁寧に書かれているか雑に書かれているか、整った字なのか難読なまでに癖のきつい字なのか?
 でも書類も入力されてしまえば、明朝体やゴシック体のクオリティーで統一されてしまう。こんなところと似てると思いませんか?
 データ化するためにデータにならない部分をポイッしてしまったのがリプレイという読み物。
 その、テキストに現れてない部分を知ることなしにリプレイを読んでしまい「これがTRPGなんだ」と、思ってしまう初心者も多いようで。
 TRPG完全に初めてという人の「こんなはずではなかった」的な話をよく聞いております。
 このリプレイなる文書、TRPGの入り口としてはちょうどいいのかも知れませんが、実プレイとの溝を埋める事はできるのだろうか?

 思考は尽きない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?