五感をこえる:ライゾマティクス_マルティプレックス展
こんにちは。
もう7月も中旬かと思うと本当に早い。しかし最近は本当に暑い。
めちゃくちゃ話が変わるが、先月は美術館ファン?展覧会ファン?にとってうれしいニュースがあった。
宣言により4月下旬から休館していた多くの美術館が、運営を再開したのだ。軽々しく出かけることはまだ推奨されていないが、個人的には率直にうれしいニュースだった。
仕事が休みのタイミングを見計らって見に行ったのはコレ。
ライゾマティクス_マルティプレックス
会期:2021年3月20(土・祝)~6月22日(水)
会場:東京都現代美術館
写真撮影:一部作品を除き基本OK
コロナ対策:美術館HPより日時指定予約(会期の終盤は会場で当日券が購入できた)
ライゾマティクスとは、データやCGなどを駆使したメッセージ性の強いインスタレーションを通して、技術と表現の可能性を探っているアーティスト集団であり、企業だ。
彼ら・彼女らの作品は視覚に訴えるものが多く、建築やデザイン、広告やエンタメなどジャンルも幅広い。
企業HPにはアートではなく「研究」という言葉が多用されているところも、彼ら・彼女らの大きな特徴だろう。
また、マルティプレックスとは英単語mutiplexのことで、「多様な」という意味がある。つまり、ライゾマティクスがこれまで展開してきたさまざまな領域の作品が、この企画展に集まっているということだ。
想像以上のスケールとパワーに終始圧倒されたこの企画展。特に印象に残った作品は以下。
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《Rhizomatiks × ELEVENPLAY "multiplex"》
日本のみならず世界でも活躍している女性ダンサーユニット「ELEVENPLAY」とコラボしたインスタレーション。
実際の展示では、彼女たちのダンスとライゾマティクスの音・グラフィックを掛け合わせた作品動画(下に貼ったYouTube参照)、そして
本物のセット(動画撮影用のカメラまであった!)が置かれていた。
とても簡単に言うと、アーティストのPVとそのセットを見ているような感じ。
↑こちらは実際の作品を写真でおさめたもの。動画撮影は禁止されていたので、写真のみ
↑作品はイメージでいうとこんな感じ。こちらはライゾマティクスのメンバーの1人がアップロードしている動画で、ダンサーも実際の作品と同じELEVENPLAY
どことなく世界観がPerfumeっぽいな~、と思って調べてみたら、なんとEVEVENPLAYのプロデューサーは「ポリリズム」や「チョコレイト・ディスコ」などPerfumeのいろんな振り付けを手掛けているMIKIKOさんだった。
私はこういう幾何学を感じさせるCGとかが大好きだし、Perfumeもふつうに好きなので、この作品は3回くらい見てしまった。
でも、ダンス自体はPerfumeのようにポップな感じではなく、ダイナミックで比較的ゆったり。そして、指先や足先など細部まで美を極めた動作も素敵だった。
また、グラフィックは彼女たちの動作と呼応していて、場面によってはダンサーたちが点と線で表されていた。
イメージとしては下のリンク内に載っている、跳躍動作の解析画像みたいなグラフィックだ。
※点と線でつくられたグラフィックを見ると、リンク内にある解析画像が浮かんでしまうので貼った。全然関係ない陸上競技のリンクでごめんなさい
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《particles 2021》
↑こちらも動画撮影は禁止だったので、発光した瞬間をとらえた写真を。ハートや星など、特定の形が浮かび上がるわけではないので、独創的
↑ライゾマティクスの代表である真鍋氏が、実際の展示室で撮影した動画。光とリンクした音の迫力もすごいので、音量を上げてぜひご覧いただきたい
何層も連なった8の字型の金属レールの上を、一定のスピードでぐるぐる回るいくつかの球。
そこにいろんな方向からランダムにライトを当てた作品。
パンフレット等に高さの記載はなかったが、美術館の天井に迫るくらいの大きさだった。
展示室に入ると下の写真のように、作品が動き始めるまでのカウントダウンが表示されていた。
時間になると、作品下部からたくさんの球が筒のようなもので上に吸い上げられ、つぎつぎと各層に配置されていた。
球は、はじめに配置された層のレールをずっと動いていたようにみえた。
※暗闇だったのでこの判断はちょっと危ういが、3回見てどうやらそのようだと思った
暗闇の展示室で、ランダムに光っては消えるを繰り返すので、一回一回の残像がすごかった。
