読書日記#25 花束みたいな儚さと月に吠えるような抒情
6月◎日
梅雨真っ只中だけれども、いいお天気。
このままだとすぐに夏になってしまう。
困るなー。もう少し春がよかった。
昨日のキックボクシングではトレーナーさんが「夏が来るとテンションあがる」「暑ければ暑いほどうれしい」などと話していた。あーそのタイプね、と思う。
最近その話を私にした人、3人目。周りに増えてる気がするのは、私が夏らしくなってきているからなのか。
楽しめるコンテンツを増やしたい私としては「夏」なるものも、そのアガる感じに寄り添いたいなという気持ちはある。気持ちはあるんだけど、まだ苦手意識の方が強めだ。
祭り太鼓や花火の音が胸の底に響く夏の夜は好きだけれど、炎天下を愛する心を解するにはまだ何か決定打が足りないと思う。
今日は慌ただしい。
整体、歯医者、友達のイベントに顔を出して、夕方ジム。それから父の日のプレゼント手配。ほとんど自分のメンテナンスのための時間だけれども。
こんな日はYouTubeをみると動けなくなってしまうのでAudibleにする。
かのこちゃんとマドレーヌ夫人。今7合目くらい。
かのこちゃんは知恵に目覚めたばかりの小1の女の子。マドレーヌ夫人はかのこちゃんが飼っていて、夫である玄三郎(犬)の言葉を聞き取れる、猫界でも珍しい能力を持つ気品ある猫さん。
だんだんわかってきたんだけれども、万城目学さんは、一体何読まされてるの?と困惑するようなトンデモ設定と平易な文章で油断させて、密やかに大きな物語の伏線を張り巡らせて、ラストにその広げられた風呂敷の存在に突然気づかせて鮮やかに畳みあげる、ような作風の人。
3冊目だけどこのスタイルは一貫しているんじゃないかな。
本作も一体何の話なんだ、という一章二章を経て三章で深刻な雰囲気になってきた。ここからどうエンディングに向かっていくのかドキドキする。
家を出ようと思って鏡を見たら致命的に片側の髪がはねていた。遅刻しないようにと思ってたけど、結局10分遅れる。
整体に行った後、30分ほど時間が空く。
このあと歯医者だということを考慮すると、口は清潔でいたいから、飲食店で時間をつぶすのは避けたい。
たまにはと思って歯医者の近くの本屋に行く。
ふと目に入る売り上げ週間ランキング。絶望のかほり。
暗算の本が1位で、美容エッセイが2位。
「変な家」ももともと動画だったものだし、実質、ようやく最初にランクインする小説が村上春樹。
こうなってくるとその次に入るのが本屋大賞作品「汝、星のごとく」でその賞の尊さが身に染みる。
小説が書店で輝くのはとても大変なことなんだなぁ。
悲しい気持ちになって棚を眺めていたら、見つけてしまった。
これは、ずっと気になっていたヨルシカカバー本。
ヨルシカが好きでして。特に「月に吠える」がすごくよくて。
咳で始まるイントロも、投げやりで陰鬱だけどクールな歌詞も、リズムの刻み方も、好き。
実は詩集の「月に吠える」は持ってる。
父が昔から持っていた本で、処分するかもというのでもらった本の一つ。すごく古いの。
でも読んでない。詩集を読もうと思うタイミングって難しいなーと思っていて。古い文庫本は文字も小さくていまいちきっかけがつかめないでいた。
でも、あのヨルシカの「月に吠える」の元ネタだと思うと、面白いんじゃないかと最近じわじわ思っていて、試しに「序文」を立ち読みしてみる。そして驚く。
ええええ。
中二病感のあるこんな言葉を並べて文章を書く人だったなんて、知らなかった。この自己陶酔的な雰囲気はすごくいい。
ついでにジッドの「地の糧」も気になり、セットで(そんなセットはないけど)買うことにする。
こうやっていつもと違うことして棚をとりつつ、ヨルシカファンにもリーチしつつ、ヨルシカを知らない人にはこれをきっかけにヨルシカの認知度アップに貢献しつつ、の一挙両得どころじゃない企画いいなぁ天才だなぁと思う。思いついても実現はなかなか困難だ。
自分もこういうコラボチャレンジしたいなーと少しうらやましくもある。
さらに本屋をうろうろして、もう一冊、目を奪われる本と出会う。
「いとエモし」という、日本の古典を抜粋して現代語で超訳して美しいイラストとともに紹介してゆく本。
「いとをかし」はつまり「エモい」ってことなんじゃないか!?という気付きからこの本の構想が始まったことが書いてあり、完全に同意!と思って中身を見ていたらその心意気を感じる内容がすばらしくて。
こういうスタイルってジャケ買いはされやすいけど、作品として高い品質を実現するのは意外と難しい。
「かのひと」も一目惚れして買ったけれど、これもイラストと言葉の配置はすごくよかったけれど、現代語訳がピンとこないものが多かった。
一方「いとエモし」の方はいくつか読んでみたところ、言葉が巧い。
紙の本で所有するならこういう装丁の美しいものがいいと思う。こちらも購入。
そんなこんなでたった30分の隙間時間にも、本屋に入るのは危険極まりないというか、ほんとにすぐ積読しちゃう。
