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先生

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#忘れられない先生

先生#4(小話)

体育祭の話

 部活動対抗リレーは、体育祭の目玉の一つだと思う。
 柔道部は畳や顧問の先生を担いで走ったり、球技系の部活はバトン代わりにボールを使ったり。
 でも、バスケ部が次の走者にバスケットボールを投げてパスしてたのはちょっとアウトだと思う。
 私たち美術部は地味だけど、黒色の絵の具チューブをバトンにして、水張りした板に絵を描きながら走った。
 前走者から受け取った絵の具を手に出して、そのまま

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先生#3(受験の話)

 高校3年生はクラス替えはなく、クラスメイトも担任副担任も2年生からの持ち上がり式だ。

 とうとう受験生。
 私の高校はいわゆる進学校ではなく、複数の専門学科から成る。
 卒業後の進路は、就職と進学が半々。
 私は就職組だった。
 40歳年の離れている父は、私が二十歳のときに定年を迎える。
 別に行きたい大学も、大学に行ってまで勉強したいこともないのに、高い学費を支払ってもらうのも申し訳なくて、

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先生#2

 高校2年生で、先生が担任になった。
 必然的に、国語の教科担任も先生になった。

 先生は毎朝ホームルームで「今日も一日頑張っていきましょう」と言う。
 その前向きな言葉と、先生の真顔がミスマッチで好きだった。
 
 先生の字はあまり綺麗じゃなかったけど、縦横の線がまっすぐした生真面目な字だった。

 国語の授業で毎回最初にする、先生の手書きの漢字の小テストが好きだった。

 日付の出席番号で指

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先生#1

 あるあるだけど、高校生の頃、先生のことが好きだった。

 先生は、国語教師だった。

 高校1年生の頃、先生は隣のクラスの担任だった。
 私のクラスの国語の教科担任は先生じゃなかったので、廊下ですれ違ったときに挨拶をするくらいしか、関わりはなかった。

 先生は、少し白髪の混じる黒髪を真ん中分けで撫で付けて、分厚い眼鏡をかけて、少し掠れたでも芯のぶれない声で話す。
 堅物そうな雰囲気から、文豪っ

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