感じたのは、動いている球をライトが正確に位置を把握して、ライトを当てている技術の高さ。
そこそこのスピードで動くたくさんの球がこの瞬間どこにあって、どの方向からどう照らせばこういう全体像が浮かぶ…という綿密な調整や計算がなされているのだろう。
しかも、これは8の字レールなので奥行きが生まれることを加味すると、すごく難しそう。
動画で確認いただきたいが、光ると同時にクラッシュするような音の迫力も相まって、見ごたえのある作品だった。
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《Epilogue》
エピローグというタイトルそのままに、いままでの作品をデータで振り返るもの。
展示室にはタブレットより一回りくらい大きいサイズのスクリーンがいくつも並んでいた。
映し出されていたのは、
・各展示室に設置されたカメラのリアルタイム映像に、人の動きを色付きの線でたどったもの
(その展示室にいる人たちの動きを正確に感知して画面上で線を描いているイメージ)
・下に貼った動画のような、各作品の俯瞰アングルや動き、音のデータ
(撮影禁止の作品だったので、イメージとして以下に動画を貼っておく。動画と全く同じ作品ではない)
といった感じだった。
これまで見てきた作品の仕組み(といっても文章の説明はないのでデータの動きで知る形)や、いま作品を見ている人たちのリアルタイムな動線を知ることができた。
一言でいうなら、データで種明かし。
特に、particles 2021のデータはまさにそうだった。
ライブで動いている作品にあわせて音源のボリュームが動いたり、どこの照明からどの球に光を当てているかが図示されたり。
暗闇でよくわからなかった動きについて、データで正解を教えてもらった気分だった。
ただただ迫力に押されてどどーっと作品を見てきた流れを、一歩引いた目線でまとめてくれたので、こうなってたのかーと知ることができて面白かった。
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作品自体はそこまで多くなかったが、ひとつひとつの作品が大きくてとにかく光と音の技術の高さに圧倒された企画展だった。
また、展示の最後にはライゾマティクスのアートワークや、実際の実験装置や器具が置かれていて、「研究」の一部分をのぞくことができた。
顔の表情筋を意図的に操作する装置、今回展示されていた作品ができるまでのテストプレイ、アーティストのPV撮影などなど…
↑人気エレクトロポップユニットPerfumeが実際にPVやライブなどで着用した装置。
スターウォーズに出てきそうな、水色に光っているライトセーバーは《GAME》という曲のパフォーマンスに使用(リンクは参考までに画像検索結果)。
手前にある白い機械たちは、《Spring of Life》のPVで使用。下の動画で彼女たちが背中につけているものだそう。
アートと同じように、ダンスや表情など身体の動きも自在だ。
骨格や筋肉による可動域の範囲、空を飛ぶなど人力のみの空想的な動きには制限があるが、表現の手法そのものはアートに負けない幅広さがある。
ダンスひとつとっても、規模感や表情、音の有無やダンススタイル、衣装やメイクなどさまざまな形を作ることができる。
ライゾマティクスが挑戦し続ける、機械的なデータやグラフィックと、無限の世界観をつくれる身体的な表現との掛け合わせ。
五感では言い表せないような、なにか「おっ」とさせる化学反応みたいな感覚を抱いた。あと、無機質なデータが妙にいきいきしてみえたのも、不思議だった。
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紹介した動画のチャンネル(ライゾマティクスの代表である真鍋氏のチャンネル)では、
ほかの作品やテストプレイなどがアップロードされているので、興味がわいた方はぜひチェックを。
個人的にはPerfumeのような世界観が好きな方や、スポーツ科学など身体を分析する学問領域の方におすすめ。
あと、アートに関する本で読みやすかった本をご紹介。大学生の時にこの本の存在を知り、最近やっと読めた。
ビジネスにおいてアート鑑賞はどう活かせるか、具体例を踏まえた現代アートの潮流などがまとめられている。
現代アートを鑑賞して「わかる」部分と「わからない」部分を整理して、「すべてがわかったわけではない」と考えて、では「わからない部分には、自分の知らないなにがあるのか」を考えてみる。
*p91 1行目より引用
最後思い切り宣伝みたいになってしまったが、また次回。
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