それからちゃんと3つの用事をこなして、父の日用に今年はゴディバのチョコレートお菓子を手配して、ついでに夏の装いをアップデートしたくて古着も買いに行って、あっという間に夜。
お風呂タイムには「君のクイズ」を読み始める。
アメトーークで紹介された話題本、なんて言われるとやっぱり気になってしまって、何かのKindleフェアの際に買っておいた本。
早押しクイズ大会番組の決勝戦、どう考えても無理な早押しタイミングで優勝を決める回答をした対戦相手。ネットでも炎上する騒ぎの中、彼はどうやって正解できたのか?不正はなかったのか?を紐解いていく内容。
数日前にミステリー編集者の話を聞く機会があったのだけど、新しいスタイルのミステリーはほぼネタ切れ、日常の謎系も出尽くしているって話をしてて、そんな中でも新しいスタイルかも?と思って気になり始めた。
早押し問題の一つ一つにそれが答えられるようになるまでの人生が詰まっていて、それが謎解きにもつながる感じが確かに斬新だった。夢中になって、一気に半分まで読み進み、顔からはポタポタと汗が滴る。今日もよき半身浴。
読みかけ本もどんどんと増えていくけれど、読んでる本それぞれが違った面白さがあって、気分によって読み分けたいから仕方ないんだよなーと反省する気のない夜は更ける。
6月▲日
日曜日の朝、目覚ましをかけない幸せな目覚め。
まだ眠気まなこのベッドの中で「花束みたいな恋をした」をみる。
今週、友人と「怪物」を見にいくことになったので、その予習にこの映画も観ておいてほしいということだった。
恋愛映画は内容がリアルでも非現実的でも気持ちが掻き乱されすぎるので苦手だった。なので、恋愛要素がある、ではなくて、タイトルからもわかるようにガッツリ恋愛映画をみるのは久しぶり。
うん、でもこれは観てよかったほうの恋愛映画だ、と見始めてすぐ思う。
サブカル系男女が仲良くなる過程の「私たち、好きなものが一緒だね」の流れが最初から結末が見える気がして切なかった。
好きな作家は?という話に、
長嶋有、穂村弘、いしいしんじ、堀江敏幸、柴崎友香、小山田浩子、今村夏子、小川洋子、多和田洋子、舞城王太郎、佐藤あきという作家の方々が挙げられていた。あーーわかりみ。現代純文学の星、な方々。
小山田さんは読んだことないけど読みたくなる。
小山田さんはKindle版がないのでどうしてもキャッチアップが遅くなる。芥川賞の「穴」あたりを古本の購入候補に改めて加えておこうかな。
これに私なら、川上未映子、辻村深月、津村記久子、森見登美彦、江國香織、千早茜、松田青子、池澤夏樹あたりを追加したいなー。
特に前編を通じて今村夏子さんが何回も出てくる。
まだ読んでない「あひる」が何回か出てきて、これも読まなきゃーと思う。
「“電車に乗っていたら”ということを彼は、“電車に揺られていたら”、と表現した」という心理描写がでてくる。
純文学好きな人あるあるかもだけど、相手の言葉の選び方にぐっときたりするのもわかるなぁと思った。
けれども、恋愛においては特に好きなものがかぶりすぎるのは、まるで2人が同じことを考えているみたいに錯覚しやすいからあんまり良くないなぁと思う。
だって本当は同じわけないから。
最初から共通点がいくつかあるな、くらいのがいい。
違いをリスペクトしてそれでも一緒にいられる関係の方がいい。
そんなことを思いながら恋愛の始まりを、タイトルからおそらく終わるんだろうと思いながらみていく。
結局、終わりゆくものをみさせられるのはつらい。でも、夢中にでみてしまう。
ここから先はネタバレになるけど友達に感想を話せるようにメモしておく。
お昼すぎまでたまっていた家事をこなす。1人前なのに「2L近く水を用意してゆでてください」っていうお蕎麦(ふつうそう)をつくるのが、なんだか水がもったいなくてずいぶんと放置してしまった蕎麦を食べる。
夕方に収録して、夜は友人との集まり。
世界の「つつむ料理」をオリジナルで考えてくれたコースを食べる。ププサ、エンパナーダなど聞いたことないものもあった。
42歳のシェフが女性は35歳以上が安心だという。
この年齢で綺麗でタイプならそこから劣化しにくい。30代の努力が顔に出るからと。
なんか変な話だけど、なるほどなぁと思う。
関連して昨日からもやもやしていたことを思い出す。
きれいでありたい、そのほうがアガる、という気持ちはわかる。
女の子が「かわいい」、「きれい」っていう感覚もわかる。見るたびにきれいだなぁと惚れ惚れすることもある。
でも「イケメン」という概念に私はぐっとこない。そのへんの感覚がちょっとずれてる。もちろん見た目が生理的にダメなことはたくさんあるけど。
特別なことはしてないけど、すごく濃密な週末。これはその片鱗でも書き残しておきたいと、noteに残す。
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