里帰り出産の友へ会いに行く

里帰り出産の友へ会いに行く道中に撫ず透明の月

 仲良しの友達が里帰り出産をすると聞いた。
 お互いに地元を離れてからなかなか会えなくなって、友達が里帰りしている間に会いに行きたいと思った。
 友達とも会う約束をした。

 私は学生の頃から、友達は私よりもたくさんのことを知っていると、思っていた。
 友達にそういう話をすると、いつも「そんなことない」って言われた。

 友達が私より先に結婚して子どもを授かるという未来は、ずっとなんとなく想像していたことだった。
 それは何より、友達がそういう未来を、大切な人と結婚して母親になることを望んでいて、私は自分が結婚したり、親になる姿を想像できなかったから。当然だと思う。

 友達から結婚と妊娠の報告を受けたとき、本当にただ「よかった」と思って、とても嬉しかった。
 それと同時に、寂しさみたいなものもあった。
 大人になると、というか生きていると、人生は一人ひとり違うから、学生のときみたいにみんな手を繋いでずっと一緒になんて、あるわけなくて。
 それは分かってても、やっぱり寂しい気持ちはどうしたってあった。

 私は友達の向日葵みたいな笑顔が好きで、今まで、友達のことを向日葵や太陽みたいだって例えたこともあるし、本人に伝えたこともある。
 でも、短歌を作り始めてから、友達に関する短歌には、月を紐付けることのほうが多い気がしている。無意識に。

 少しずつ、大きく丸くなっていく友達のお腹が月みたいだと思った。臨月の頃には、満月みたいになるんだろうなって。
 友達と会うために、友達の実家までの坂道を登りながら、私は自分の平らなお腹を見て、透明だって思ったんだ。

2022.12.10

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