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もしも世界から本屋が消えたなら。

Kindle依存著しい私ですが、もしも世界から本屋が消えてしまったらすごく困ってしまうと思います。
読書の秋にさしかかる今日この頃、私の想い出深い3つの本屋さんへの想いを綴ります。

心が整う「ジュンク堂書店 新宿店」

1番覚えているのは、大学受験で国立の大学に落ちた時のこと。
悲しい、というのとはちょっと違うかな。
喪失感。抜け殻になったような放心状態。とでもいえばいいのか。

親に不合格だったことをメールで伝えたものの、私よりもショックを受けていそうな母と会うのがしんどくて、家に帰りたくありませんでした。
こういう時、一般的にはどういう行動をとるものなんでしょうか。

私は気付いたら、新宿三丁目のジュンク堂に足が向いていました。今は閉店してしまっている本屋さんです。

そもそもジュンク堂は選書や棚の作り方が神がかっていてすばらしいのですが、池袋の本店よりも、私は百貨店の2フロア分に広大に広がるその本屋が好きでした。本が欲しい時だけではなく、気持ちが波立つような時もたびたび訪れていました。

気になる本を読むことができるようにジュンク堂は椅子が置いてあるのですが、その店舗の場合は、各コーナーの長い棚の側面にそれぞれ小さな椅子が設置されていました。

私はひとしきり小説の棚を巡回したのち、何かしらの本を手に取ってその小さな椅子に座りました。

どのくらいそこにいたんだろう。気付けば夕方になっていたように思います。空気がすんと静かで、棚の中には私がまだ知らない物語の世界が広がっていて、訪れる人もとにかく本が好きで周囲にどんな人がいるかなんて詮索する空気もなく。

もともと落ちるだろうとは思っていたので、こればかりは仕方ない、なるようにしかならない、そういうめぐり合わせだったと思うことにしよう、という落ち着いた気持ちを取り戻すことができていました。

母親からは、帰ってこない私を心配して、今どこにいるの?とたくさんのメールが届いていました。

やる気が高まる「丸善 お茶の水店」

私が一人で本屋に行く楽しみを知ったのは中学に行ってから。それまではお金もないので、図書館を利用していましたが、高校受験を前に「参考書を買う」という大義名分ができました。

本来は参考書って一冊買って、それをやり込むというのが正しい在り方だと思うのですが、私は参考書を本屋さんで眺めて、買うまでの体験が好きでした。

この傾向は高校に入ってからより顕著になり、そして今となっては、参考書に限定されない大人買いを楽しむまでに、積読ジャンキーへと堕ちていったわけです。

塾の先生のレコメンドを聞くことや各種合格体験記でよくある「おすすめの参考書」欄を見ることが好きでした。そこで見た参考書を覚えておいて、本屋で実際に見てみる。
まっさらな、まだ解かれていない問題たちや覚えるべき言葉たち。ペラペラとめくりながら、この参考書の内容をマスターして、頭が良くなった自分を想像します。その高まった気持ちのままに、厳選した数冊をレジに持っていく幸せ、その甘美さは高級スイーツのそれにも匹敵します。(甘いもの苦手なのでそれ以上かも)

特に丸善 御茶ノ水店は参考書のフロアが大きく、古いものから新しいものまで網羅されており、たくさんの学生らしき人が来店して、参考書を吟味していました。

ただ、ご想像通り、何かにつけてねだっていた図書券を少しずつ切り崩しながら、まだ見ぬもっと賢くて素敵な自分を妄想するものの、私が実際にそんな自分にたどりつけることはめったにありませんでした。

でも、あの幸せがあったから、私は受験勉強を頑張れたんじゃないか、と思うと、丸善で参考書を買うことはとても大切なことだったんじゃないかと思うのです。

児童書のワンダーランド「クレヨンハウス表参道」

こんな夢みたいな場所があるんだっと本屋さんに初めて感動したのは、表参道にある児童書専門店「クレヨンハウス」です。

そもそもクレヨンハウスという場所があることをどういう経緯で知ったのかは覚えていないのですが、小学生の私にとって、表参道は大人が行く場所でした。

確か小学校高学年の時に図書券欲しさに絵のコンクールに応募して、そこで最優秀賞を獲ったことがあり、その図書券を握りしめて、連れて行ってもらった記憶があります。

当時、児童書を読むのが大好きだった私。
街の本屋さんの児童書売り場はとても限定的で、売れ筋や最新のものしか置いていない、図書館では人気の本は予約しないと手に入らない、というような状況だったため、もっとたくさんの児童書がある場所ってないんだろうか、とずっと思っていました。

そんな中で、大きなフロア一面に児童書しかない!という空間は遊園地のような、あるいは遊園地以上の圧倒的な楽しい雰囲気に満ち満ちていました。
もうここに住みたい、とすら思いました。

当時の私は自分に合った選書スキルがそれほど高くなかったので、さんざん悩んだ挙句、なぜこれ?というような本を選んでいた気がします。それでも、その本を見ると、クレヨンハウスと出逢った感動が思い起こされて、わくわくしていました。

Kindleも好きだけど、本屋も好き。大好き。

少しずつさかのぼる形で私の想い出の本屋さんを順に紹介してきましたが、他にも社会人になってから勉強のために雑誌を買いまくった渋谷の本屋さん、立ち読みしてたら気付いたら1冊読み終わってしまった商業施設に入っていた本屋さんなどなど、ここに書ききれないたくさんの本屋さんの想い出があります。

家のスペースが限られているので、どうしても紙の本をたくさん買うわけにはいかないのですが、今もなお、本屋さんにときめく気持ちはあの頃と変わらずあります。

というわけで、読書の秋、いろんな本屋さんを巡りたいなーと今日も夢想中です。買い過ぎないように注意します。





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