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【比較テイスティング】竹鶴ピュアモルトの新旧飲み比べ

2020年に入った直後、ウイスキーラバーにとって残念なニュースがありました。それはご存知、ニッカウイスキーの「竹鶴」全シリーズ終売のニュースです。

ニッカ、「竹鶴」17年など販売終了へ 原酒不足で 
国産ウイスキー、「余市」「宮城峡」に続き
(日本経済新聞)

ちょうど直前に僭越ながら余市蒸留所の「マイウイスキーづくり」に参加させていただき、ニッカウウイスキーへの愛が一層深まったところへのニュースだったので、精神的なショックがとても大きかったことを覚えています。
この原酒不足の中、17年・21年・25年などの年代表記のシリーズが終売することは予期しておりましたが、まさかのNASまで終売とは予想外でした。

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その後、2020年3月31日、リリースされたのが、新しい「竹鶴ピュアモルト」です。

竹鶴ピュアモルト 2020年3月31日 数量限定販売(ニッカウイスキー)

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終売となった黒ラベルの後継として、白ラベルとデザインを変え、数量限定で現在、販売されております。
今回、小樽にあるニッカウイスキーの聖地と言っても過言ではない、BAR BOTA(おたるぽーたるHP)様より、この新竹鶴のサンプルをいただいたので、折角なので新旧の味の比較をしてみました。

ちなみにニッカの公式HPでは下記のように紹介されております。

素材はモルトだけ。グレーンを使わずに実現できる最上級の飲みやすさを追い求めて、ブレンダーは、ニッカウヰスキーが誇るさまざまなモルトをより精緻に磨きあげ、ブレンドを再編成しました。
その技は、あらゆる原酒の個性を究めた歴代のブレンダーたちが長年にわたり蓄積してきた知識と経験があるからこそ、獲得できたものなのです。
キーモルトは、シェリー樽熟成の余市モルトと宮城峡モルト、リメード樽熟成の宮城峡モルト。
なめらかで艶やかな口当たり、華やかでフルーティーな香り。
重厚なモルトの甘みとコク、やわらかくつづく余韻。
まずはストレートで。そして、わずかに水を加えて。
次々にあらわれるモルトの個性を確かめながら、
ブレンドの技に想いを馳せてください。

【香 り】
りんごや杏のようなフレッシュで甘酸っぱい果実香、トーストやバニラを思わせる甘くやわらかな樽香。
【味わい】
バナナやネーブルオレンジのようなフルーティーさ、軽快でありながら、しっかりとしたモルトの厚みやピートのコクが感じられる味わい。
【余 韻】
ビターチョコのような甘くほろ苦い余韻が、穏やかな樽香やピート香を伴い心地よく続く。


さて、それではテイスティングさせていただきます。

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左が新しく出た竹鶴で、右が旧ボトルになります。
既に紹介されている各ブログや比較動画で言われているように、色合いで見ると旧の方が濃いですね。

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新竹鶴【プロフィール(Profile)】
色調(Color):Clear(0)~Dark(10) 
甘味(Sweetness):Dry(0)~Sweet(10) 
ピート(Peat):None(0)~Heavily(10) 
ボディ(Body):Light(0)~Heavy(10) 
バランス(Balance):Bad(0)~Good(10) 

【香り(Aroma)】
青リンゴ・干し柿・乾いた麦わら・芋焼酎のようなサツマイモの甘味と酸味・バナナ・穏やかなピート・少し若さが目立つ
【味わい(Flavor)】
ほど良い口当たり・コクのある甘さ・若いバナナ・薄めたハチミツ・麦芽糖・ショウガ飴
【余韻(Finish)】
中程度・リンゴの皮・ビワ・干し柿・ほろ苦さが残る


無題aaaa

旧竹鶴【プロフィール(Profile)】
色調(Color):Clear(0)~Dark(10) 
甘味(Sweetness):Dry(0)~Sweet(10) 
ピート(Peat):None(0)~Heavily(10) 
ボディ(Body):Light(0)~Heavy(10) 
バランス(Balance):Bad(0)~Good(10) 

【香り(Aroma)】
軽いピートが先行・柿・スモモ・麦わら・カンロ飴・干しみかん
【味わい(Flavor)】
やや粘性のある甘さ・柿・甘納豆・ショウガ飴・焼きバナナ
【余韻(Finish)】
ほろ甘苦いピート・カンロ飴・ショウガ飴・カルメ焼き


【総合評価(Total)】
両者に共通して、というか竹鶴NAS自体に私が抱いているイメージで田舎のばあちゃん家で出されるおやつの印象が強いんですよね。
フレッシュなリンゴとかパイナップルなどの果実味、あるいは洒落たキャンディやチョコレートなどの洋菓子ではなく、カンロ飴とか干し柿・干しみかんなど素朴で昔から日本で食べられていたような飴菓子や果物のような味です。

両者を比較すると新竹鶴の方が若さを感じる部分がありますが、エステリーなキャラクターとライトな傾向で飲みやすさを感じます。
対する旧竹鶴と比較すると旧の方が濃さ・クセ・個性を強く感じ、月並みですが、これを新しい方が「飲みやすくなった」と良しと取るか、「以前の方が個性があった」と悪しきと取るかは人それぞれかと思います。
そう考えるとスプリングバンク10年のリニューアルもそんなイメージだったような気が・・・

ともあれこの新竹鶴も数量限定品・・・現時点では、こちらが完売となると、いわゆる現行で買える竹鶴は本当に絶滅してしまうことになり、ニッカウイスキーの創立者の名を関したシリーズが消えてしまいます。それは1ファンとしては何とも寂しい限りです。

昨今の事情から継続的にウイスキーを出すことは難しく、どこかで一時的に竹鶴シリーズが途絶えてしまったとしても、原酒の熟成と供給の安定から機を見て復活していただければと思いますね。
とはいえ、その空白の期間中のブレンド技術の維持や継承などの諸問題を考えると頭が痛い限りですが、世界的にも評価されているニッカウイスキーの存続と繁栄を祈りつつ、筆を置かせていただきます。

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